
1986年ごろ 我が家には子供が一人だけで、時々ポツンとしている息子の姿が気になり、兄弟がいない為さみしくならないようにと、犬を飼う事に決めた。
桜も散り元気よく青葉茂るころ、長野へ息子と出かけペットショップに行ったら、歩道に置いてあった篭の中に小犬が3匹いた。
息子と二人で見ていたら、店の主人が出てきて
「ただで持って行って良いです」
「雑種だから、どうぞ」
「小犬にはお腹に虫がいるから、薬飲ませて下さい」
と言われ薬を買って小犬をもらって帰って来た。
息子が犬と戯れている間に、早速あり合わせの材料で犬小屋を作った。無理やりに小屋に入れたがすぐに出てしまう。見知らぬ所へ来たので、まだなついていないからか「ワンワン」と啼いていた。
犬の名前を[チヨ]とつけた。
いつしか我が家にも慣れて、元気よく育った。時々綱がはずれて思いっきり走り飛び回っていた。そんなある日の事である。
近所の家にいる犬に近づいて行って、そこの主に見つかり棒で引っぱたかれてビッコを引いて帰ってきた。
「キユーンキューン」
と痛くて悲しい顔をして啼くチヨ、小屋に入ったまま出て来ないチヨ。
父上のご機嫌をうかがい
愛嬌振りまく チヨ
いつも悲しい顔して
何を欲しがるのか
美味しい食事なのか
それとも楽しい散歩なのか
我が家に花を咲かせるチヨ
息子の顔をにらめつけて
鼻にシワをよせる チヨ
弱いものいじめして
何を求めるのか
じゃれて遊びたいのか
それとも憂さ晴らしなのか
我が家に明るさを呼ぶ チヨ
母上にお座りしてシッポふって
クンクンと甘える チヨ
何が食べたいのか
よだれが出そうなお肉なのか
それともパンなのか
我が家の家族の一員 チヨ
野山に連れて行ったが、崖を見ると気の小さなチヨ、それでも元気に走り回るチヨである。
2年後の秋、夜勤明けで家に帰ったら小犬を生みチヨも亡くなっていた。
小犬をどうして育てて良いのか、小犬も寒くて死んだのか、不明のままチヨはこの世を去った。

自然豊かな我が家の庭に静かに永久の眠りについた。チヨが啼いているのか、そこに毎年花々が可憐に咲いて和ませてくれている。
いつまでも、花々のように我が家を見守っていてくれ
いつまでも、夢で良いからチヨよ我が家に帰っておいで
いつまでも、語り継がれるチヨの想い出
ひとときの瞬きに、 

チヨがワンワンと呼ぶ姿がいつまでも
心の何処かに静かに聞こえてくる!!!

