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◆GM破産法申請の意味するもの


米GMが連邦破産法11条の適用を申請した。20世紀を代表する企業の破産申請は、経済的のみならず社会・文化的にも影響甚大。資本主義の在り方が変わる中で、確実に一つの時代の終わりを象徴する。ただ、企業・組織の視点からみると、世の評価は「変われない組織は滅びる」という1点に集中している。


▼再建計画

 GMの再建計画を一言で言えば、不採算部門を切り捨て、縮小均衡による再建を目指すもの。10あったブランドはシボレーなど4つに集約。米国内の工場は08年末の47から33程度に縮小し、ディーラーも大幅に削減する。

 米国内の工場労働者は現在の6万人から約2万人削減。生産量は約3割削減して600万台に減らす計画だ。2007年まで世界最大だった同社は、3−5位グループで再建を目指す。


▼法的保護と政府支援

 GMの債権者や労働組合などとの権利関係は極めて複雑で、事前の交渉では調整がつかなかった。このため連邦破産法の保護の下で再建を目指すことになった。

 GMは8月末までに新会社への資産譲渡など破産法手続きを完了。6−18カ月以内に再上場を目指す。

 米政府は再建を全面的に支援する方針を表明。300億ドルの追加融資を提供し、
株式の約6割(カナダ政府と合わせて約7割)を保有し実質国有化する。オバマ大統領は「古いGMが終わり新しいGMが始まる」と強調した。


▼関係者の反応

 市場の反応は比較的冷静だった。すでに過去数週間の大詰め交渉で、破産法申請不可避の情勢になっており、GM株は前週75セントまで落ち込んでいた。市場はGM破産をすでに織り込んでおり、発表後NY株は上昇した。

 市民や従業員、関係者の反応も予想された範囲内だった。デトロイトの市民やGM従業員は口ぐちに残念と語ったが、抗議行動などはなし。

 部品メーカーなど関係産業も、政府による救済策などが準備されたこともあってパニックに陥るようなことはなかった。


▼GMの100年:成功体験〜時代に乗り遅れ

 1908年創業のGMは、20世紀の米国を代表する企業だった。中興の祖と言われたアルフレッド・スローン氏の下で近代経営を確立。1931年にフォードを抜いて世界1の自動車メーカーになり、以後70年代までは世界最大かつ最も優れたメーカーであり続けた。同社CEOからアイゼンハワー政権の国防長官に就任したウイルソン氏の「GMにいいことは米国にいいこと。逆も真なり」という発言も、GMが米国のシンボルであったことを反映している。

 しかし1970年代以降は時代の波に乗り遅れた。時代が求める低燃費の小型車の開発では日本エーカーなどの後塵を拝した。1980年代にはデータ事業など多角化に走ったが、失敗した。

 1970−80年代の危機の際には、米政府がなりふり構わぬ態度でGMなど自動車業界救済に動いた。すそ野の広い自動車業界を潰すことは、当時選択肢として政治的に考えられなかった。

 その後GMは90年代‐2000年代、低燃費車の開発よりも利益率の高い大型車の事業拡大に傾斜。70−80年代の救済で与えられた時間的猶予を生かすことはできなかった。2006−07年の原油価格高騰や金融危機による消費落ち込みで大型車販売が激減すると、経営が行き詰った。


▼レガシーコスト 

 もう一つGMの重荷になったのが、従業員やOBへの医療保険などいわゆる「レガシーコスト」だ。公的医療保険が全国民をカバーしない米国において、GMの「企業による保険」は従業員の福祉と利益を高める20世紀の成功モデルになった。

 しかし何十年もたって、負担は一方的に膨らんだ。近年は米国内のGM社員9万に対し、OBや家族は数10万人。自動車1台あたり、1000ドルのレガシーコストがかかるようになり、競争力は大いに低下した。情勢が変化しても制度変更ができず、耐えきれない負担になったわけだ。


▼変われないツケ

 破産法申請に対するメディアや関係者の評価は比較的一致している。変化に対応することができない組織は滅びるということ。そして、GMが過去の成功体験にとらわれ、自己改革ができなかったという分析だ。

 複雑かつ多岐な利害関係者を抱える企業が、過去を捨て、多大なコストを甘受して変身することは容易ではない。しかし、GEやIBMはそれができた。フォードは破産法適用に追い込まれていない。GMの経営に問題があったことは明らかだ。

 1980年代には政治的に自動車業界を潰すことはできなかった。しかし、経済は製造業中心からITやサービス業中心に変化した。「大きすぎて潰せない」(too big to fail)も最早通用しない。破産法申請は、この観点からも時代の終わりを象徴する。


▼再建の行方

 再建の行方は必ずしも楽観的ではない。
 第1に再建は、スピードとの戦い。まず60-90日で破産法手続きを済ませる必要がある。新会社に移す資産・事業と清算会社に残す資産・事業の分類だけでも大変。債権者や組合など権利関係者との調整も、破産法保護下といえ容易ではない。

 目先の自動車販売がどうなるか、将来に向けて売れる車を作れるかなども懸念材料だ。オバマ政権により実質解任されたワゴナー会長は在任時、「破産法適用になれば、消費者のGM離れが起きる」と言っていた。その懸念が当たれば影響は深刻だ。

 米産業の年表的には大きな節目を超えたが、実社会・実経済への影響という面では、正念場はこれからだ。


(2009.6.6)