◆中国・胡錦濤体制2期目の課題
中国共産党は党大会閉幕を受けて中央委員会全体会議を開催し、今後5年間の体制を決めた。今回の共産党大会の意義と中国の実態、新体制の課題をまとめると、以下の点に集約されるだろう(INCD2007年42号「共産党大会の移す中国の課題」も参照)
(1)経済の光と影:高成長と加熱、格差拡大
中国経済は2007年まで5年連続で2ケタ成長するなど、高成長を実現。世界の工場に発展した。一方で、景気過熱(バブル)や格差拡大、環境悪化などの問題も深刻化。持続的発展を危うくしかねない。
(2)安定成長への切り替え模索
胡総書記は安定成長への切り替えを志向。共産党大会では「科学的発展観」という理念を持ち出し、環境や格差是正重視など軌道修正を強調した。しかし、高成長を続けなければ社会的不安が実表面化しかねないのが中国の実情。成長と安定のバランスを維持し、持続的発展を実現させる具体的シナリオはなお描けない。
(3)ポスト胡
今回の人事では、政治局員から68歳以上の委員は例外なく引退。若返りを進めた。政治局常務委員には54歳の習近平上海市党書記、52歳の李克強氏遼寧省党書記を登用。次世代(第5世代)の指導者が見えてきた。
(4)利益を分け合う体制
人事で胡総書記の権力基盤はそれなりに強まったが、胡一色になったわけではない。上海閥や太子党にも配慮、バランスを維持した。
中国社会はすでに様々な既得権益者が利益を分け合う体制になっている。これを一気に変えるのは容易ではない。人事にもそうした社会構造が反映されていると見るべきだろう。
(5)正統性の欠如
共産党一党支配が続く中国では、「統治の正統性の欠如」という問題が絶えず付いて回る。選挙の洗礼を経ることはなければ、それに代わる手続きもないままだからだ。
中国共産党指導者も、この問題は常に意識している。共産党大会では「民主」という言葉が何度も登場した。だが内容はあいまいなままだった。
有事の時に中国が政治的・社会的な安定を維持できるのか。明確には描けないままだ。
(6)世界への影響
過去10数年の成長で、中国経済の世界に占める割合は急速に高まった。経済の安定、環境問題、安保など多くの分野で、世界は中国抜きに課題に取り組むことはできない。その中国が支配の正統性に問題を抱え、将来には不透明感が抜けない。
胡錦濤体制2期目の行方を、世界はこうした観点からも見つめている。
(2007.10.28)
◆共産党大会の映す中国の課題
5年に1度の中国共産党大会が開幕した。胡体制2期目の政策の方向を示す重要な大会。中国の将来を展望する上で、注目すべき点は多い。
まずは経済政策。総書記は、活動報告で環境や格差是正を重視して持続的発展を目指すと強調した。
中国は過去5年間も2桁近い成長を維持、世界の経済パワーとしての存在感を一層高めた。しかし、格差の拡大や環境悪化などの問題も拡大。こうした問題への対応を怠れば、今後の発展もおぼつかない状況になっている。
胡総書記はこうした課題を深く認識。これまでも繰り返し対応を強調してきた。今回、党大会で改めて打ち出したところにも、現状の深刻さと、危機感の強さが反映されている。
第2は政治体制。総書記は「中国の特色ある社会主義の旗印を高く掲げよう」と繰り返し訴えた。これは経済面の改革を推進する一方、政治的には共産党独裁を堅持する考えだ。
これはケ小平時代から繰り返し言われていることだが、中国の抱える抜本的な疑問が内在されている。政治的な1党独裁体制と、経済の改革・自由化が両立しうるのか、という問いだ。この疑問に対する答えは今回も先送りになった。
人事面では曽中央委員などが引退。胡総書記の権力基盤が一段と堅固になり、胡カラーが鮮明になった。若手の登用で、総書記など「第4世代」から第5世代」への移行の形も一部見えてきた。
一方、今回の中国共産党大会では各地方の分科会討論などを初めて内外メディアに公開。世界的に政治の透明性が求められるようになっている時代への配慮をしめした。ただ、公開も1日で打ち切りとなり、1党独裁体制の維持と情報公開も含めた民主化という相矛盾する課題に苦慮する姿ものぞかせた。
(2007.10.20)