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◆世界の光景を変えた米中間選挙
米中間選挙は、野党民主党が上下両院で12年ぶりに過半数を獲得。ブッシュ大統領の与党共和党は大敗した。これを受けて大統領はラムズフェルド国防長官を解任、イラク政策の転換を示唆した。世界の光景は大きく変わる。
▽ブッシュの敗北
共和党の敗北は、事前予想の最も悪いシナリオに沿ったレベル。下院では民主党が過半数を大幅に上回り、焦点の上院でも51対49と逆転した。同時に行われた知事選でも民主党が圧勝、民主党知事は22から28州になった。
議会が民主党主導になることの意味は大きい。重要法案や予算、政権の重要人事など、すべて民主党の賛同がなければ通らなくなる(実例としてボルトン国連大使の議会承認が見込めなくなり、来年1月以降に国連大使空席が懸念されている)。
ブッシュ政権はこれまで、上下院与党多数の下に議会対策にあまり腐心しないで政策を推進してきた。これが、議会対策中心に180度方向転換を迫られる。
▽国防長官解任
選挙の翌日8日、ブッシュ大統領は国防長官交代を発表した。イラク戦争を主導してきたラムズフェルド国防長官の事実上の解任人事だ。
ラムズフェルド長官交代を求める声は与党共和党内からも高まっていたが、大統領は選挙前週まで「任期(2009年1月まで)を全うさせる」と述べていた。中間選挙敗北により、舌の根も乾かないうちに変更を迫られた格好だ。
発表の席上、大統領は、後任のゲーツ長官がイラク政策に「新しい視点を提供する」と述べ、イラク政策の転換を示唆した。
▽外交政策転換
ブッシュ政権は、保守色が強く、外交的には単独主義やタカ派的姿勢、力による対応などという言葉に特徴付けられてきた。特に9.11以降にその傾向を強め、アフガン戦争からイラク戦争へと進んでいった。2004年以降ネオコン(新保守主義)の影響が減退するなど多少の変化はあったが、基本路線は変わらなかった。
ラムズフェルド国防長官は、チェイニー副大統領と並び、そうした路線の中心でで、政権の特色を象徴してきた人物。イラク戦争を主導したのもこの2人だ。
その退場は、政権の転換を端的に物語る。イラク政策の転換はもちろん、単独主義→国際協調色への傾斜、力による対応→話し合いの重視、など多くの変化が予想される。
▽残り2年への巻き直し
中間選挙敗北で政権の求心力低下は必至だ。しかし、それがどこまで深刻になるかは、これから次第。
下手をすればレームダック化する。一方で、再選を考慮しなくていい状況を生かし、外交で思い切った政策を打ち出す余地も指摘される。外交は内政に比べれば議会の制約は少ない。同様の状況下で、レーガン政権は旧ソ連との核軍縮を進め、クリントン政権は中東和平や北朝鮮外交で積極的に動いた。
ブッシュ大統領は早速、ホワイトハウスに民主党幹部を相次いで招待、協調重視の姿勢を示した。イラク問題では近くベーカー元国務長官らによる諮問委員会報告を受け取る。レームダック化を避け、残り2年で歴史に名を刻もうという意欲を見せているかのようだ。
▽イラク政策:政策転換でも見えない出口
しかし、政策転換の具体的な展望が見えているわけではない。
イラク情勢は引き続き悪化。シーア派とスンニー派の宗派対立で、1日あまりの100人死者が出ている状況。内戦や国家分裂の懸念もささやかれ続けている。イラク政策の転換を唱えるのは簡単だが、実行は大変だ。
一方、議会で多数派になった民主党とて、有効な代替案を持っているわけではない。新しいイラク政策は、まさに手探りの状態だ。出口は全く見えてこない。
悩みは米国だけのものではなく、世界の課題になる。欧州諸国はこれまで、ブッシュ政権のイラク政策を批判してきた。しかしブッシュ政権の政策転換で、従来以上に責任を突きつけられる。フランクフルター・アルゲマイネ紙は、「欧州はかえって大変になる」と分析する。
▽光景の変化
イラク以外にも世界の課題は山積だ。テロ対策、イランや北朝鮮の核問題、パレスチナ・レバノン情勢などは、世界の安全保障を揺るがしかねない。WTOの新ラウンド交渉や温暖化ガスをはじめとする環境問題も、世界的な課題だ。覇権国米国のブッシュ政権の政策転換は、課題の行方に大きな影響を与える。
中間選挙の影響を展望するにはまだ早過ぎる。しかし、ブッシュ政権の唯我独尊に世界が大きく左右される状況は変わった。今後を見渡す上で、この構図変化の把握は欠かせない。
(2006.11.11)