◆ロシアのガス供給停止から見えてくるもの
ロシアから欧州17カ国向けの天然ガス供給停止が7日停止。欧州に影響が拡大した。
▼多大な影響
折しも欧州は記録的な厳冬。ドイツやポーランドではマイナス30度を記録し、死者も数百人単位で出ている。そんな時だけに、インパクトも大きい。
ブルガリアでは暖房が停止。人々は震え上がった。スロバキアは非常事態を宣言。ハンガリーのスズキをはじめ、中東欧各地で工場が操業停止に追い込まれた。
こうした中でEUが仲介に動き、ロシア、ウクライナに監視団派遣などで9日合意。当面の供給再開のめどを付けた。ただ、問題の根っこあるロシアとウクライナの対立解消のメドがついたわけではない。行方は予断を許さない。
▼複雑な背景
事態は、それほど単純ではない。対立の1つであるガスの価格は、ロシアがウクライナ向けに欧州向けより格段に安い価格で供給してきた経緯がある。もともと旧ソ連圏の勢力維持という政治的な狙いが背景にあったが、ウクライナの新米欧政権発足・NATO加盟志向で抜本的なところで構造が揺らいだ。
もう注目すべきは、ガス供給システムや運営の不透明さだ。ウクライナ向け供給の主要部分はロシアのガスプロムの関連企業が担っているが、この会社にはウクライナの政治家の関与や政治利権の介在も指摘され、実態は不透明だ。ロシアはウクライナによるガス抜きとりを主張、ウクライナは否定しているが、運営が不透明だから実態も把握しにくい。
ロシア・欧州関係という大きな図式で見ると、欧州のロシアへのエネルギー依存体制が、改めて浮き彫りになる。
欧州は冷戦終了後の1990年代からロシアとのエネルギー面での安定した関係構築を目指してきた。エネルギー開発での協力を進め、パイプラインの敷設も拡充。ロシアにとって、欧州の技術と市場は不可欠になっている。一方で2000年代以降、ロシアが資源ナショナリズムを強化。相互依存を深めながら、関係には不安定さが残る。
▼対立と相互依存
さらにここ数年、米ミサイル防衛構想やNATO拡大でロシアと欧米の関係が緊張。昨年8月にはロシアによるグルジア侵攻で、冷戦終了後最悪といわれるまでに関係が冷え込んだ。
もちろん欧州にとってもロシアにとっても、関係を決定的に悪化させるのは利益にならない。今回のガス供給停止に際し、EUの監視団派遣提案をロシアが受け入れ。問題発生からわずかでとりあえずの収拾策をまとめたのも、双方が関係維持の重要性を認識しているためだ。
欧州・ロシア関係にとって、エネルギーは最も重要な問題の1つであり続ける。だからこそ今回のような問題発生が一大事になる。その場合、政治・経済全般を見渡す広い視点からの観察が不可欠だ。また、公式見解ではなかなか語られない複雑な事情が背後にあることを特に忘れてはならない。
(2009.1.10)