第1章 特許-II
第62回
訂正審判と無効審判
- 同一特許発明につき、訂正審判と無効審判が同時に係属する場合、訂正審判の審決をした後、又は審決確定後でなければ無効審判につき審理できないか
- 結論:審理できる。
- [理由]
審判官の裁量権であり、法上の根拠もないから、というのが従来の運用でした。現在では無効審判と訂正請求がリンクしているため、このような論点は消えました。
第61回
カテゴリーの変更
- 特許請求の範囲記載の物の発明を方法や別の対象物の発明に変更する場合は実質上の変更となり得るか
- 結論:変更となる(実務)。
- 例えば、「果実の被覆液塗布装置」を「果実の被覆液塗装方法」に変更や、「電気開閉器」を「電気自動トースタ用電気開閉器」変更する補正(訂正)は実質上の変更となる。
- 一方、吉藤説によれば、カテゴリーを変更しても特許権の効力が及ぶ限界内(減縮)に過ぎない場合は、差し支えないと解している点で相違する。これは、第三者に不利益がなく発明の保護が図れることを理由としている。
第60回
実質上の変更
- 発明の詳細な説明に実施態様として記載されたものを特許請求の範囲とすることは実質上の変更となるか
- 結論:変更とならない。
- 実質上の変更を狭く解釈すると、無効審判に対する防御策たる訂正審判(訂正請求)制度の意義が喪失されるから
第59回
権利範囲
- 特許請求の範囲と発明の詳細な説明とに広狭がある場合、発明の詳細な説明に基づいて特許請求の範囲を拡張することが許されるか
- 結論:許されない。
- [理由]
明細書において特許請求の範囲が占める重要性は、発明の詳細な説明等と同一ではなく、クレームを重視すべき(36条、70条)であり、そうしなければクレームの表示を信頼する第三者の利益を害するから
第58回
訂正審判の請求時期
- [原則]
特許権の消滅後においても請求できる(126条4項)。存続期間の満了、相続人不存在、料金不納、独禁法取消、放棄の場合
- [例外] 無効審判(123条)により全ての請求項につき無効にされた後は、請求できない。
- [例外の例外]
無効審判(123条)であっても、後発的事由により該当するに至った日から無効とされた場合は、無効になるまでの期間は有効であるので(125条但書)、請求できる。
第57回
旧特124条削除の理由
- S62年法改正までは、124条に外国刊行物に記載された発明について法29条1項3号若しくは法29条2項を理由とする無効審判は設定登録日から5年経過後は請求できないと規定されていた。権利の安定性を考慮して除斥期間を設けたものである。
- しかし、近年においては情報手段が格段に整備され、諸外国の刊行物も比較的容易に入手できること、外国人が無効審判を請求する場合、5年経過後は外国刊行物を根拠とすることができず、結果的に外国人が不利になっていたこと、また諸外国との制度の国際的調和を図るため、S62年(1987)一部法改正にて削除された(青本)。
- 従って、1992年以降においては外国刊行物を根拠に新規性・進歩性を理由に無効審判で争えることとなる。
第56回
専用品(のみに該当する物)のみについて、通常実施権の設定ができるか
- 結論:特許法上の実施権として登録できない。
- [理由]
特許発明の実施ではないから
- [但し]
契約による設定は違法ではない。
第55回
権利濫用を認める理論
- [理論の種類]
- [1] 当然無効説:
正当権原のある行政庁の審判を待つまでもなく、何人でもその無効を判断し主張できるとの行政法上の原則に立脚。
- [2] 公有財産論:
公知技術は万人共有の財産であり、私権は公益の福祉に従うとの大原則から考えても、万人の共有財産であった技術について、権利の名のもとに実施が妨げられることは許されるべきでないとの考え。
- [3] 権利の失効理論:
権利者が長期間権利を行使しなかった場合には、もはや権利を行使することを許さないとする考えであって、信義則に基づく理論。
- 「信義則」・・・全ての人は、社会共同生活の一員として信義に合し誠意を旨として行動することを要求すること、
「公序良俗」と共に法と道徳の調和を図るための重要な概念。
第54回
特許権侵害訴訟における証拠保全(民訴343-351の2)は、相手方がこれを拒絶したとき、申立人の主張を真実と認める規定(民訴316、317、335条)が適用されるか
- 結論:学説不一致、判例なし(否定的)
- [平成11年改正特許法]
証拠保全に関し、営業秘密を理由に拒絶できる範囲が限定されるため、申立人の主張が認められる余地がありそう
第53回
方法の発明には間接侵害の要素保護はないか
- 結論:我国は、間接侵害を認めない(否定的)
- [理由]
法101条文理解釈。方法が多工程からなる場合、各工程がその方法にのみ使用されるものであるときは、各工程の実施に間接侵害を認めることの是非であるが、法101条で、物の発明においては部品の生産につき間接侵害を認めているのに対し、方法の発明における各工程の実施について間接侵害を認めないのは不均衡であるのが論点となる。従って、方法の要素保護はない。
