高橋の特許室・iv号機
第1章 特許-IV
第100回
ビジネス・モデル特許の審査基準,日米欧の特許庁ですり合わせ
■ ハードを絡めろ
日本特許庁,米国特許商標庁,欧州特許庁の3者は,2000年6月14日〜16日に東京で「第18回三極特許庁専門家会合」を開催した。この会議は,世界の重要特許の約9割を審査している三極の特許庁に共通する課題を協力して解決することを目的とし,1983年から毎年春,秋に開催している。春には専門家会合,秋には長官会合を実施し,今年で18回目となる。 今回の会議には30数名が参加し,主にビジネス・モデル特許に関する話し合いが行なわれた。ビジネス・モデル特許は概念が新しいため,各国とも審査基準が明確になっていないのが現状。審査基準が国ごとに異なれば混乱を招く。このため,三極間で審査基準のすり合わせを行なうことが今回の会議の主目的である。ただし,欧州は現在進めている「欧州特許条約」改正に注力しているため,主に日米を中心にすり合わせ作業が行なわれた。 作業は日本の特許庁が作成したビジネス・モデル特許に関する仮想事例をどのように審査するかを比較し,その差異を調べた。事例は二つあり,たとえばインターネットで商品を購入した場合に発生する特典である「ポイント」を他者に譲る方法に特許を認めるかどうかといったものである。この結果,日米の審査結果では全体として大きな差はみられず,両者のビジネス・モデル特許に対する審査基準に大差はないことが確認できた。 さらに,コンピュータによって実現されるビジネス方法に特許性が認められるためには「技術的側面」が必要,人間が行なっている公知のビジネス方法を単に自動化しただけでは特許性がない,という2点でも考えが一致した。ただし,一点目の「技術的側面」についてはどの程度の水準が必要なのかということに関しては一致しなかった。たとえば,日本では「技術的思想の創作」,米国では「technological arts」と「practical application」がみられれば特許性が認められる。 また,ビジネス方法そのものは従来から実施されているにもかかわらず,十分に文書化されていない。すなわち,審査時に新規性を判断するための資料が不足している。このため,今後は先行文献の調査を3極が協力して実施する「共同サーチ・プロジェクト」を開始することで合意した。日本の特許庁によると「今年中にはこのプロジェクトを開始する計画だが,詳細な日程,期間などはまだ決まっていない」という。(田野倉 保雄)
NIKKEI BUSINESSから引用
第99回
Rambus特許訴訟の続報:東芝,SDRAMやDDRモード付きDRAMについてRambus社にロイヤルティを支払うことで合意
■ 東芝が落城では他社はどうする
東芝は,シンクロナスDRAM(SDRAM)あるいはDDRモード付きDRAM,DDRモード付きFCRAMを製造・販売するに当たり,Rambus社の特許に対してロイヤルティを支払うことで合意した。これまでRambus社は,「同社が保有する特許はSDRAMやDDRモード付きDRAMも抵触する」と主張してきたが,東芝はこれを受け入れたかっこうだ。ロイヤルティの金額は明らかではないが,シンクロナスDRAMに対するロイヤルティはRambus仕様DRAM(RDRAM)よりも低く,DDRモードDRAMについてはRDRAMより高いという。その理由として,「シンクロナスDRAMはRDRAMと競合する技術ではない。DDRモードDRAMとは市場で競合する可能性が高いので,ロイヤルティを高く設定した」(ラムバス 代表取締役社長 直野典彦氏)という。Rambus社としては,RDRAMが普及しなくても,DDRモードDRAMからロイヤルティをえられるメドが立てば財政面では問題がないわけだが,これに対して同社は,「弊社のミッションは,DDRモードDRAMからのライセンス収入ではなく,RDRAM技術を世の中に浸透させること」だとし,あくまでRambus技術の開発と普及を優先する姿勢をみせている。 Rambus社は,約1カ月以上前から,国内DRAMメーカに対して,シンクロナスDRAMおよびRDRAMがRambus社の特許侵害品であることを警告する通知を送っている。