◆天安門事件20年の中国と世界
中国が学生らの民主化運動を弾圧した天安門事件から20年が過ぎた。事件後の中国は大きく混乱、将来展望を危ぶむ見方も少なくなかった。しかし20年後の現実を描写すれば、経済成長がすべての矛盾を飲み込んで推移している、という状況だ。
▼孤立→世界の主力プレイヤー
事件後、欧米は中国を厳しく批判。中国は国政的に孤立した。事件からほどない1989年夏‐秋には東欧革命が勃発。2年後にはソ連が崩壊し、社会主義陣営は瓦解した。
中国も政治的な正統性なしに国を支配できるかを問われ、社会主義的市場経済という矛盾は持続できないとの指摘も多かった。
しかし、政治的には強硬姿勢を維持しながら経済成長を優先させる政策が上手く作用。その後年率10%前後の経済成長を達成した。いまや中国は「世界の工場」のみならず「世界の市場」に成長し、GDPは世界3位、貿易は世界最大。世界経済は中国を抜きに語れなくなった。
米国や欧州はその後も節目節目で、人権軽視批判や民主化要求を繰り返す。それでももはや、中国の体制そのものを否定したり、中国の存在を無視することはできなくなった。特に昨年の金融危機後、世界の関心が民主主義より安定に向かい、中国批判や中国警戒の声は一層後退した感がある。
米国のクリントン国務長官は20周年をにらみ、民主化活動家の釈放などを求めた。しかし、同じ時期にガイトナー財務長官が中国を訪問。経済協力促進を打ち出した。米国の対中姿勢は、明らかに民主化・人権要求より協調強化に傾いている。
中国国民の生活は20年で一変した。経済開発は沿岸部から徐々に内陸に浸透。国民1人当たりの所得は、20年で10倍になった。
▼経済成長が矛盾を飲み込み
もちろん国の抜本的な課題は変わらない。民主化は限定的で、1党独裁体制は変わらない。正統性に疑問が持たれる体制が続き、社会主義と市場経済共存の矛盾は消えない。
非民主主義社会では、法による支配の確立も自ずから限定的になる。国内では格差拡大、汚職、環境汚染などが深刻だ。
それでも、今のところ人々の不満は限定的なレベルに押さえ込まれている。経済成長が政治や社会の矛盾を飲みこみ、爆発を防いでいる格好だ。
世界の枠組みが変わる中、20年後はおろか、10年先の予想も立ちにくい。それでも、「天安門事件から20年」の中国は、事件当時の悲観シナリオを回避し、最も楽観なシナリオに近い状況で推移してきた。比較的恵まれた立ち位置から、次の20年を臨める立場にいる。
(2009.6.6)