◆大地震と中国
中国・四川で地震が発生。被害が拡大している。地震は単に自然災害にとどまらず、中国が抱える問題点や課題を改めて表面化させた。
地震により学校など多くの建物が倒壊。多数の人が生き埋めになった。17日までに死者は約3万人に達しなお拡大する見込み。負傷者は15万人を超えた。
地震発生の後、中国政府は直ちに救済活動を始動。温家宝首相を現地に派遣し陣頭指揮をとらせるなど全力で取り組む姿勢を示した。最初の数日で10万人を超える軍・武装警官などを派遣した。
報道規制や情報管理はなく、海外からの援助も積極的に受け入れた。海外各国からは相次ぎ支援隊が到着。1949年の中華人民共和国成立以来、最大規模の受け入れが進んでいる。
それでも「最初の72時間」での救助が必ずしも円滑に進んだとは言い難い。社会インフラの未整備などが援助の足を引っ張っている。現地は死者の放つ異臭が覆うようになり、人々の不安も強まった。現地入りした胡錦涛主席や温首相の表情は沈痛だ。
学校の手抜き工事が被害を拡大させたことなど人災の側面も表面化した。北京五輪・聖火リレー計画も、一部縮小が決まった。
▼2008年のシナリオ誤算
北京五輪の開催される2008年は、中国にとって国威発揚の年になるはずだった。五輪の成功と中国選手の活躍で、過去30年の経済発展を誇示。世界の中での存在感の拡大を示す場にするシナリオだった。空前ともいえる大規模な聖火リレーも、そうした狙いの一環だったと位置付けるべきだろう。
しかし、まずチベット問題がそうした思惑に水を差した。人権・民族問題や格差、政治的自由の制限など中国の抱える問題点が表面化。綺麗ごとだけで済まない中国の実態が、世界に改めて認識されることになった。
そこに加わった今回の大地震。10%の経済成長の陰に隠れていた中国の弱点や問題点、課題が否応なしに露呈された格好だ。
中国は過去20年余り、矛盾を抱えながらも高度成長を続け、国際的な存在感を高めてきた。中国政府は成長の歪みなど問題点を十分に認識しつつも、路線の継続・発展を基本戦略に据えてきた。その象徴が北京五輪だった。
しかしチベット問題や地震は、基本的な部分で路線の転換を迫りかねない。少なくとも、「何もなかった」ことにするには大きすぎる問題だ。
ややもすれば自信過剰にもなりかねなかった中国人の意識にも、変化が出てくる可能性もある。中国脅威論に象徴される世界の対中観にも、微妙な影響が出てくるかもしれない。
(2008.5.18)