東芝との合意についても,この警告状が東芝に届いた後に出荷した分のメモリがロイヤルティの支払対象となる可能性が高い。ちなみに,今回の合意は,Rambus社からの警告を受けたことで東芝が動き出したのか,それとも危険を事前に察知した東芝側から交渉を申し出たのかは明らかになっていない。Rambus社とは,「他社とも交渉を進行中」としており,今後,東芝に続いてRambus以外のメモリを製造する際にもロイヤルティを支払うことで納得する半導体メーカが出てくるかもしれない。 ロイヤルティの金額は,Rambus社の裁量で自由に設定できる。たとえばRambus社が期間を限定し,その期限までに合意すればロイヤルティ料を引き下げるといった戦略を採れば,他社が早期に合意するという見方もある。ちなみにRambus社は,「そういった戦略を採る予定はいまのところない」としている。東芝に続き,他社もロイヤルティの支払に合意するようだと,特許係争中の日立の立場が怪しくなる。他社がRDRAM以外のDRAMに関してライセンス契約を結んだという事実から,「他社が技術的な観点から,SDRAMやDDRモード付きDRAMはRambus社の特許を使っているという事実を認定した」と司法が判断することになりかねないからだ。Rambus社の次の一手が見逃せない。(浅見直樹)
NIKKEI BUSINESSから引用
第98回
SCEの米国法人,今度は特許侵害でBleem社を提訴
■ 今度の切口は真摯に受止めよう
ソニー・コンピュータエンタテインメントの米国法人であるSony Computer Entertainment America Inc.(SCEA)が,パソコン上でプレイステーション用のゲーム・ソフトウエアを動作させるエミュレータ・ソフトウエア「bleem!」を開発・販売している米Bleem, Inc.を特許侵害で訴えたことが明らかになった。「Electronic Entertainment Expo (E3) 2000」の会期中だった5月12日に,カリフォルニア州北部連邦地方裁判所に対して提訴していた。SCEAは1999年4月にもbleem!の販売差し止めを求める訴えを起こしているが,著作権侵害と企業秘密の不正流用を争点としていた。ところが,8月に連邦地方裁判所がSCEAの仮差し止め請求を棄却する決定を下したことから,bleem!の出荷は継続されていた。今回は,特許侵害を争点とすることで巻き返しを図る構えだ。 SCEAがBleem社による侵害を主張する特許は6件。1992年〜1997年に出願されている。出願者はいずれもソニーである。 (枝 洋樹=シリコンバレー支局)
NIKKEI BUSINESSから引用
第97回
プレステのエミュレータ訴訟に進展か,「SCEの主張が退けられる」と海外メディアが報じる
■ 切口が甘かったか
ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)と米Connectix Corp.が争う「プレステ・エミュレータ訴訟」に進展があった模様だ。複数の海外メディアがWebサイト上で,「裁判所がSCEの訴えの一部を退けた」と報じている(米国時間の5月17日)。これらの報道によれば,SCEが米Connectix社に対して提訴した著作権侵害に関する九つの論点のうち七つについて,裁判所はSCEの主張を認めなかったという。 米Connectix社は,SCEの家庭用ゲーム機「プレイステーション」の機能をパソコン上で実現するエミュレータ・ソフト「Virtual Game Station(VGS)」を開発,発売している。SCEとその米国法人Sony Computer Entertainment America,Inc.は,著作権侵害や商標侵害などの疑いで米Connectix社を1999年1月に提訴した。連邦地裁は同年4月,いったん同ソフトウエアの出荷の仮差し止め命令を下した。しかし米第9控訴裁判所は,2000年2月にこの連邦地裁の仮差し止め命令を棄却する判決を下し,裁判の差し戻しを命じていた。 SCEは「米Connectix社との訴訟は,現時点でまだ継続中である。情勢が最終的に固まったわけではない」(SCE広報部)とコメントした。なお米Connectixs社側からの発表に関する記事はこちら。(堀切 近史)
