キャプテン翼について
キャプテン翼と言えば、知らない人はいないと言っても良いでしょう。
現在アニメも放映中だし、なにより、今活躍中のJリーガーにも影響を与えた漫画としても有名です。
そういう意味では、低迷していた日本サッカーに一筋の希望の光を示した作品として、その功績はとても大きいものと言えます。
しかし、サッカーマンガとしての質は高かったと言えるでしょうか?
連載当時はまだサッカーは日本ではマイナースポーツ(だったと思う)でした。
サッカーを題材としたマンガ自体少なかったと思います。
それゆえ、こんなことあるかい!と言いたくなるような展開も多かったし、いささかリアリティに欠けるところもあったように思えます。
そして、当然つっこみどころも(笑)。
ゆえに!例によって以下、辛口批評並びにつっこみを述べます。
| 個性的なキャラ |
ご存じの通り、この作品には様々なライバルキャラが登場します。
天才キーパー若林に、猛虎−日向小次郎、永遠のパートナー−岬に、ガラスの貴公子−三杉…etc。
それらの全てのキャラが非常に個性的ではあるのですが、残念ながらその個性もJr.ユース編以来、日本チームとしてまとまってからというもの、色あせてきたように思えます。
みんながみんな翼の引き立て役になってしまったと言うか…。
もちろん、それぞれの各キャラに見せ場もあるし、活躍することも多いのですが、それでも最後はやっぱり、翼が一番すごい!ということで締めくくっているような気がします。
Jr.ユース編でも、世界一になったんだから、もっとプロからの誘いとかあっても良さそうなものなのに、プロへの道に進んだのは翼と若林だけ。
他のキャラに至っては、高校受験というリアルな問題に直面しているという微笑ましい現実が描かれていただけでした。
もっとも、全日本のメンバーにとどまらず、世界の強豪達も出てきたとあっては、確かに個性が薄れていくのも仕方のないことかもしれませんが。
そして、個人的に一番残念だったのは、日向が丸くなったということです。
当初は直線的ドリブルで、チャージだろうが、タックルだろうが、向かってくる者は吹っ飛ばし、なぎ倒していたというのに、いつの間にやらそういう荒々しさがすっかりなくなっていました。
今では単なる強烈なシュートを打てるFWという印象しか受けないのがちょっと残念です。
| 戦う理由 |
翼には夢があります。
それは、世界一のプレーヤーになって日本をワールドカップで優勝させるという途方もなく大きい夢です。
しかしながら、その根底にあるのは実はサッカーが好き、という極めてシンプルで分かりやすいものなのです。
翼以外のキャラ達もそれは同様です。
ただ、私個人として納得のいかない理由がいくつかあります。
まず、フランスのピエールにサウジアラビアのマーク・オワイランについて。
彼らは高貴な生まれで、いつも周りからねたまれたり、おべっか使われたりで嫌な思いをしていたのですが、サッカーをやることで、サッカーが誰に対しても平等であることに魅力を感じたのだそうです。
そしてピエールは「サッカーは貧乏人も大富豪も関係ない。同じルール、同じ条件のもとで、ひとつのボールを追いかける……」
だとかなんとか言っていますが、そんなのは当たり前です!
そもそも家柄等が関係するスポーツなんて存在しません(笑)。
つまりは、別にサッカーでなくても良かったわけです。
それこそ、野球でもテニスでも柔道でもなんでも構わなかったのです。
これではボンボンの道楽と見られても仕方ありません。
彼らがこんなことを公言したとしたら、それはそれでかなりの反感を買うことでしょう(笑)。
どうか、そういう思いは胸の中だけにしまっておいてもらいたいものです。
一方、彼らと対極の立場にある者も存在します。
それはメキシコのミラクル・キーパー−リカルド・エスパダスです。
彼は家が貧しく、サッカーボールを買う金もなかったので、万引き等日常生活では当たり前であり、ことサッカーの練習においては生活同様かなりの苦労があったらしいです。
そして、苦労知らずの日本人(彼にはそう見えたらしい)の金持ちからサッカーボールを寄付してもらったことで、反日感情を抱くことになります。
それゆえ、翼にも「なんの不自由もなくサッカーやりやがって」と絡んでくるのですが……。
そんなことはピエールやマークに言えよ(笑)!
日本が経済大国だったのは遙か昔の話なんだから。
あんた程じゃないにしろ、日本も色々大変なんだよ。それに、なにゆえ翼だけ?
確かに対戦相手との因縁や確執はストーリーを盛り上げるために必要かもしれないんでしょうけど、これはちと強引なのでは?と思ったりしました。
| サッカー至上主義 |
しかし、一番許せないのはタイのブンナークにコンサワット兄弟達です。
彼らはサッカーをやるのは、単に世界一を目指せることがやりたかったという理由からです。
ブンナークは元々ムエタイの選手であり、コンサワット兄弟はセパタクローの選手だったのですが、それで一番になっても、それはタイ国内での一番であって、世界に普及していない以上決して世界一にはなれないからサッカーを始めたと言うのです。
この考えには穏やかさを信条とする私もさすがにむかつきました。
それではムエタイやセパタクローをやってる人達に対してあまりに失礼ではないでしょうか?
