・燃料ポンプ強化
ブーストを上げたら、配線の強化でいいのか燃料ポンプを交換しなければいけないのか悩むところです。そこで、どの位の能力のポンプが必要になるのか
計算してみます。
まず、燃圧(燃料圧力)って何だか分かりますか。
下の図にあるように、燃料タンクからポンプで吸い出された燃料は燃料配管に送られます。そこで、インジェクタからインテークマニホールド内に噴射されます。

ここで、燃圧がばらついているとガソリンの噴射量が変動してしまうため、燃料の圧力を一定にする必要があります。この働きをするのがプレッシャー・
レギュレーター(P/R)です。下の図に有るようにP/Rはバネとチャンバー内の圧力と連動させて燃圧を制御しています。

では、なぜチャンバーの圧力と連動させなければいけないのでしょうか。その理由は下の図を見てください。

アイドル時はインテークマニホールド内が負圧になっていますから、燃料を吸い出す力が働きます。そのため、燃圧を下げて噴射される燃料がECUからの
パルス幅に比例するように制御します。
マニホールド内負圧: −500mmHg = −0.66kg/cm2
燃料圧力: 2.55kg/cm2 − 0.66kg/cm2 = 1.89kg/cm2
逆に、高ブースト時はインテークマニホールド内が正圧になりますから、燃料を押し戻す働きをします。そのため、燃圧を上げて噴射される燃料がECUからの
パルス幅に比例するように制御します。
ブースト圧: 1.30kg/cm2
燃料圧力: 2.55kg/cm2 + 1.30kg/cm2 = 3.85kg/cm2
以上の説明でP/Rの働きが分かったと思いますが、P/Rが燃圧をチャンと制御するには有る条件が必要です。下のグラフを見てください。

P/Rが決められた燃圧に制御するためには、最低限の燃料が燃料タンクにリターンしている状況に於いて制御される構造になっています。このリターン流量の
下限値は40L/Hrです。
つまり、P/Rは最低40L/Hr以上の燃料をリターンするだけの燃料がポンプから供給されないと燃圧を制御できなくなります。
以上のことより、ブーストを上げた場合にポンプにどれだけの流量が必要か計算してみると、
インジェクタ流量: 560cc/min・気筒 = 33.6L/Hr・気筒 = 134.4L/Hr・4気筒
ポンプ流量: 134.4L/Hr + 40L/Hr = 174.4L/Hr
おっと、燃料ポンプにも補正が必要でした。
下の図を見てください、よく言われる燃料ポンプの流量は一定の燃圧での流量です。このため、公称流量より高い燃圧では流量は減少します。

エボ用のポンプの特性は測定したことがありませんが、経験的には1kg/cm2上がる毎に30L/Hr程度の減少が発生します。
また、公称流量は3.00Kg/cm2時の流量と思われますので、1.5kg/cm2のブーストを掛けた場合の流量低下分は次のように計算されます。
燃料圧力: 2.55kg/cm2 + 1.50kg/cm2 = 4.05kg/cm2
公称値との差: 4.05kg/cm2 − 3.00kg/cm2 = 1.05kg/cm2
流量低下分: 1.05kg/cm2 × 30L/Hr = 31.5L/Hr
従って、最終的に必要なポンプは 174.4L/Hr+ 31.5L/Hr =205.9L/Hrの流量を持ったポンプが必要となります。
これは、インジェクタの能力を100%使ったセッティングの場合ですが、実際にはインジェクタ開弁率を100%で使うようなセッティングではブローが心配ですから、
開弁率も最大90%位でセッティングを取る事になると思います。
その場合は
インジェクタ流量: 560cc/min・気筒 = 33.6L/Hr・気筒 = 134.4L/Hr・4気筒
開弁率90%: 134.4L/Hr × 0.90 = 121L/Hr
ポンプ流量: 121L/Hr + + 40L/Hr + 31.5L/Hr = 192.5L/Hr
一方、エボ7用の純正燃料ポンプは、公称流量150L/Hrですから、ブースト1.5kg/cm2で使うには足らないことになります。P/Rの燃圧制御グラフにあるように
リターン流量が40L/Hrを切っても直ぐに制御不能になるわけではないですが、ブースト1.5kgを常用するにはノーマルのポンプでは厳しそうですね。計算から行くと
1.5kgを常用するには200L/Hr位のポンプが必要そうです。
・最後に燃圧計についてチョット一言…
これを見て賢明な方は気付かれたと思いますが、燃圧は燃料配管内の燃料圧力とチャンバーとの差圧を計らなければ意味がありません。ところが、市販の車用燃圧計は
全て燃料配管の圧力を計って表示します。これでは、燃圧を計る意味がありません。
又、この燃圧計を付けて「高回転で燃圧が下がる!」と言う人がいますが、多くの場合はブーストがタレたのに伴ってP/Rが制御していることがほとんどです。
下の図を見てください。燃圧はP/Rでチャンバー内の圧力(=ブースト圧)に完全に比例して制御されますから、高回転でブーストがタレれば燃圧が下がるのは正常です。

燃圧が本当に下がっているのかどうかを判断するのは、差圧計を使うかECUのマップを書き換えてもA/Fが変化しなくなったことで推察するしか有りません。
私が悪徳ショップをやるなら、お客の車に燃圧計を付けてオーナーを助手席に乗せて燃圧計を見させておいて
「ほら、こんなに燃圧がタレてるョ! ポンプ変えないとブローしちゃうョ!」ってささやきます。
では