国会では有事法制論議が活発です。この問題を議論する場合に日本の防衛政策の基本スタンスを踏まえなければ、同じ土俵の上で議論がなされなければ、どうも前向きな議論とはなりません。そこで、有事法制論議の前提にある、防衛政策の基本を記しておきます。「その1」「その2」と二度にわたってレポ−トしますので参考にして下さい。(資料:防衛庁)

 

A.憲法と自衛権

○日本国憲法は、第9条に、戦争放棄、戦力不保持、交戦権の否認に関して規定している。

(参考)憲法第9条@日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを保持しない。

         A前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 

○もとより、我が国が独立国である以上、憲法第9条は、主権国家としての我が国固有の自衛権を否定するものではない

(参考)森清議員提出質問主意書に対する答弁書(昭和55年12月5日)

  @について 憲法第9条第1項は、独立国家に固有の自衛権までも否定する趣旨のものではなく、自衛のための必要最小限度の武力を行使することは認められているところであると解している。政府としては、このような見解を従来から一貫して採ってきているところである。

 

○我が国の自衛権が否定されない以上、その行使を裏付ける自衛のための必要最小限度の実力を保持することは憲法上禁止されているものではない

(参考)森清議員提出質問主意書に対する答弁書(昭和55年12月5日)

  Aについて、憲法第9条第2項の「前項の目的を達するため」という言葉は、同条第1項全体の趣旨、すなわち、同項では国際紛争を解決する手段としての戦争、武力による威嚇、武力の行使を放棄しているが、自衛権は否定されておらず、自衛のための必要最小限度の武力の行使は認められているということを受けていると解している。

  したがって、同条第2項は「戦力」の保持を禁止しているが、このことは、自衛のための必要最小限度の実力を保持することまで禁止する趣旨のものではなく、これを超える実力を保持することを禁止する趣旨のものであると解している。 

 

A-1 自衛権発動の三要件

 @我が国に対する急迫不正の侵害があること(すなわち、我が国に対する武力攻撃が生したこと

 Aこれを排除するために他に適当な手段がないこと

 B必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと

 

(参考1)金田誠一君提出質問主意書に対する答弁書(平成14年5月24日)

  @について (前略)自衛隊法第76条の「武力攻撃」とは、一般に、我が国に対する組織的計画的な武力の行使をいうと考える。(以下略)

 

(参考2)平成14年5月16日 衆議院・事態対処特委 中谷防衛庁長官答弁

  武力攻撃が発生した時点というのは、基本的に、武力攻撃が始まったとき、すなわち、相手が武力攻撃に着手をしたときであると考えておりまして、武力攻撃による被害の発生が現実にあることを待たなければならないというものではございません。現実の事態におきまして、どの時点で相手国の明示をされた意図、攻撃の手段、態様等々をもって勘案して判断する必要がございますので、一概には言うことはできませんので、個別具体的に判断すべきものであるということでございます。

 (注)仮にわが国に対する弾道ミサイル攻撃が行われた場合を例にとってあえて言えば

   、武力攻撃の発生時点は、弾道ミサイルがわが国領域に着弾した時点に限られるものではなく、状況によっては、それ以前の時点、例えば、わが国に向けて弾道ミサイルが発射された時点であれば、武力攻撃が発生したと認められるものと考える。

 

A-2 集団的自衛権

 ○我が国は、国際法上、個別的及び集団的自衛権を保持

 ○しかし、集団的自衛権を行使することは、我が国を防衛するための必要最小限度の範囲を超えるものであって、憲法上許されないと解釈

(参考)土井たか子議員提出質問主意書に対する答弁書(平成13年5月8日)

  政府は、従来から、我が国の国際法上集団的自衛権を有していることは、主権国家で

ある以上当然であるが、憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は、我が

国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的

自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されないと考えて

きている。憲法は我が国の法秩序は十分に慎重でなければならないと考える。他方、憲

法に関する問題について、世の中の変化も踏まえつつ、幅広い議論が行われることは重

要であり、集団的自衛権の問題について、様々な角度から研究してもいいのではないか

と考える。 

 

A-3 自衛権の地理的範囲

 ○必ずしも我が国の領土、領海、領空に限られるものではなく、公海及びその上空にも及び得る

 ○但し、武力行使の目的を持って、自衛隊を他国の領土に派遣すること(いわゆる海外派兵)は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されない

(参考)森清議員提出質問主意書に対する答弁書(昭和60年9月27日)

   我が国が自衛権の行使として我が国を防衛するため必要最小限度の実力を行使することのできる地理的範囲は、必ずしも我が国の領土、領海、領空に限られるものではなく、公海及び公空にも及び得るが、武力行使の目的をもって自衛隊を他国の領土、領海、領空に派遣することは、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないと考えている。仮に、他国の領域における武力行動で、自衛権発動の3要件に該当するものがあるとすれば、憲法上の理論としては、そのような行動をとることが許されないわけではないと考える。

 

     わが国に対し弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合、他に手段がないと認められ     る限り、敵のミサイル基地等をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能

(参考)衆議院・内閣委 船田防衛庁長官答弁(昭和31年2月29日)

  わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段として、わが国に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。

 

A-4 憲法上保持し得る防衛力

○自衛のための必要最小限度のもの

○性能上専ら他国の国土の壊滅的破壊のためのみ用いられる兵器(例:ICBM 長距離戦略爆撃機等)は保持し得ず。

(参考) 参議院・予算委員会 瓦防衛庁長官答弁(昭和63年4月6日)

  憲法第9条第2項で我が国が保持することが禁じられている戦力とは、自衛のための必要最小限度の実力を超えるものと解されているところであり、同項の「戦力」に当たるか否かは、我が国の保持する全体の実力の全体が右の限度を超えることとなるか否かによって、その保有の可否が決せられるものであります。しかしながら、個々の兵器のうちでも、性能上専ら相手国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられるいわゆる攻撃的兵器については、これにより直ちに自衛のための必要最小限度の範囲を超えることとなるから、いかなる場合にも許されず、従って例えばICBM、長距離核戦略爆撃機、・・・長距離戦略爆撃機あるいは攻撃型空母を自衛隊が保有することは許されず、このことは、累次申し上げてきているとおりであります。

 

 次回は、「B.防衛政策の基本」「C.奇襲対処について」がテ−マです。


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