NIKKEI BUSINESSから引用
第96回
ラムバス社・続
■ チップのユーザにも及ぶ
米ITC,Rambus社の特許侵害提訴で日立,セガを調査
米国国際貿易委員会(ITC)は,米Rambus Inc.が特許侵害で日立製作所やセガ・エンタープライゼスなどを提訴している件に関して調査を始める意向を明らかにした(ニュースリリース)。Rambus社は同提訴で,日立製マイコン「SH-4」を使うセガ・エンタープライゼスのゲーム機「ドリームキャスト」をはじめ,日立製のシンクロナスDRAMやDDRモード付きシンクロナスDRAM,SHマイコンの輸入,販売差し止めなどを求めている。今回,調査対象となっているのは日立製作所,米Hitachi Semiconductor (America) Inc.,セガ・エンタープライゼス,米Sega of America, Inc.の4社である。(新井将之)
NIKKEI BUSINESSから引用
第95回
ラムバス社大暴れ
■ 業界標準技術は後が恐ろしい
米Rambus社, 欧州でも日立製作所を提訴
米Rambus Inc.と日立製作所の特許訴訟が欧州にも広がった。Rambus社は,独Hitachi Europe GmbHをドイツのマンハイム地方裁判所に提訴したと2000年4月11日に発表した。米国での訴訟と同じく,Rambus社は日立製のシンクロナスDRAMやDDR(double data rate)モード付きDRAMが同社の特許に抵触すると主張,これら製品の輸入や輸入後の販売,製造,使用の停止を求めている。ただし,これらのメモリに対応したコントローラは含まれていないもようだ。 争点となっているのは高速メモリに関する技術で,欧州特許番号は「EP 0 525 068」である。米国ではRambus社の提訴に対し,日立製作所が反訴している。今回の提訴について日立側は「訴状が届いていないため,コメントできない」(同社 社長室 コーポレイト・コミュニケーション本部 広報)としている。(新井将之)
NIKKEI BUSINESSから引用
第94回
富士通, 米TI社との特許訴訟で勝訴
■ 取り損ねた金は損金ではないのか
富士通と米Texas Instruments Inc.(TI社)の半導体特許訴訟が,富士通の勝訴で幕を閉じた。この訴訟は,1991年に富士通がTI社の半導体特許「日本特許第320,275号」(いわゆるキルビー'275特許)に抵触していないとして東京地方裁判所に確認訴訟を提起したことに端を発する。1994年には富士通側が勝訴したが,TI社はこれを不服として控訴していた。その後,東京高等裁判所での控訴は棄却,TI社は最高裁判所に上告していた。今回,最高裁判所でも上告が棄却されるに至り,富士通側の勝訴が確定した。 320,275特許は,TI社のJack S. Kilby氏のアイデアに基づき日本で出願された特許が分割され,成立したものの一つ。素子間の絶縁や分離方法,接続方法などに関する技術が含まれるという。なお,TI社は今回の判決に対して「現存の当社のクロスライセンス契約ならびに,当社のロイヤルティ収入になんら影響を及ぼすものではない」とコメントしている。(新井将之)
NIKKEI BUSINESSから引用
第93回
サンディスク
■ クロスライセンスに訴訟も辞さない
小型メモリ・カードを巡る権利争いが熾烈に, 米SanDisk社に関する二つの特許侵害裁判(000403)
