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◆中国全人代のメッセージ


 全人代は中国の定点観測に格好の機会だ。特に初日の首相政府活動報告は重要だ。今年も経済の加熱防止→安定成長、格差是正、汚職防止など例年通りの項目が並んだが、特に弱者救済と不正防止のトーンが強かったのが目立った。


▼弱者救済

 沿岸部と内陸部、都市と農村の格差拡大は深刻だ。中国政府はこれまでも農村振興、西部大開発など是正策を打ち出してきたが、効果が出ているとは言い難い。

 貧民の不満に輪を掛けているのが地方政府の権限乱用や不正。農地の強制収用や強制立ち退きを乱用し、農民の生活基盤を奪う例が後を絶たない。また環境を汚染し、人々の生活条件を悪化させる例も目立つ。こうした状況に農民や貧民の不満は拡大。各地で暴動などが頻発している。

 温家宝首相は、腐敗には厳正に対応すると強調。土地収用や環境問題の是正を約束した。また農村の貧しい児童・生徒への教育支援を打ち出すなど、問題に言葉だけでなく具体的に取り組む姿勢を力説した。

 2007年の経済政策については、8%の成長を目標に掲げ、年間900万人の雇用創出を打ち出した。都市部の登録失業率は4.6%以内に抑えるとしている。

 中国が失業増加を抑え社会の安定を保つためには、7%以上の成長が不可欠といわれる。加熱懸念をはらみながらも、高成長を続けざるを得ないのが経済の実態。そんな状況を反映した数字になった。


▼物権法

 今回の全人代でもう1つ重要なのは物権法案だ。土地の使用権など私有財産を、国有と同等に保護する法律。16日の最終日に可決・成立する見込みだ。

 中国は2004年の憲法改正で私有財産の保護を明記した。しかし具体的な内容を定めた法律はなかった。このため地方政府などが突然不動産を収用すると言って来た場合など、法的な保護が十分でない。実際、そんなトラブルがよく起きている。

 こうした法的保護の不足が経済の健全な発展の阻害要因になっている。そんな指摘が、中国の資産保有者や企業経営者、外資系企業などから出ていた。

 もっとも、他の国では当たり前の法律も中国では別で、法案を巡る議論は曲折をたどった。中国は共産党独裁国家。そして国家による所有が個人の所有の上位に来るのが、共産主義の基本的な考え方だ。党内には当然ながら、私有財産権の必要以上の保護に反対する意見があり、全人代常務委員会の審議は2002年以来何度も繰り返された。

 胡錦涛政権は反対論を押し切って、ようやく法案提出にこぎつけた格好だ。グローバル化時代に対応し経済発展を重視する立場だが、不満や反発はくすぶり続けている。


▼党大会前夜

 中国経済は70年代末からの開放政策が軌道に載り、90年代以降高度成長期に入った。すでに世界の工場となり、世界におけるプレゼンスは拡大の一途。このところ数年は10%前後の高成長を実現している。

 一方で、格差の拡大や汚職、環境汚染などが深刻化し、経済が過熱懸念など不安定要因を抱えていることは言い尽くされている。不正防止や貧民救済、雇用創出を訴える温家宝首相の報告は、こうした現状を改めて映すものになった。ただ、経済改革と密接に絡み合う政治改革についてはほとんど触れず、先送りした。

 中国共産党は今秋、5年に1度の党大会を開く。胡錦涛総書記にとっては第2期の基盤固めをする重要な大会だ。今回の全人代は政治的には、党大会をにらみ政権の基盤固めを優先させる場、と見るのが妥当だろう。


(2007.3.10)