国際ニュース・カウントダウン
国際ニュースを切る
◆移民問題に揺れる世界
▼移民規制の強化
移民問題を巡るニュースが各地で起きた。
英国は2007年1月のルーマニア、ブルガリアのEU加盟をにらみ、労働者流入の規制を強化する政策を発表した。未熟練労働者の就業は人手不足の深刻な農業や食品加工に限るなどの内容で、「EU内の労働移動は規制しない」という従来の大原則を修正するもの。
今回の決定そのものに対しては批判もあるが、何らかの規制の導入はやむをえないという反応が英国内では多い。
フランスでは昨年秋、移民住民が各地で暴動を起こしショックを与えた。それから1年を迎えた27日、パリなど各地で再び若者らが暴れ、車両277台に放火するなど混乱が広がった。移民問題が深刻なことを改めて印象付けた。
米国ではブッシュ大統領がメキシコ国境へのフェンス建設法案に署名した。不法移民を国境で阻止しようという策だ。
メキシコからの不法移民は数十年来の問題で、ブッシュ政権下でも様々な対策法案が検討されてきた。しかし問題は複雑で、意見集約はままならない。フェンス建設も実効性などを巡る批判も多く、意見は割れている。署名により建設がすんなり進むかどうかは不透明だ。
しかし資格審査や就業対策など目に見えない対応と違い、フェンスは誰の目にも見えるもの。象徴的な意味合いは大きい。
国境を超えた労働力の移動や移民は、グローバル化時代の経済活性化の重要な原動力。米経済が移民の活用で競争力を維持しているのは衆知の事実だ。英国政府も、EU域内やアジア、中東などからの移民が経済成長に重要な役割を果たしていると強調する。一方で不法移民が社会混乱屋社会不安をもたらしているのも否定できない。特に9.11後は、安全保障上からも移民対策が重要になっている。
移民問題の歴史的経緯や状況は世界各国で異なり必要な対応策も違う。長期的な見通しも難しい。しかし当面は、規制強化に動きているのが流れようだ。
▼イスラム文明との衝突
移民問題とも関連するが、イスラム文明・イスラム系住民との軋轢が欧州各地で目立っている。
ベルリンのドイツオペラは9月末、モーツアルトのオペラ「イドメネオ」の上演中止を決めた。預言者ムハンマドの切られた首が登場する演出が、イスラム教徒を無用に刺激するとの懸念が理由(仏陀やキリストなど他の宗教指導者も登場し、ムハンマドを狙い撃ちするものではない)。ローマ法王ベネディアクト16世の発言に対する批判が高まるなど、イスラム教徒との緊張が高まる中での判断だった。
これに対し、自主規制は言論の自由を損なう行為との批判が拡大。メルケル首相も懸念を示した。こうした反応を受けてドイツオペラは26日、規模を縮小して年内に再度上演する方針を明らかにした。
芸術作品の上演や展示の自粛は、ドイツオペラだけではない。ロンドンなどの美術展でも自粛の動きがある。ドイツオペラの迷走も、欧州社会の迷いを投影する。
一方ドイツでは25日、アフガニスタンに派遣した独連邦軍の兵士が現地人で人の頭蓋骨をかざすスナップ写真を取っていたことが判明。大問題になった。新聞報道などで判明した。
死者の骨をもてあそぶことは、イスラム社会では最大級の侮辱行為。アフガン外務省は当然ながら行為を強く非難したし、メルケル首相も行為への嫌悪を表明、徹底的な究明を約束した。
ただ、今回の事例は戦場の狂気に加え、兵士など大衆レベルでのイスラム文明・社会に対する無知や偏見を改めて印象付けた。米軍によるイラクのアブグレイブ収容所での虐待事件などとともに、イスラム社会の記憶に刷り込まれるだろう。問題の根は深い。
(2006.10.28)