◆経済の悪化が深刻化
世界経済の悪化が一段と深刻化している。金融不安拡大と実体経済悪化の悪循環が続き、政府・当局の相次ぐ救済策も奏功していない。今週はマクロ数字の一段の悪化、金融不安の再燃、民間企業の業績悪化と人員削減拡大が集中した。動きをまとめると以下の通りだ。
▼人員削減の嵐
オバマ米大統領就任直後の22日、経済的にショックなニュースが相次いだ。
マイクロソフトが、業績悪化を理由に今後1年半で最大5000人の人員削減計画を発表した。創業以来初の大型リストラ。1980年代以降世界のコンピューター業界をリードし、時価総額で業界トップの同社だけに、世界にインパクトを与えた。
ソニーも希望退職募集を発表。リストラの一段の拡大も表明した。2008年度の決算は14年ぶりに赤字になる。
その他半導体大手のインテル、携帯電話のエリクソンなども計画を発表。ドバイの政府系投資会社のイスティスマルも人減らしに踏み切る。
先年秋から金融機関中心に人員整理が進んだが、ここにきて自動車、電機など業種を問わず広がっている。世界を代表する優良企業もその列に加わった。1-2ヶ月後には失業率などの統計に影響が出てくるのは必至だ。
▼民間企業の収益悪化
こうしたリストラを不可避にしているのが、企業の業績悪化だ。
エレクトロニクス業界の「勝ち組」の代表だった韓国・サムスンは10-12月決算で、上場以来初の赤字を計上した。
Web2.0時代をリードするグーグルは、10-12月に上場以来初の減益になった。世界を代表するハイテク企業も軒並み業績悪化だ。
自動車はトヨタ自動車の赤字転落に象徴されるように、収益悪化が深刻。米ビッグ3は存亡の瀬戸際だ。
サウジのキングダム・ホールディングなど産油国の投資会社も経営悪化している。
DRAM5位の独キマンダは23日、破産手続きを申請した。経営破たんも相次ぎそうだ。
▼金融不安再燃
欧米など政府・当局の支援にも関わらず、金融機関の業績改善は遅れ、金融不安が再燃する。
米3大銀のシティ・グループ、バンク・オブ・アメリカ、JPモルガン・チェースは10-12月期に計445億ドルの損失処理を実施。シティが82億ドルなど多額の純損失を計上した。シティは再建のためグループ2分割に追い込まれ、バンカメは米政府から資本再注入、将来の損失肩代わりを柱とする再支援策を受けた。
最近の特徴は、損失がサブプライムなど証券化商品だけでなく、個人ローンなどに広がっている点だ。実体経済悪化との悪循環を反映する。
英国のRBSは19日、2008年に280億ポンドの損失見通しを発表。英政府は優先株を普通株に転換し持ち株比率を引き上げることを決めた。早晩、部分国有化から完全国有化が避けられないとの見方も強まっている。
欧州ではドイツ銀行が2008年に通年で初の赤字になる見通しを発表。スイスのUBSの経営悪化も深刻だ。
▼マクロ経済指数の悪化
経済指数の悪化も、ここに来て深刻さが際立つ。18-24日には次のような発表があった。
米国の2008年住宅着工件数は33%減で1950年代以降の最低を更新。12月の数字は前年比半減、ピーク時の8割減になった。
英国の2008年10-12月のGDPは前期比マイナス1.5%。2・4半期連続のマイナスで公式に景気後退入り。
日銀は2008度の経済成長をマイナス1.8、2009年度をマイナス2%とする2年連続マイナス成長の経済見通しを発表。
中国の10-12月の成長率は前年比6.8%で7年ぶりの低い水準となり、社会安定に必要といわれる8%を割り込んだ。2008年の成長率は9%で6年ぶりの1ケタ。
欧州委員会は、2009年のユーロ圏の成長率がマイナス1.9%になると予想した。UNCTADの見通しでは、2009年の世界経済は最悪シナリオで推移した場合マイナス0.4%となる。
▼政府・当局の対応
各国政府・当局は金融システム安定と景気刺激の2面から、対応策を繰り出している。
英国は19日、社債やCP買い取りの基金創設などを柱とする追加金融安定化策を発表した。
日銀は22日、資金供給拡大のためCPや社債の買取り導入を決定した。
ドイツは13日に500億ユーロの景気対策を打ち出している。シンガポールなども追加策を発表した。
当面の最大の焦点は、米オバマ政権の対応。景気刺激策については、向こう2年で300万人の雇用創出を目標に8250億ドルの対応策を打ち出す方針を表明。2月中旬までに関連法の成立を目指す。
金融安定化策については、新たな対応の取りまとめを開始。4月初めのG20首脳会議までには全体像を打ち出す姿勢だ。
2009.1.24