◆米のイラク撤退計画
オバマ大統領がイラク撤退計画を発表した。2009年8月までに全戦闘部隊(約10万人)を撤収。イラク治安部隊の教育などの目的で残る3.5-5万人はその後、2011年末までに完全撤退させるというスケジュールだ。
イラク撤退は当面の米外交政策で最も重要な案件で、オバマ氏の選挙公約でもあった。米国にイラク政策はブッシュ時代の戦争推進→泥沼化を経て、新段階に入る。
「政策の大転換」以外に計画の特徴を挙げれば、まずオバマ大統領が現実的な判断をした点。大統領選では16か月以内の戦闘部隊の撤退を主張していたが、国防総省などの意見を入れて3カ月延ばした。大統領選からの支持者には早期撤退を求める声も大きいが、現地での混乱をなるべく避けて撤退を目指すシナリオを採用。現実主義者としての側面をのぞかせた。
第2にイラクの復興と安定に周辺国の協力を求めて取り組む姿勢を明確にしたこと。イランやシリアも含む周辺国を関与させる方針を表明した。この点でも、イランへの敵意をむき出しにしていたたブッシュ政権からの大転換だ。
第3にイラク撤退決定を機に、安全保障の重点をアフガニスタンに移すこと。大統領はすでに今夏までに1万7000人の増派(現在は3万3000人)を決定。アフガン重視を鮮明にしている。軍事力強化と、アフガン・パキスタン問題のホロブルック特別代表を中心にした外交戦略を両軸に、治安回復やテロ対策に注力する。
撤退計画の前提となるイラクの治安は、昨年から改善。米兵や市民の被害は減少している。マリキ政権の基盤も安定してきたように見える。
ただ先行きにはもちろん、不透明さが残る。英Economist誌はイラク国内の宗派対立から、少数派のスンニ派が多数派シーア派のマリキ政権にどこまでおとなしく協力するか不透明とし、「大きな政治的な問題が残る」と指摘した。
オバマ大統領ももちろんこうしたリスクを踏まえたうえで決定した。成功の行方には、政治家の資質として欠かせない運の要素も加わるかも知れない。
2009.2.28