トップルートバイクリンク特 集囁 き


2002年 11月 17日(日) 長野県

大河原峠を行く


大河原峠にて撮影

■始点 ■終点
JR小海線 中込駅 JR長野新幹線・小海線 佐久平駅
■走行区間・距離
中込駅〜(蓼科スカイライン)〜蓼科仙境都市〜(大河原林道)〜大河原峠〜(唐沢林道)〜寺久保〜(県道482号 雨境望月線)〜畳石〜望月〜百沢〜八幡〜(県道44号 下仁田浅科線)〜佐久平駅 76km



僅かに紅葉を残す蓼科スカイライン

鉛色の雲に覆われた蓼科山はその頂を見せることは無く、出発地の中込駅からその様子を窺い知ることができない。降雪を想像するに容易い状況ではあるが、先週のあの状況に比べればまだ可愛いものだ。

蓼科スカイラインに入ると同時に現れる勾配11%の標識に一喘ぎすると、気温は低いのに汗がブワッと滲み出てくる。走り込んでいない自分にとって序盤の1kmは妙にこたえ、顔を落としては出っ張りはじめた腹を恨めしく見つめるしかない。

高さにして200mしかまだ稼いでないのにこの有様とは情けない話だが、僅かに残る紅葉を唯一の励みに忍の一字。だが、美笹温泉の手前から別荘地までの区間はペダルも軽くなり表情から険しさも消えていく。

それに今にも雪が降りそうだった鉛色の空も西の方から青い空へと少しずつ回復へ向かっていて、この先の行程に明るい兆しも僅かに見え始めた。





蓼科仙境都市から登ってきた道を辿る

今日の蓼科スカイラインは交通量が少なく非常に快適だ。オマケに通る車も地元の軽自動車が1時間に2台走る程度とシーズン中の混み方が信じられない位である。

ただ、その中には引き返して戻ってくるのも何台か見受けられ、蓼科仙境都市までの往復か?、それとも降雪か?、と一抹の不安は残すこととなる。もっとも、大河原峠、鹿曲川林道、唐沢林道が落石・積雪・路面凍結で通行止めの規制が望月町役場から出ていたのを予め知ってはいたのだが。

標高1200mを過ぎる頃、今ままで見えなかった展望が開きはじめ、背には浅間山と高峰高原、それに佐久市街を望むことが出来るようになる。特に標高1360mに位置する展望台からはそれらが一望できたが、遮蔽物である樹木も少なくなるため風の影響が強くじっとしていることができない。

この展望台から標高1900m付近の大河原林道起点までは延々とした稜線沿いのヘアピンの連続。浅間山と並走できる「オモシロイ部分」と、展望も何も無く熊笹※高山性の植物しか見えない「アキアキする部分」が混在し、少々嫌気がさしてくる。

路肩には徐々に雪が増えはじめ、これがツーリングのちょっとしたアクセントにもなっていたが、蓼科仙境都市を過ぎた辺りからはアイスバーンが露出しだし乗車困難な状況に陥る。アイスバーン、というよりは完全に氷で、タイヤが全然グリップせずアイゼンで足場を確保しながらじゃないとバイクを押し上げることすらできない。

かなりシビアな状況ではあるが目的地の大河原峠はあと少しの距離、ここは腰を据え浅間山でも見ながらゆっくり氷の九十九折れを上っていくしかないか。





大石川林道 ※標高2000m付近

ラッセルとは勝手の違う「押し」に苦労すること暫く、蓼科スカイラインと国道299号を結ぶ大石川林道の分岐に出ることができた。大石川林道はちょうど蓼科山の日陰になって先週の積雪をそのまま残しているようで、少し歩いてみた限りは膝までが完全に埋まる感じである。積雪30cm強といったところか。

もし峠への到着が早いようなら大石川林道を使い双子池・雨池を経由して八千穂駅まで戻ろうかなどと思っていたが、その考えの浅はかさに「ゴメンなさい、私が悪かったです」と、ただただ自嘲するしかない。

侵入を試みたであろうオフロードバイクの轍も1本残っていたがそれも30m先でUターンしたようで、多分その判断は正しいと思う。なんといっても林道のピークである双子池はここよりも200m以上標高が高く、状況は尚一層悪いのだろうから。

なんとなく後ろ髪引かれるが、ラッセルすら困難な林道に未練を残していてもしょうがない。とりあえず当面の問題である「雪と氷の道」をクリアーし大河原峠へ向かわねば。

大石川林道の分岐を過ぎ、更に何回かの九十九折れをクリアーすると稜線沿いの穏やかな勾配の道に移り変わり、それと同時に雪も深くなってタイヤが再びグリップをし始めるのだが、今度は積雪が酷すぎてラッセルに切り替えて進むしかない。

タイヤとハンガーに雪が絡みつき重くなっていくバイクを押すたび腰に重い痛みが走りはじめだしたのだが、どうも氷上での押し上げで腰を痛めたようで、正直いってかなりツライ状況になってきていた。





大河原峠から浅間山と佐久市街を望む

大石川林道から押し上げること30分弱、到着した峠では眩しいほどの日差しと強風で迎えてくれた。

強風に舞う細かい雪が、日差しと照り返しで焼けた頬にあたり突き刺さるようである。その強風のせいでガードレール側は雪こそ積もらないものの蓼科山側の休憩所と自販機は雪でビッシリと埋まっていた。

そんな誰もいない峠で一人展望に見入っていたのだが、内心はこの峠から先がどうなっているのか気が気でない。

峠の先を確認してみると、再び出現するアイスバーンに「手を離したらバイクはガケ下だな」と、頭を悩ませる。上りよりも遙かに難易度の高い凍結した路面での下り、果たしてここを下りきるのにどれ位の時間がかかることか。腹を括ってバイクが勝手に滑り落ちないよう腰を落としつつ抱え込み足場を慎重に確保しながら下り出すが、腰を退いて下っているせいか今度は腰じゃなく腹筋が痛み出した。

峠から唐沢林道までの区間はずっとこの調子である。上りならバイクを担ぐという選択肢もあるのだろうが、凍結した路面の下りでは自身のバランスを崩すのが関の山。さすがにこの時ばかりは自動車への羨望もあったが、ここは「アイゼンが無かったら死んでたな」と、前向きに考えることにした。※全然前向きではない、この時はどうかしてました

標高1900m付近まで下ると路面からアイスバーンが消えようやく乗車にこぎ着けられたが、気温1、2℃での直線的な下りは想像以上の厳しさだった。手の指先はそうでもないが、ラッセルで靴が濡れていたのか足先が凍て付くような寒さになる。唐沢林道から県道482号に出ても身体や足の「冷え」が全く取れず、暖をとるために立ち寄った「あさしな温泉」で足を確認すれば指と踝が紫色に変色している程であった。



冷え込みと降雪の早さに閉口させられた今回のツーリングはこれにて幕を閉じるが、これから初春に懸けて訪れられる場所がかなり限定させられることを再認識させられた。冬ならではの交通量の少なさがこの時期のツーリングの醍醐味ではあるのだが、命を賭すかようなリスクにそれが見合うのか疑問視された旅でもあった。