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◆金融危機3週目


 引き続き、米金融危機を巡り世界が揺れ動いた。

▽法案ようやく成立

 米下院は29日、金融救済法案を否決。世界中で株価が急落するなど市場は揺れ動いた。米政府や議会リーダーは「金融システム崩壊防止のため」と強調したが、11月に選挙を控える議員らは、銀行救済の色彩が残る法案に賛成しにくかった。

 その後修正を経て、法案は3日ようやく成立した。しかし民意の理解を得ることの難しさを改めて印象付けた。この問題は今後も追を引く。

▽先行きなお不透明

 法案が成立したといっても、当面の応急措置のめどが立ったに過ぎない。金融危機の行方はなお不透明だ。

 法案は最大7000億ドルの公的資金を投入し、金融機関から不良債権を買い取る機関を設置するのが柱。これにより、不良債権を切り離し、残った部分で正常な金融活動を維持する「枠組み」はできる。しかし、具体的な買い取り価格や方法など詰まっていない問題は多い。どれだけ有効に機能するかはなお未知数だ。

 地下価格の下落や景気悪化が続く中で、金融機関の体力そのものは弱体化している。今回の措置だけで十分と見る意見は少ない。危機脱出のシナリオは、なお描けていない。

▽世界の金融地図は一変 

 金融機関の破綻・救済は続き、業界の再編が加速している。

 米国では大手銀行のワコビアが身売りを決定した。当初はシティ・グループによる買収が決まったが、その後(3日)ウェルズ・ファーゴに変更するドタバタぶりを示した。ただ、シティは異議申し立てをしており、曲折がありそうだ。

 大手生保のAIGは中核事業以外の売却を柱とする再建案を発表した。

 大波は欧州にも波及し、ベルギー中心の金融機関のフォルティスは、ベネルクス3国政府などによる部分国有化が決定。英B&Bやアイスランド大手銀のグリトニルは国有化される。ベルギーのデクシアへの公的資金投入も決まった。経営が悪化した金融機関は多く、市場では次の破綻・救済の観測が引きも切れない。

 9月15日のリーマン・ブラザーズの破綻から3週間。世界の地図は一変した。1月前が「遠い昔」と感じられるほどになっている。

▽景気後退

 実体経済の悪化は隠しようがない。フランスは2・4半期連続のマイナス成長=景気後退の予想を表明。米国や欧州はじめ、世界各地で発表される経済指標は「悪化」を示すものばかりだ。

 各国政府や主要メディアは心理的影響も考えてか、「景気後退」(recession)という表現を避け、「景気悪化」「減速」(slowdown)と説明する。しかし、米国や欧州諸国はもはや景気後退局面に入っているとの観測は強い。

 米救済法案提案の動きを見て、苦境に立つ米自動車業界は、政府に救済を要求。最終的に低利融資のプログラムが決まった。欧州自動車業界も同様の要求を出した。

「自己責任」の歯止めが崩れ、緊急避難を名目にしたモラルハザードが広がっている。


▽指導者の表情

 米大統領など指導者の表情は日に日に悪化している。ブッシュ大統領は頻繁にテレビ演説し国民に理解を求めるが、表情に精気はない。和え向きなメッセージはほとんどなく、残り任期に歴史的な成果(中東和平など)を残そうという気力も最早感じられない。

 民主党のオバマ候補は、一貫して公的資金不可避の立場を示すなど、当事者能力を示した感がある。実際、金融危機で選挙戦は有利になった。

 それでも後ろ向きの話について語る時、表情は硬い。この問題ではすでに当事者となっており、ブッシュ政権を批判するだけでは通らない。「米国を変える」(change)という希望を与えるメッセージを前面に打ち出せるタイミングは少なく、見直的な笑顔を見せる機会も極めて減った。

 金融危機の深刻さを垣間見させる。


(20081005)