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◆ブット暗殺


 年末に世界を震撼させるニュースが起きた。ブット元首相暗殺は、対テロ戦争の前線であるパキスタンの基盤を大きく揺るがす。世界の安全保障にも深刻な影響が出るのは必至だ。

 暗殺の真相はなお不明だ。当初、ブット元首相がまず銃撃されたとの情報もあったが、パキスタン政府はその後否定した。今のところ明確なのは、爆テロの爆破があり、20人以上を巻き込む惨事になった点だ。

 犯人はアルカイダやタリバンなどイスラム過激派との見方が有力。ただ、軍部などの関与を疑う声もある。

 ブット元首相支持派は、政権の警備不備が原因などとして、反ムシャラフ大統領の抗議活動を各地で展開した。シャリフ元首相派は来年1月の選挙のボイコットを表明した。

 英Financial Times紙は”Turmoil after Bhutto killed"と伝えた。パキスタン情勢が混乱し、先行きは極めて不透明になった。

 パキスタン情勢は、世界の安全保障にも極めて重要だ。同国はアフガニスタンと国境を接し、タリバンなどイスラム過激派が多数流れ込んでいる。その同国が揺らげば、国際的にイスラム過激派の活動を抑止することは一層困難になる。同国が「世界的な対テロ戦争の先頭」に位置づけられるのも、このためだ。

 米ブッシュ政権は同時テロ後、ムシャラフ政権を支持してきた。同大統領の強権的姿勢への批判が高まった過去2-3年は、民主派を求めるとともに、世俗派と連携支援を模索。最近は大統領と世俗派のブット元首相の協調で、民主化と政権安定を共に実現させることを目指してきた。ブット元首相暗殺で、目論見は水泡に帰す格好だ。

 世界の主要メディアには、民主化とテロ掃討の二兎を追う米国の戦略が破たんした、と明確に指摘する論評もある。

 今後の行方は不透明としか言いようがない。ムシャラフ大統領が戒厳令を公布するという情報も流れているし、1月の総選挙の延期説も出ている。確実なことは、総選挙→政権の正統性獲得と民主化の前進→情勢安定→テロ対策推進、というシナリオは、もはや描けないことだ。

 混乱が拡大し、パキスタンがイスラム過激派の支配する失敗国家になるという懸念すらささやかれ始めた。そうなれば、核兵器(同国は約60発を保有)がイスラム過激派の手に渡るという悪夢の様なシナリオもあり得る。

 世界は目標のレベルを一段落して、危機対応シナリオを練り直さなければならないかもしれない。 

(2007.12.29)