私に言わせれば、女にモテたいからサッカーを始めたっていうのと同レベルです。
作者の感性を疑います。いくら、サッカーが好きで、サッカーの素晴らしさを描こうとしても、こういう差別的な事を言ってしまっては台無しではないでしょうか?
おそらく悪意はないのでしょうが、高校の頃マイナースポーツをやってた私としては、とても腹が立ちました。
| ブラジル至上主義 |
そして、翼にも「そんなこと言って良いのか?」とつっこみたくなることがありました。
それはJr.ユースでの優勝スピーチです。彼はそこでこう言ってます。
「世界一になったとは思っていません。なぜなら、この大会にはサッカー王国のブラジルが参加してないからです」と。
おいおい、それでは他の参加国に失礼だろう。
なぜ、選手達もサポーターも怒らなかったのか理解に苦しみます。
その後のセリフが感動的だったからでしょうか?
「夢に向かって走り続けることは自由です。そしてオレ達はこれからも夢に向かって走り続けます」というセリフが。確かにいいセリフです。
現実に、こんな翼に影響を受けた現在のJリーガーがワールドカップ出場という長年の夢を果たしてくれたわけだし。
けど、ブラジルってそれほどのもんなの?と思ったのが当時の私の正直な感想でした。
しかし、Jr.ユース編で一旦連載が終了してから数年後、再び連載が再開したワールドユース編でそんなブラジルの強さがこれでもか、と言うくらい強烈に描かれたのでした。
| 影が薄くなったライバル達 |
ワールドユース編。心待ちにしていたファンも多かったのではないでしょうか?
かくいう私もそうでした。Jr.ユース以来、各キャラがどれだけ成長したのか?
世界のライバル達がどんな熱い戦いを繰り広げるのか?
私は期待に胸躍らせていました。
しかし、全体的に見れば、やや不満だったのが残念でなりません。
あまりに日本主体で話が進んでいるのがまず一点。
まあ、当然かもしれませんが、他の試合模様がまったくと言って良いほど描かれていなかったのが私的には許せません。
占い師のばあさんが「どこが優勝するか分からない」と言ってた割には、それほど均衡した試合でもなかったみたいだし、ブラジルに至っては決勝まで苦もなく勝ち上がってきています。
これでは興ざめです。
そもそも、ブラジルの強さを裏付けるものがほとんど何もなかったのが腑に落ちません。
特にGKのサリナスはどうしてあんないとも簡単に雷獣シュートを止められるのか?
どんな練習をすれば、あんな風になれるのか?等微塵も描かれていませんでした。
ドイツのGK-デューター・ミューラーは一日千球もの小石を止める練習をしたり、崖から無数の岩に混じったサッカーボールをキャッチしたり(下手したら死んでる)、とその凄さを裏付ける具体的な描写があったというのに……。
しかも、このミューラーがどういうわけか、雑魚キーパーに成り下がっていたのは遺憾の極みです。
スウェーデンのレヴィンに5点も取られているってのはどういうことでしょう?
どこでどう間違えばこんなにレベルダウンするのでしょう?
これも激しく腑に落ちません。
そもそも、彼は師匠にどんな状況からどんなシュートを打たれようが必ず止められるというお墨付きをもらったはずです。
実際彼の名キーパーぶりはとてもインパクトがあり、これ以上のキーパーは思いつかねえって言うほど凄かったのに、これではあんまりです。
そして、あんまりなのは彼だけではなく、他のキャラ達についてもそうです。
シュナイダーについてはネオファイアーショットが結局どんなものか分からずじまいだったし、そもそも、東西の壁がなくなったことでドイツがどれだけ強くなったのか?
ということも描かれていなかったし、オランダ戦は描かれていないばかりか、ブライアン・クライフォートの実力も分からずじまい。
他の連中にしてみれば、もっとひどい扱いです。
以前は明和対ふらのとか、東邦対武蔵野など、サブキャラ達の試合も描いていたというのに…。
私にとってはいささか消化不良気味でした。
| そして現在 |
ワールドユース編で今度こそキャプテン翼も終了したかと思いきや、またもや連載が復活したのです。今度はプロ編です。
しかも、これがまたおもしろい!
今のところ、スペインの翼、イタリアの日向、そしてドイツの若林、この三者がメインで描かれていますが、それぞれにドラマがあってなかなか楽しめます。
おまけに、意外なキャラが意外なチームにいたりして、「おっ、こいつこんなとこにいるのか」等と色々な発見もあって、飽きさせない内容です。
特に、シュナイダーとレヴィンと肖俊光が同じチームにいるのが凄い!
けど、ワールドユースでドイツを敗ったレヴィンがシュナイダーより格下みたいに描かれているのが例によって腑に落ちないのですが……。
まあ、そんなことはおいといて、とにかく、この調子で今後も色んなキャラをふんだんに登場させつつ、今度こそ私の期待を裏切らない展開にして欲しいと切実に思います。
※ 散々厳しいことやつっこみを述べてきましたが、なんがかんだ言っても、私はこの作品が好きです。そして、現在のJリーガー達に夢を与えたキャプテン翼がこれからの世代のサッカー少年達にも同じように夢を与えてくれることを心から願っています。