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◆イラク撤収休止と米中東政策


 ブッシュ米大統領がイラク駐留米軍の撤収を7月で休止すると発表した。昨年末から部分撤収を始めたが、イラク治安維持が危ういことが様々な局面で表面化。駐留を継続しなければ、治安を維持できないという現場の判断を尊重した。

 米国内ではイラク戦争の負担拡大に対する批判が拡大。撤退を求める声が大きくなっている。ブッシュ政権もこうした世論を意識し、イラクからの撤収策を模索してきた。しかし当面は撤退要求への対応より、イラクの治安維持を優先させざるを得なかった格好だ。出口作戦は次期政権に持ち越された格好だ。

 大統領選の有力候補である民主党のオバマ、クリントン氏はブッシュ政権のイラク政策をことさら批判。撤退の実施を強調してきた。しかし、実際の撤退作戦となると、彼らの主張は抽象的。むしろ時の経過とともに、現状(現実)をある程度を受け入れる色彩が強まっている。

 一方、イラク戦争開始の時のうたい文句だった「中東民主化」は、今やすっかり忘れられたかのようだ。イラクでは2005年に2度にわたる選挙を実施したが、その結果、宗派・民族(シーア派とスンニ派、クルド人勢力)の対立がかえって激化する結果になった。

 パレスチナの選挙では、民意がイスラム原理主義組織であるハマス中心の政権を発足させた。選挙の実施→民主化の実現、という簡単なシナリオが通用するほど、世の中は短銃でない。

 中東の勢力図も、米国が期待したのとは全く異なる方向に動いている。イラクでシーア派が多数になったこともあり、中東ではイラン(最大のシーア派国)が勢力を拡大。サウジなどスンニ派諸国は警戒を強めている。3月末にシリアで開催したアラブ首脳会議は、サウジやエジプトなどスンニ派の主要国が欠席。アラブ分裂が隠し覆えない状況になった。

 ブッシュ政権が昨年以来肝入りで進めようとしているパレスチナ和平は、パレスチナ内の対立などでデッドロックの状態だ。

 4月9日には、フセイン政権崩壊から5年を経過した。この間のイラク情勢、中東情勢を振り返ると、米国の期待は、誤算続きだったと言わざるを得ない。贔屓目に見てもアルカイダなど対テロ封じ込めで限定的な成果を残しただけだろう。

 現在の米ブッシュ政権は、イラクの事後処理で精一杯。その結果、中東政策全般については方向性を失い、沈黙を余儀なくされている。イラク戦争でパンドラの箱を開けたまま、その収拾策が見当たらず、対処療法に追われている状態だ。

 11月の大統領選で決まる米次期政権へのツケは大きい。そして世界は、重く難しい課題への応分の負担を求められる。


(2008.4.13)