フラッシュ・メモリ・カード大手の米SanDisk Corp.は,同社が関連する2件の裁判について状況を明らかにした。一つは,米Lexar Media,inc.が,SanDisk社の特許を侵害しているとする判決を,米国の連邦地方裁判所が下したというもの(発表資料)。もう一つは,日本国内で三菱電機がSanDisk社の日本法人を特許侵害で訴えたというものである(発表資料)。 Lexar社が侵害しているとされた特許は,米国特許番号5,602,987。Lexar社は,この特許が無効であるなどと主張してきたが,この申し立ては却下されたという。「今回の判決は,フラッシュ・メモリ・カードの供給者のうち,現在SanDisk社からライセンスを受けていない会社との間で,クロス・ライセンスを結ぶための道を開くものと考えている」(米SanDisk社のCEO,Eli Harari氏)。Lexar社は米Cirrus Logic社から分離した企業で,CompactFlashカードの高速版などを開発・販売している(同社の概要)。最近では,2000年1月にソニーと共同でメモリースティックの高速版を開発すると発表していた(関連記事)。 一方日本国内では,SanDisk社は三菱電機に訴えられた。「米SanDisk社の製品が我々の特許を侵害しているという根拠を得て,1999年3月から同社と交渉を始めた。数度に渡って話し合いを持ったが,我々の主張を受け入れてもらえなかったため提訴に踏み切った」(三菱電機 広報部)。三菱電機は,SanDisk社の製品(CompactFlashカードとATAインタフェースを備えるフラッシュ・メモリ・カード)の日本国内での販売の仮差し止めを求めている。SanDisk社が侵害していると訴えられた特許は3件あり,特許番号は2099342,2129071,2138047。 SanDisk社などが製造するフラッシュ・メモリ・カードの市場は,ディジタル・スチル・カメラ向けを中心に急成長している。2000年以降は,携帯型の音楽プレーヤなどでの採用も進むため,市場拡大のペースはさらに加速することになりそうだ。今回明らかになった2件の裁判は,将来の市場拡大を見越した企業間の権利争いが熾烈になってきたことを示している。(今井 拓司)
NIKKEI BUSINESSから引用
第92回
日本電池vs旭化成
■特許は無効審判(123条)を経て訴訟(178条)に発展してしまいました
旭化成工業が保有するLiイオン2次電池の特許権の無効を求め 東京高等裁判所に提訴(2000/8/7) 日本電池とその関連会社であるジーエス・メルコテックは,旭化成工業が保有す るLiイオン2次電池の基本特許の無効を求め,7月25日に東京高等裁判所に提訴してい たことが明らかになった。この提訴は,日本電池とジーエス・メルコテックが特許庁 に請求していた同特許の無効審判が2000年7月1日に棄却されたことを受けたもの(本 誌7月31日号のp.25,関連記事)。審議は2000年9月26日に始まる。 旭化成工業の特許は,正極にLiCoO2を,正極集電体にAlを用いるものであり(特許 番号第2128922号),市場に出荷されるLiイオン2次電池のほとんどがこの特許に抵触 するという。日本電池とジーエス・メルコテックが無効を主張する点は三つある。一 つ目は旭化成が特許審査中に要旨を変更したこと,二つ目は実施例の記載に不備があ り,実施例の手順ではLiイオン2次電池はできないこと,そして三つ目は集電体にAl を用いることは容易に想像がつくので,進歩性はないことである。(大久保 聡) 係争 旭化成,Liイオン2次電池の特許権を積極行使へ,現行製品のほとんどが特許に抵触 (2000/7/25) 旭化成工業が保有するLiイオン2次電池の基本特許に対する無効審判が,2000年7 月に棄却された。この無効審判は,旭化成が日本電池の関連会社ジーエス・メルコ テックを1999年2月に同特許の特許侵害で大阪地裁に提訴したことに対し,ジーエス ・メルコテックが対抗策として特許庁に対して請求していたもの。この決定をうけ, ジーエス・メルコテックは,東京高等裁判所に提訴し,特許の無効を引き続き主張し ていくもよう。 同特許は,正極にLiCoO2を用い,かつ正極集電体にAlを用いるというもの(特許番 号第2128922号)。市場に出回っているLiイオン2次電池のほとんどがこの特許に抵触 するという(詳細は本誌7月31日号のp.25に掲載予定)。(大久保 聡)
NIKKEI BUSINESSから引用
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