国際ニュース・カウントダウン
世界を眺める視点



◆中東の戦火拡大と北朝鮮問題


 イスラエルのレバノン侵攻で中東の戦火が拡大。国連安保理ではイスラエル批判決議に対して米国が拒否権を発動し、北朝鮮のミサイル問題を巡る決議案では妥協が成立した。15日にはサンクトペテルブルグのG8サミットが始まり、中東、北朝鮮、イラン、イラクなどの問題が協議されている。ロシアによるチェチェン独立派指導者バサエフ野戦司令官の殺害は、サミットをにらんだ治安作戦だったと指摘される。この時期、国際ニュースは強く連動して動く。


▼中東の戦火拡大

 中東情勢が極めて危険な状態に入った。イスラエルはレバノンに6年ぶりに侵攻。次いでベイルートの空爆に踏み切った。

 レバノンに本拠を置くイスラム教シーア派の過激派、ヒズボラによるイスラエル兵拘束への報復が、侵攻の理由だ。しかし、ヒズボラは当然ながら反発。イスラエル領にミサイル弾を発射するなど報復合戦が拡大している。

 イスラエルは6月末にはガザに侵攻したばかり。こちらも、イスラム過激派ハマスの兵士拘束への報復を理由としている。イスラエルにとっては、国の南北2正面で戦闘を展開する事態になった。

 ヒズボラはイランやシリアの支援を受けているといわれるが、その政治部門はレバノン国会で一定の議席を占め、閣僚も出している。今回のイスラエル兵拘束を実施したのは、その軍事部門。レバノン内のキリスト教徒やスンニー派勢力は拘束を批判しているが、動きを止める力はない。

 パレスチナは今年初めの選挙でハマスに多数を与えた。しかし、対イスラエル関係では共存を認め、和平を模索する意見も強い。こうした中で、共存を否定するハマス過激派がイスラエル兵拘束に踏み切り、イスラエルの報復を呼んだ。

 一方、5月に発足したイスラエルのオルメルト首相は、軍人出身のシャロン前首相と違い、軍に基盤が弱い。このため、兵士拘束という事態に直面し、弱腰な態度に出られない立場にある。それが国際社会から「過剰」とまで言われるガザ侵攻、レバノン侵攻に追い立てたと見るのが妥当だろう。

 当事国・地域のいずれでも、強硬派・強硬意見が突出し、暴力の連鎖が拡大する。昨年のイスラエルのガザ撤退でほの見えた和平への期待は、当面かすんだ。それどころか、事態の収拾がつかなくなる懸念が広がっている。


▼北朝鮮決議と中東

 北朝鮮のミサイル発射問題を巡る国連安保理の議論は、すったもんだの末に決議案が採択された。制裁を前面に打ち出した決議を主張する日米に対し、それでは北朝鮮を不必要に追い込むという中ロが反対。結局、制裁の法的根拠となる国連憲章7章の記述を除く妥協案でまとまった。

 意見調整の過程で、予期せぬ要素として加わったのが中東情勢。国際社会にとってイスラエルのレバノン侵攻への対応は、北朝鮮問題よりはるかに重要度が高い。中東で中ロの協力を得なければならない米国が、北朝鮮問題で主張を通すより落としどころを探ったのは当然の成り行きだ。イランの核問題を巡る各国の利害関係も、濃く連結に絡んでくる。

 米国1極集中の色彩が強かった2001-2003年ごろに比べ、現在の国際情勢下では各地の動きや各国の利害が玉突きのように関連する。それが今回の中東、北朝鮮問題でも出てきた。

 国連安保理決議は採択されたが、北朝鮮問題は根本的な点に進展があったわけではない。6カ国協議再開のメドがついたわけではないし、北朝鮮が瀬戸際外交を続けなければならない状況が変わったわけではない。チキンゲームのような駆け引きがなお続きそうだ。


(2006.7.16)