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◆ノーベル平和賞の読み方(オバマ大統領受賞と候補者たち) 

 2009年のノーベル平和賞がオバマ米大統領に授与されることになった。予想外の授賞の背景にはノーベル賞委員会のメッセージが明確に込められている。そして反応は様々だ。

▼期待を重視

 ノルウェーのノーベル賞委員会によると、賞は「国際外交と人々の協力強化への特別優れた努力に対して」(for his extraordinary efforts to strengthen international diplomacy and cooperation between peoples)与えられる。

 具体的には、核軍縮に向けた努力や国際協調重視の外交政策を評価している。

 4月のプラハでの「核なき世界」演説は、核軍縮に新たな推進力を生んだ。6月のカイロで演説は、イスラム社会との新たな対話の出発点になった。中東へのミサイル防衛システムの配置中止は、新たな米ロ協調を生み出そうとしている。

 委員会は大統領が世界に対し未来への希望を与える力を持っていると指摘。国際政策は委員会が108年追及してきたものと一致すると絶賛した。

 ただ、オバマ大統領は就任からまだ9カ月。核軍縮にしても対話促進にしろ、まだ成果は出ていない。実績より期待を重視した決定だ。

▼政治的メッセージ

 近年のノーベル平和賞を見ると、政治的メッセージを込める傾向がよく出ている。

 1994年はパレスチナのアラファト議長とイスラエルのラビン首相らに授賞、パレスチナ和平を後押しした(和平はその後とん挫した)。

 1998年は北アイルランドのトリンブル首相らに授賞し、北アイルランド和平促進を応援した。2000年は韓国の金大中大統領に授与し、南北朝鮮和平促進を支援した。

 2007年のゴア米前副大統領らへの授賞は、地球温暖化防止へのメッセージだった。

 オバマ大統領への授賞はこうした傾向に沿ったものだ。ただ、就任1年に満たない世界最高の権力者への授賞はやはり異例。先物買いといわれるリスクを負っても、政治的に強いメッセージを発したかったと解すべきだ。

▼反応は様々

 各国首脳は当然のことながら、祝福と歓迎の声明を出した。サルコジ仏大統領は「オバマ氏の世界観が評価された」を気の聞いたコメント。米国と距離を置くイランからも、批判ではなく将来への期待を込めたコメントが出ている。

 ただメディアなどは抑えたコメントも加える。英Economist誌は「Even greater expectation」という見出しで、授賞により大統領への期待がさらに拡大したと指摘。賞賛の一方で「まだ早すぎるのか」と問題意識を投げかけてバランスを取った。英Financial Timesは「成果より約束に与えられた」と分析した。

 オバマ大統領と意見の相違が目立つ米wall Street Journal紙は「授賞はしばしば政治に左右される」(An Award Often Tinged by Politics)と、多少もの言いたげな論評を加えた。

▼予想候補に見る世界

 ところで、今回受賞に至らなかった候補者からも世界の現状が伝わってくる。

 英国のブックメーカーPaddypowerが発表前に予想していた候補者は以下の通り。

- Seema Samar アフガニスタンの人権活動家(国連などで)(賭け率は4.5倍)
- Pierdad Cordoba コロンビアの政治家。人種、性別などの差別廃止活動(5倍)
- Hu Jia(胡佳) 中国の人権活動家(6倍)
- Ghazi bin Muhammad ヨルダンの王子、社会活動。(7倍)
- Morgan Tsvangirai ジンバブエの政治家。ムガベ独裁政権に対抗(8倍)
- Thich Quang Do ベトナムの僧侶(10倍)
- Wei Jingsheng(魏京生) 中国の人権活動家(12倍)
- Ingrid Bertancourt コロンビアの政治家(12倍)
- Lidia Yusupova ロシアの人観活動家(14倍)
- Bill Clinton 米元大統領(14倍)
- The Cluster Munitions Coalition クラスター爆弾禁止の運動(14倍)

 いずれも立派な人物やグループだが、これまであまり知られていない人も少なくない。ノーベル賞を機にこうした人々を知ると、世界の動向や課題が別の角度からも見えてくる。

 ちなみにオバマ大統領は賭け率14倍(9位グループ)。他にグリーンピース(33倍)、ボノ(66倍)などがリストに挙げられていた。また、ブッシュ前大統領(500倍)というブラックジョーク(?)も盛り込まれていて面白かった。


2009.10.10