◆トルコの行方
トルコ総選挙は、イスラム系与党・公正発展党(AKP)が大勝した。セザル大統領の後任を巡り、与党と世俗派の対立→混乱に陥っていたトルコ政局は、AKPが民意の後押しを得た形だ。
エルドアン首相は選挙期間を通じ、経済発展や貧民救済などにおける成果を強調。EU加盟を目指す路線を訴えた。
注目された政治とイスラム教の関係では、公的場でのスカーフ着用も含めた自由を強調する一方、イスラム色が強い候補150人を穏健派に振り替えるなど世俗派にも配慮した。
こうした訴えが国民の支持を得て、46%という予想外の得票率に結び付いた。
ただ、選挙で大勝したとはいえ、AKPとエルドアン首相の行方は決して楽ではない。英Economist誌は勝利の重荷(The
burden of victory)という見出しで選挙結果を解説した。
議会による大統領選びは当面、ギュル外相中心に進むことになりそうだ。共和人民党(CHP)を中心とした野党・世俗派は議席を減らしたため、ボイコット戦術で大統領選出をブロックできなくなる(大統領選には3分の2の出席が必要)。しかし、エルドアン首相にしてみたら、候補者を通すために極右の民族主義者行動党(MHP)の協力を求めることは、なるべく避けたいところ。MHPは、イラク北部での軍事活動などを主張しており、親欧米路線を目指すエルドアン首相の政策とは相いれない主張が多い。
世俗派を追い詰め過ぎれば、世俗主義の守護神を自認する軍のクーデターの懸念も否定できない。首相が選挙勝利後の演説で、世俗派との融和を訴えたのも、こうした情勢を配慮したものだろう。
トルコは中東と欧州、イスラムとキリスト教社会の懸け橋となる、地政学的に極めて重要な国。そのトルコにおける、イスラム教を政治から排除しようという世俗主義と、イスラム系政党の台頭をも支持する民主主義の対立は、国の在り方について抜本的な問を投げかける。イスラム社会の将来にも影響しかねない大問題だ。だからこそ世界は今春以来のトルコ情勢に、大きな関心を払ってきた。
欧州は選挙後、結果を歓迎しする旨のコメントを発表。民主主義と親欧米路線の継続に期待を表明している。しかし内心は行方を懸念し、推移を注意深く見守っている。
(2007.7.29)