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◆ガザ境界壁崩壊の語るもの

 
ガザ・エジプト間の境界壁崩壊は、予想もしていなかった異常事態。エジプトで調達した羊を引いて家に戻る住民の映像などを見るにつけ、「世界ではこんなことも起こるのか」という印象を新たにする。

 昨年6月にイスラム原理主義集団ハマスが実効支配して以来、ガザは世界から閉鎖された場所。特に今年に入りイスラエルが閉鎖を強化してからは住民は生活物資にも窮するようになっていた。

 そんな状況を狙ったようなタイミングでの壁破壊。住民はあっという間にエジプトになだれ込み、食料やガソリンなどを購入した。ただ、生活物資だけでなく武器などがガザに流れ込んでいるのも想像に難くない。

 エジプトもイスラエルも、対応に苦慮している。

 エジプトはハマスがガザを実効支配して以来検問所を閉鎖。ハマスの影響が自国に及ばないように警戒してきた。しかし今回は、ガザ住民の窮状にアラブ世界の同情が集まっていることもあり、容認を余儀なくされた。もしガザカラハマス過激派がカイロなどに流れ込み、テロを主導するようになれば、それこそ悪夢だ。

 イスラエルは2005年にガザから撤退。ハマスによる実効支配後は封鎖を基本政策としてきた。しかし今回の事態で政策は根本から揺らいでいる。再占領というオプションも取りにくい。ガザからのミサイル攻撃やテロを防止する妙案もなかなかない。「ガザの管理はエジプトに任せたい」という声すらあるが、それも現実性に富む案とはいえない。

 いずれにしろ、住民150万人のガザから2日間で延べ数十万人がエジプトに流出したという事態は尋常ではない。境界崩壊は、覆い隠してきた多くの矛盾を露呈した。