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2000年 9月 30日(土) 新潟・佐渡

大佐渡スカイラインを行く


大佐渡スカイラインからの展望

■始点 ■終点
姫崎 両津港
■走行区間・距離
姫崎〜両津〜金井〜大佐渡スカイライン〜相川〜佐和田〜真野〜新穂〜両津港 98km


天気予報は夕方から雨が降り出すと言っていたが、姫崎からの夜明けを見る限りそんな心配はいらなそう。今日は宿泊した姫崎から大佐渡スカイラインを使い佐渡金山等で有名な相川町へと佐渡を横断する予定である。

昨日は海岸沿いを軽く(といっても100km近く)走ったが、その時の印象はあまり面白いものではなかった。それだけに、今日走る大佐渡スカイラインには多かれ少なかれの期待を抱いてホテルを後にした。




新保川ダムで撮影

姫崎からは県道45号「佐渡一周線」を使って両津港を目指すが、この道は海岸線のくせに結構アップダウンを繰り返す。しかも道幅が狭い割には交通量が多く、コッチも車のスピードにあわせてペースを上げるしかない。海岸線の景観が良いのが唯一の救いだな。

両津を経由し大佐渡スカイラインの入り口である金井まで来ると佐渡の最高峰「金北山」が覗ける。と、ここで先日の事が脳裏を過る。

大佐渡スカイラインに行くんです」、この言葉を出すと大半の反応はこうだ。

えー、あれで行くの!?車だって二速じゃないと登れないよ!」と、フェリーで会った人や飲食店の主人、そして宿の主人さえも筆者のバイクを指差して脅しをかけてくれた。

ありがたいことだが、それで引き返してはここまで来た意味がない、そんな忠告を頭の片隅においやり、深呼吸を一回した後、新保出崎交差点から始まる大佐渡スカイラインへの道を登りはじめる。初めの1kmは緩やかな登りと田園風景が続き、木々に道がだんだん覆われるようになると勾配を徐々に増してくる。だが決して登れないような所ではない。

「なんだ、大したコトないじゃないか」と一人呟きながら新保川ダムまでの登りを楽しむ。ここまでで高度は150m。「このペースなら尾根には結構速いペースで着くかもしれない」と、ダムの前で小休憩をするが、ここが地獄の入り口だとは思いもしなかった。



気力も萎える勾配16%の標識

新保川ダムからチョット走ると道路の様相が激変する。路面には六角形型の小さい溝が無数に掘られていて、ハンブ舗装とも違うこの道は走りにくい。そして特筆すべきがここからの勾配だ。これまでが8%前後だとすると今は14%、いや15%前後だろうか。ともかく8%から15%なんて、自分の中では経験のない勾配の増し方だ。「何を大げさな」と思うかもしれないが、クランクを2〜3回転しただけで高度計が1m上がることから決して的外れな事を言っている訳ではない。

金北山の尾根の標高は942m。現在の高度が150mだから、あと800m近くもこの登りが続くのか。モチベーションはひたすら下がる一方だが、ペダルだけは漕ぎ続けなければならない。おまけに路面の六角形型の舗装は衝撃が酷く、このままだと脚よりも先に腕が参ってしまう。しょうがない、ここはチューブの空気圧を下げて少しでも衝撃を減らさないと。

100m登るどころか50mも登ると息が続かない。しかもダンシングじゃないと失速しそうだ。忠告してくれた連中の「ほーら、やっぱり」という声が今にも聞こえてきそうだが、我が身を呪ってる暇なんぞ今はない。もう意地しかないのだが、それでも上から降りてくるライダー達から送られる挨拶を笑顔で返すのだけは忘れない。そう、例えその笑顔が引きつっていたとしても。

登っては休み、登っては休みを繰り返し、航空自衛隊佐渡分屯地の手前で「この路面じゃ乗って戻るのは無理だなあ」なんてヘバッていると、地元の人から「尾根の手前にあるドライブインは、後2km位だよ」と言われる。尾根まで行けるか不安だっただけに、これには助けられたような気がする。おかげで気力も復活したのか、再び登り続けることができる。

直線的な登りからツヅラ折れの登りに変わるが、勾配は尚も増え続けてペダルは一層重さを増す。しかもご丁寧に「勾配16%」の標識を立ててくれていて、精神的にもバイクに乗りつづけることが出来なくなってしまった。尾根まではもう2kmをきっている。ならここからは押して歩こう、と気持ちを切り換え、サイコンを高度表示から距離表示に切り替え進みだす。



延々と続く平均勾配15%の登坂(向こうに見えるは両津港)

もう勾配なんぞ関係ない。逆に押している事で回りの景色を見る余裕すらでてきた。見下ろすとツーリングの始点である姫崎の灯台や両津港なんかがボンヤリと見えていて、体力的にはまだキツイが精神的には少し楽になったような。でも尾根どころかドライブインにも着きゃしない。ハァ、と一つため息をついて更に押し上げ、ふと上を見上げると大きな風力発電機と建物が見え・・、ン!?、あれがドライブインか!

