昭和43年のゴールデンウィークに妙高山(2445.9m)に登山した時の出来事である。
東京にいる時、時々山へ登っているうちに、山に行きたかったのか、信州に帰りたかったのか複雑なおもいで、東京の地からこの年の1月1日に故郷の信州に帰ってきた。勤め先も決まり、ようやく落ち着いたころゴールデンウィークに山へ行く計画を立てた。
実兄に車で、池の平まで乗せてもらって妙高山に登りだした。天気も良く無風であった。池の平スキー場を登り 南地獄谷を渡り、稜線から妙高山の山頂に向かって登った。
山頂は、春の残雪におだやかなぽかぽか陽気であった。
故郷に帰りし初の登山
集団登山登りし妙高山の
故郷の山々の思い出
眼下のかなたに野尻湖が
さざ波を浮かべて光放つ
南方に見えるのは、黒姫山
少年のころ駆け回り戯れし
懐かしの黒姫山の思い出
黒姫の裾野あの藪あの石
岩々を覗きし緑色の苔光放つ
山頂で飽きることのない展望に別れを告げ、もとの稜線を下った。登る時ピッケルが無かったので、かんばの木で、手製のピッケルを作ったものを持っての下山である。アイゼンも買ったばかりのものである。
雪がくさっていたが、気持ちよくトントンと下った。夏にクサリ場になっている当たりに下って来た時、靴の裏に雪の固まりが、出来て足を滑らせてしまった。慌てて手製のピッケルで雪に突き刺したが、虚しく刺したまま滑って行った。耐えきれなくなって、手から離してしまった。
しだいに加速して頭が先になって、北地獄谷に向かって落ちていった。滑落に身を任せ覚悟して目を閉じた。
さらば我が身よ
生まれ育ちこの地よ
身を魔風に叩かれ
灼熱の雪の摩擦
お迎えの地獄谷へ
あー故郷 あー母よ
さらば我が人生よ
そんな時、ガーンとリックの背中に当たって、体が180度回転して止まったのだ。見ると、かんばの木が残雪から出ていた。 この時初めて自分が生きているということを、身をもって実感した。体もいたるところに熱さを感じる。リックに入っていたカメラがガタになった。見上げると、100m以上は、滑落している。
初めてのアイゼン登山・・・・・それからは、靴の裏の雪玉もこまめに落とすようになった。
ピッケル・・・・・・・・・・・・・・・・・まもなく、本物のピッケルを買う
リック・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・物が少ない時は、クッション材を入れるようにしている。
そして下山して妙高の田口駅から汽車で実家に帰った。翌日実兄に車に乗せてもらって、黒姫の東登山道入り口から黒姫山(2053m)に登った。
次に黒姫山に登ったのは、日本百名山を全山登頂してからである。

滑落の天国と地獄
「教えてな
命尊さ
山の神」・・・服神院
写真、 妙高山
| さらば 我が身よ、我が人生よ |