◆金融危機:公的資金投入→次の段階へ
金融危機への対応は、12−18日の週に1つの節目を越えた感がする。米欧主要国が相次いで公的資金による大手銀行への資本注入を発表。国家による直接救済は、わずか1週間で検討から「既成事実」になった。各国は協調を強め、欧米主要国による周辺弱小国救済の枠組みづくりも動き始めた。ただこれで今後の不安が晴れるわけではもちろんない。実体経済の悪化は急速に進んでおり、先行き不透明が続く。
▼資本注入、相次ぎ実現
ブッシュン米大統領は14日、大手銀行9行に計1250億ドルの資本注入を柱とする金融危機対策を発表した。対象はシティグループ、JPモルガン・チェースなど。先に成立した金融救済法で定めた最大7000億ドルのうち、2500億ドルを資本注入に活用する。
米社会では税金を使った金融機関救済への反対が根強いが、金融システム破綻回避のためには避けられないと判断した。
先立つ13日にはメルケル独首相とサルコジ仏大統領がそれぞれ危機対策を発表。資本注有に各100億ユーロ、400億ユーロを充てると説明した。
英国は13日、RBSなど3行に最大370億ポンドを資本注入。部分国有化を決めた。スイスも16日、UBSに60億スイスフランの注入を発表した。
▼国際協調
国際協調は進んだ。前週(10日)のG7財務相・中銀総裁会議に続き、12日にはユーロ圏15カ国が首脳会議を開催。銀行間取引を事実上政府保証する方針を決めた。15日にはEU首脳会議を開催し、周辺国の支援などを打ち出した。
欧州中銀は15日、スイスにスイス・フランを資金提供すると発表。16日にはハンガリー中銀に最大50億ユーロの緊急融資を実施すると発表した。
周辺国の金融機関破綻→金融システムの崩壊という連鎖を断ち切る策だ。
G8は15日緊急声明を発表。危機脱出に向けた政治的意志を示した。
▼メニュー出そろう
9月中旬に金融危機が発生してから、欧米各国はまず流動性確保のために大量の資金を供給した。同時に、破綻に直面した金融機関を個別に救済(米AIG、ベルギーのフォルティスなど)。また、国民の不安解消のため預金の全額保証をするなどの策を打ち出してきた。
しかし、資産悪化で傷んだ金融機関の救済なしには危機脱出は望めない。こうした見方は、関係者の間では以前から常識。その柱が公的資金投入による金融機関救済(資本注入)だ。資本注入の決定で、メニューがひとまず出そろった格好だ。
▼多くの詰め
ただ、メニューはまだ大枠が決まっただけ。資本注入にしても、具体的な実施方法は決まっていないことが多い。国による株式取得の方法、経営者の責任など様々だ。これがうまくできなければ、効果は上がらない。ボタンをかけ間違えるリスクは、なお消えない。
▼経済悪化加速
そうする間に、実体経済の悪化が加速してきた。欧米は発表する経済指標は軒並み不振。先進国はすでに景気減速→後退に入ったとの観測が強い。
ロシアや中東にも金融不安の波が及び、混乱が始まった。新興国の経済の減速は、鮮明になってきた。「世界同時不況」という言葉もメディアをにぎわし始めた。
経済が悪化すれば不動産価格の一段の下落→金融機関の資産の悪化→新たな金融危機へと進みかねない。
▼グルーグマン教授の予測
資本注入決定など一連の動きを見て、折しも今年度のノーベル経済学賞受賞が決まったポール・クルーグマン米プリンストン大教授は、資本注入決定など一連の動きを見て、金融システム崩壊は回避できるだろうとの見方を示した。しかし同時に、不況の長期化を予想する。
緊迫した状態は、なお続く。
(2008.10.18)