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◆超党派報告書とイラク新政策
ベーカー元国務長官ら米国の超党派の有識者がイラク政策に関する報告書をまとめ、ブッシュ大統領に提出した。79項目からなる報告書の特徴は、イラク情勢の深刻さを認めた上で、政策転換が不可欠だと主張した点。ただ、具体的な内容には局面打開の決定打があるとは言い難い。
報告書はイラク政策の行き詰まりを反映した内容。イラクでは戦争終結から3年半が過ぎ、14万人の米軍が駐留するが、情勢は安定するどころか悪化している。現地では1日平均100人以上がテロなどで死亡し、米軍の死者も2800人に上った。
報告書は、米軍の役割を戦闘からイラク軍の育成・支援に転換するよう求めている。イラク軍中心の治安維持体制樹立を目指し、米国はその支援役に徹するべきだとの考えだ。理屈の上ではもっともだし、これまでも模索されてきた。今回「2008年3月までに戦闘部隊の撤退が可能」と時期を示したのは、イラクに対して治安部隊育成の圧力を与える狙いもあるし、2008年の大統領選をにらみブッシュ政権がレームダック化する前を目標時期に設定した意味合いがある。
しかし、宗派対立や政治混乱を背景に、イラク治安部隊の強化はままならない。今後の機能強化の道筋も見えないのが現状だ。
周辺国との協力も言い尽くされてきた。しかし、核開発疑惑を抱えるイランや、米国がテロ支援国家と非難してきたシリアとの直接対話再開は簡単ではない。
ブッシュ大統領は報告書への配慮を約束。年内にもイラク新政策を表明する。しかし、内容の取りまとめは容易ではない。
米国内では、マケイン上院議員らが早期撤退への反対を表明した。イラク情勢のさらなる悪化につながるとの理由だ。逆に、撤退時期をもっとはっきり明示すべきだとの声もある。
イラク国内では、早くも早期撤退への警戒の声が上がる。イスラエルは、報告書の中東全体の安定にはパレスチナ問題などの解決が不可欠という主張に強く反発した。
ベーカー元国務長官の言うように、イラク政策にマジック・ソルージョン(魔法のような解決策)はない。はっきりしているのは、ブッシュ政権のイラク政策が行き詰まり、政策変更が不可欠であるということ。そして世界はなお、イラクの混乱と付き合っていかなければならないということだ。
(2006.12.9)