気持ちははやるものの悲しいかな身体がついていかない。だがドライブインの手前で勾配が緩くなったのでサドルに跨りヨロヨロと進みだす。いや本音を言えば押して歩く姿をドライブインの人に見られたくなかっただけなのかもしれない。我ながら見栄っ張りやなあ。

ヨロヨロになりながらバイクを建物に立てかけ、自動販売機の水を買い込んで座り込んでしまう。するとドライブインの人が「あの自転車で来たんか!」と驚きの顔を見せていたが、息をゼェゼェと乱している筆者には肯くのが精一杯だ。

10分位座り込んでいただろうか、まだ完全ではないが体調が戻ると途端に腹が空き出す。このドライブイン「白雲荘」(なる程、手に届きにくいという意味では雲と一緒か)の食堂で山菜そばを注文した。すると先刻会った人から話を聞き及んでいたのか、厨房にいるおばちゃん達の「何処から来たん」という言葉を皮切りに世間話が始まる。しかも自分たちのお弁当からオニギリを一つ分けてくれた。おばちゃん、ありがとう。

ドライブイン「白雲荘」の写真はこちら


食事と世間話を終えた後は展望台に上がって姫崎や、両津、そして反対側の尖閣湾の景色に見入る。今は9月で木々の色も緑だが、もう少し経てば紅葉も相俟って更に景色が楽しめるのだろう。

さて、ノンビリしたい所だが、実を言うとここは尾根ではない。このドライブインの標高が765mだから、尾根までは未だ200m近く残っている。ただ、ここから尾根までは近いとドライブインの人から情報を得られた。しかも登りで散々悩まされた特殊舗装も消えるという。「ならば乗っていける」、そんな手応えを感じドライブインから尾根を目指して走り出す。そしてここからが待望の「大佐渡スカイライン」の始まりだ。

タイヤの空気も入れ直し、しかも舗装の状態が良くなった今、このバイクで登れない所はそうない。ドライブインからの勾配も9%前後と、先刻とは比較にならないくらい緩い。それに何といってもこの景観を眺めながら走れるというのがたまらなく楽しい。群生するススキ、そして無数のトンボは秋の気配を運び、ここまで来た筆者を迎えているように思えてしまうのだが、少し感傷的になっているようだ。

陽も高くなり照り返しが一段と厳しくなってくる。しかし、ゆっくり、ノンビリと高度を稼ぎ続ける。つづら折れのカーブを繰り返し、視界に入る海が何度か左右交互に入れ替わると、道の左に標識が。

ここがスカイラインの最高点 標高942m」・・・尾根だ。



大佐渡スカイラインの最高点 942m

ふぅ、長かった、新保川ダムからここまでの登りは本当に長かった。その分喜びもひとしおだけど、いくらなんでもあの特種舗装と勾配は自転車には酷すぎる。だが今はそんなことより、これからの下りを楽しみたいという気持ちの方が先行している。

大佐渡スカイラインは今年の4月からの補修工事のため、大型車両が金井から相川への一方通行のみに制限されている。つまり、今いる尾根から相川までは対向車線に観光バスやトラックが来ないということで、対向車をそれほど気にせず下れるのはありがたい。

サドルの位置を下げ、ブレーキとホイールのチェックを行い下り始めるとメーターは直ぐにも40kmを超える。すると次はRのキツいワインディングの連続だ。リムの熱を気にしてフロント、リアブレーキの各々を長時間かけ続けないよう30km前後の速度を維持する。

だが道はいつのまにか小仏峠へと続く登り道へと変化する。この峠、名前に「仏」なんてつけているが登り返しを強要するところをみると自転車に対して相当意地悪な仏なのだろう。せめて峠の標識くらい置いといてくれよ、と、捨て台詞の一つも吐いておくことにする。

小仏峠を過ぎると下りのワインディングは更にRを増す(殆ど180℃)。オマケに傾斜までつき、さながらバンクのような雰囲気すら見せはじめた。ここまでくるとさすがに30km前後でも曲がりきれない。しょうがない、奥の手・・・いや奥の脚だ。ペダルから脚を外し、その片一方のシューズを路面にこすり付けて減速する。これをやるのは雪の日のツーリング以来だが、靴底を減らしながら減速するこのやり方でもそれなりに効果があるもんだ。

乙和池の写真はこちら


途中、「乙和池」という天然記念物に指定された池に立ち寄った後、佐渡金山(有料なんで立ち寄らない)を経て相川まで下る。その眼前には尖閣湾が拡がっていて、堤防で海を眺めていた。この後は佐和田町を経てフェリー乗り場のある両津港に戻ることで、佐渡の小旅行は幕を閉じることとなる。

ただ、航路での酒代を浮かす為、バイクをせっせと輪行形態にして手回り品料金を取られないよう努力する男が一人いたことはいうまでもないだろう。