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「ガセつかませやがったな」 こんな恨み節から入ったのは、余地峠へ向かうため県道108号を走っていた時に「峠の湯」の手前2kmで「この先は通れないから引き返して下さい」と建設作業員から足止めされたことに始まる。 聞けば余地峠の手前で余地ダムの建設作業が着工されているとのことで通行不可だという。それでも峠の湯まで行ければ何とかなると思って「峠の湯もアカンの?」と食い下がると「峠の湯なら少し戻った所にある林道から行けますよ」と自信ありげに即答してきた。 手持ちの昭文社5万図にも載ってないその林道の名は「田口・十石峠線」。名前から察するに迂回できそうな気もするが、走りながらも「ホンマかいな?」と疑いは晴れない。 路面もよく締まり穏やかな勾配のダート、だがピークを超えると崩落して放置されたような場所に出てしまい先へ進むのは無理そうだ。周辺を幾つか調べても行き止まり、この時作業員への疑いは確信に変わり、先の恨み節を吐くほどに怒り心頭。 「余地峠、大上峠、十石峠越え」という当初の計画は見事ボツ、さてどうしたものか。 |
赤谷林道と臼田の集落を経由して海瀬に戻りルートの再検討に入る。 代替案は二つ。一つ目は十石峠を越え上野・鬼石へ抜けるというもの。二つ目は古谷ダムの分岐から大上林道で大上峠を越え群馬側から余地峠にアプローチ、佐久側へは越えられないから来た道を戻り後は出たトコ勝負。 まあ、どちらにせよ国道299号で古谷ダムまで行くのは変わらない。そこで古谷ダムまで走ると・・・国道299号は十石峠を越えたあたりから10kmに渡って通行止め、大上林道の方は崩落の可能性有りとのことで通行止め、なんじゃこりゃ?。 ここまでくると役人の仕打ちここに極まり、って感がある。しかし十石峠は洒落にならないケースになってることが多いのも事実で、そうなると通行できる可能性の高い大上林道を選ぶしかない。 通行止めとあってさすがに人の姿は皆無だ。ブナに覆われた緩やかな勾配の道、忠告通り崩落と滑落が一箇所ずつ起きてはいたが程なく大上峠へと到着する。しかし強風が吹き荒れ雪もパラつき出した峠ではバーナーも安定せず昼食もままならないため足早に峠を後にした。 |
「寒くてやってられんわ」 大上峠から下った時の感想がコレ。冬の下りが辛いのは周知の事実だが0℃を下回る環境下での食事もまた辛かったの一言、もうほとんど拷問である。チギれそうな耳の痛みを我慢し下っていると群馬側の通行止めフェンスとバンガローが目に入る。余地峠へ行くための分岐がある南牧村自然公園だ。 余地峠へ続く林道は特に道標もないが急勾配のコンクリ舗装を目印にすると良いだろう。登るにつれダートやガレ場が出現するが、下りの寒さで身を縮ませていただけに押しが差ほど苦にならないというのだから現金なものである。 余地峠旧道(林間歩道)と合流する標高1100〜1150m付近で「余地峠」への道標が現れたが、実はこれがトリッキーな配置をしている。てっきりこの先の一つ目の分岐を指すのかと思いきやどうも峠とは方角が違う。そこで更に先へ進むと二つ目の分岐が出現、馬頭観世音の石碑(※峠にあるものとは別)を過ぎた方の分岐と言った方が解りやすいかもしれないが方角からするとこっちが正しい。今日はコンパス持ってきて良かった。 二つ目の分岐を左に曲がると最後の大仕事、シングルトラックの登りが峠まで待ち受けている。道の真ん中は霜柱が立っていてバイクの自重だけでも沈み込んでしまうためなかなか前に進まない。 進まないバイクの押し・担ぎを繰り返していると冷たい分水嶺の風もおかまいなしに額から汗がにじみ出ててきた。だが休憩がてらボトルに口を付けると中身の4分の1は既にシャーベット状、チラつく雪に寒々しい西上州の展望を見ても暑いんだか寒いんだか解らなくなってくる。 南牧村自然公園の分岐から出発して約一時間強、凍てついた小さな滝を過ぎ風の音しか聞こえない平坦な場所へと出た。旅人を見送るためであろうお地蔵様と小さな石碑が待ち受ける場所、余地峠である。 余地峠の写真はこちら |
ひっそりと置かれた石碑は人の往来が多かったことを物語り、お地蔵様は峠越えの厳しさを物語る、なんというか、こう味のある峠だ。できればこのまま佐久側へと越えたかったがダム工事ではそれも適わない。 しょうがなく峠脇で休憩に入った。最近お気に入りの「さつまげんち」をバーナーで沸かした湯で割り身体の中から暖めていく。お湯割りを呑みながら木々の隙間から見える山々をのぞくと一層寒々しい空気に覆われ出していた。 今は雪がチラつく程度だが大荒れになりそうな気配で、実際、南牧村自然公園に戻ったときには吹雪きはじめていた。この中を下るというのもゾッとする話だが、大上峠を登り返し通れるか分からん十石峠へ行く気力は無いし下仁田へ下るしかなさそうだ。 下っていて深刻だったのが寒さより視界の悪さだった。雪で視界が40m前後しか効かず、ブラインドカーブではミラー確認が直前じゃないと出来ないため自然と速度が落ちていく。フロントライトは点けっ放しだが、これで対向車から見えてくれるかどうか。 幸い怪我も事故もなかったのは普段の行いが良かったのだとしておこう。偽てらさんが居たらこうはいくまい、と胸をなで下ろし下仁田駅から汽車に乗り込むが、その車内の寒かったこと寒かったこと。上越線から入ってくる汽車なんかは屋根に10cm程度の積雪があって今日一日の寒さを物語るが、なんとなく来年もまた雪に悩まされそうな予感がする一日でもあった。 |