演暢寺のイヌマキ

無指定
所在地 : 三重県いなべ市大安町石榑南

菰野町市街から国道306号線を10kmほど北上し、大安町・石樽南交差点で左折、細い旧街道を 800mほど進むと右手に 演暢寺(えんちょうじ)がある。演暢寺は立派な造りのお寺で、手入れも 行き届き、日当たりが良く明るい雰囲気のお寺だ。門をくぐった左手に、樹高13m、目通り幹周 3.95mと記される、立派な樹容をしたイヌマキが、広い境内の風景を引き立てている。 最近、元気が衰えたように感じている、と奥さんが話をされていたが、境内に車を乗り入れておら れるので、土圧が高くなっているのですよ、と相づちをうっておいた。 この地域は、古くは鈴鹿山脈の石榑峠(いしぐれとうげ)を越えて伊勢と近江を行きかった八風街道の 道筋で発展した、物・心共に豊かな村だったようだ。その根拠は、このすぐ近隣に、大きく立派なお 寺がここを含めて三つもあることだ。今の時代、過疎と共に寂れたお寺を見ることが多くなったが、 こんな山裾の片田舎にありながら、この地のお寺は全て立派に維持されている。人々の心は今も豊か なのであろう。

イヌマキ : 暖地の山林に生え、また庭園でもよく植えられる マキ科の常緑高木。紀伊半島一円などで、コウヤマキのホンマキに対して犬の字を冠して区別したも のである。樹高は20m、幹周りが4m以上に達するものがあり、水平に枝を張る。 幹の樹皮は褐灰白色で縦に裂ける。葉は密に螺生し、線状披針形で先は少しとがり、長さ7〜15 cm、表面は濃緑色を呈する。花は5月ごろ前年枝に腋生し、雄株では長さ3〜5cmの円柱形の 雄花が3〜5個、短い柄につく。雌株では1cm内外の柄で雌花が単生し、著しい花托がある。10 月粉白緑色の球形種子が熟し、花托は肉質赤紫色に肥厚して食べると甘い。種子は樹上にあるうち に発芽し、幼根を出してから落ちることが多い。房総半島以西琉球諸島までの主として太平洋側と 台湾、中国中・南部の暖帯、亜熱帯に分布する。適潤地を好み、海岸林に多い。材は黄褐色で木目 が通り、水湿に耐え、またシロアリに強いので、建築・土木用に供される。潮風に強いので沖縄県 では海岸砂防林としても植えられる。切ると特殊の臭みがある。庭園樹にされるラカンマキ はイ ヌマキの園芸品種と考えられている。