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◆ドイツ総選挙が示唆するもの
ドイツの総選挙でメルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が第一党の座を維持。中道の自由民主党と合わせて過半数を獲得し、4年間続いた社民党との大連立政権→中道右派の連立政権になる。
同時に印象的だったのが社民党の退潮。前回選挙より得票率を10%も下げ、戦後最低水準に落ち込んだ。
総選挙結果から、欧州や世界の政治潮流について、様々な視点や問いかけが見えてくる。
▼欧州左派の退潮
社民党の退潮は、ドイツ独自の現象ではない。欧州では6月の欧州議会選で社民党勢力が大敗。英労働党も来年6月までに行われる選挙で敗北の可能性が高い。
4月のアイスランド総選挙での左派勢力の政権奪還やノルウェー総選挙の社民党勝利・政権維持などの動きはあるが、全体的に見ると社民勢力退潮の印象が強い。
欧州には1990年代後半、欧州左翼の時代と呼ばれる時代があった。独社民党中心のシュレーダー政権、英労働党ブレア政権の誕生、仏ジョスパン内閣(政権としてはシラク大統領の下に保革共存)、伊オリーブの木政権などが相次いで発足した時期を指す。
ただし、シュレーダー政権、ブレア政権の政策は伝統的な社会民主主義とは一線を画した現実主義。むしろ中道政策と呼ぶのがふさわしかった。
独社民党は90年代後半以来、与党で現実主義的な経済改革路線を推進した。その結果、伝統的な左派支持者の社民党離れを招き、今回の大敗につながった面が大きい(左派新党に流れた)。経済改革か、福祉維持かの狭間で、支持者の一部を失った構図だ。社民党のジレンマは深い。
▼脱イデオロギー・政策担当能力・リーダーシップ
ただ、左派の退潮は欧州の現象。世界全体では異なる。
米国では今年、保守の共和党からリベラルの民主党のオバマ政権に交代。日本では保守の自民党政権から民主党の鳩山政権が発足した(欧米では中道左派という紹介される)。
世界各国の事情は個々で異なるが、多くに共通するのは長期政権への批判が政権交代の原因になっていること。政権党に対するチェックや批判が、政権交代の原因になっているというわけだ。
どの程度の期間で交代に至るかは、様々な要因が左右する。政権の当事者能力、大統領や首相のリーダーシップ、野党の力量、その国の政治や民主主義の成熟度などだ。
その意味ではイデオロギーの違いより、政策担当能力が問われる時代と考えるべきだろう(ただし、イデオロギーの定義は様々で、注意深く使う必要がある)。
数年後に欧州が保守のジレンマの時代になってもおかしくない。米国や日本でも揺れ戻しや政権交代があると見るべきだろう。
▼アングロサクソン・バイアス
米国や英国のメディアを見ると、メルケル政権の政権維持の解説として、金融危機への適切な対応など当事者能力への評価が多い。そしてCDUの政策が社民党より現実的で、経済改革に前向きと見るものが多い。
ただし、そうしたアングロサクソン的な視点だけでは現実を見誤る。ドイツは米英のような市場経済国家ではなく社会的市場経済国家。これは基本法(憲法)にも定めてある。メルケル首相ももちろんこの立場に立つ。
世界を眺める上で、アングロ作戦バイアスへの注意は常に心しなければならない。
2009.10.3