- [但し] 第1工程と第2工程の順に行う方法の発明の場合、第1工程の結果生じる中間生産物は、第2工程の方法の実施にのみ使用する物に該当する時は、当該中間生産物は専用品として間接侵害の対象となるのは言うまでもない。
第52回
間接侵害の成立には、直接侵害の存在を必要とするか
- 結論:直接侵害の有無を問題とすべきでない。
- [理由]
法101条の規定は、特許権侵害が業を要件とし、最終の組立のみを家庭的に行わしめる物には成立しないという不合理を填補する趣旨であるから、この趣旨に沿うし、また文理解釈上も妥当である。
- [参考]
完成行為が侵害ではない「試験・研究のための物」の専用品は、間接侵害の対象とならない(69条)。また、海外で完成品とする場合の専用品の輸出は、間接侵害の対象とならない。積極的に効力を制限し、外国に特許の効力が及ばないから
第51回
通常実施権者が「のみ」に該当する物(専用品)を自ら製造し、又は第三者(外国業者含む)の注文に応じて製造する行為は、間接侵害の対象となるか
- 結論:対象とならない(許諾・法定実施権者とも)
- [理由]
通常実施権者の完成行為が侵害の対象となり得ない以上、未完成行為が侵害の対象になることは不合理だから
- [但し]
専用品の生産数量は、別段の契約がない限り、完成行為に必要な範囲に限られる。
第50回
中性品又は汎用品は全て間接侵害の対象品とならないか
- 法101条における「のみ」の解釈
- 結論:法101条の適用を受ける場合があると解すべき
- [原則]
「のみ」とは、当該発明において使用すべき部品又は使用機械等が当該発明以外に用途がない場合に限る意である
- [事例]
網を運転席の前後に張ることによって、自動車の追突時における人身事故を防止する装置の発明において、網自体としては普通のものであっても、その網が自動車内に装置する以上、その長さ・幅・形状等が特定され、自動車の安全装置以外に使用されることがない物である場合には、その網は「のみ」に該当すると解すべき(細部については他の判例アリ)。
- 中性品や汎用品であっても一般的に市場において取得し得る製造物の場合は別として、文理解釈上、立法趣旨からみて、法101条の適用を受ける場合があるから
【今回から CASSIOPEIA
A60で編集】
第49回
ノックダウンは間接侵害となるか
- ノックダウンとは、複数の構成要件(部品)からなる物の発明につき、各部品(その物の製造にのみ使用する部品を含む)を別々に製造し、特許権のない国に輸出して輸出先で組立てることをいう。
- 結論:間接侵害の成立に直接侵害の存在が不要とするなら、間接侵害に該当する(吉藤8版増補)。
- 反対説には、間接侵害の成立に直接侵害を必要とする従属説があり、海外の実施(特許の効力範囲外)は侵害を構成し得ないので、国内の部品製造は間接侵害を構成しない、というものである。
第48回
専ら
- パリ5条の3-1号の「専らその船舶の必要のために」と、特69条2項1号との相違について、
- 船の航行に使用される動力発生装置に特許発明があり、これを船の停止中において他の目的、例えば鉱物探査に利用する場合は、この動力発生装置に特許権の効力が及ぶか、否かが問題となる。
- パリは、「専ら」という制限的字句があるのに対し、特69条はないので適用範囲に相違があるのかを考えれば、両者が相違するのは明らか。
- 結論:パリ5条の3によれば、特許権の効力が及ぶ(侵害となる)が、特69条により日本国に関しては、侵害とならない。
- 但し、パリの規定でも、船の航行中は特許権の効力は及ばないのは勿論である。
第47回
他の用途
- 間接侵害に関し、「他の用途」とは実用的用途であることを要するか
- @単に使用する可能性があれば足りるか
- A経済的、商業的、或いは実用的な使用の可能性が必要か
- B上記可能性では足りず、現に経済的、商業的ないしは実用的な使用の事実が必要か
- 結論:上記B
第46回
間接侵害に関し、他の用途の有無の判断時期はいつか
- 【事例】
- 特許発明:DDTを使用して殺虫する方法
- 行為:DDTを業として製造販売する
- 設定登録時には、DDTは殺虫剤以外の用途がなかったが、その後染料の製造原料としての用途が発見された場合、間接侵害が適用されるか否か。
- 結論:判断時期は侵害時である。
- 従って、他の用途が発見された時点でDDTは殺虫方法の専用品とはならないから、上記行為は非侵害となる。
第45回
排他権か専用権か
- 法72条を法68条の例外規定と解することの是非
- 結論:特許権は専用権であり、72条は68条の例外規定である。
- 理由:特許権は相対的であるとはいえ、実施の義務を伴うが、このことは特許権が実施を専有する権利であることを前提としなければ理解できないから。
- 反対説(排他権説):特許権は、特許発明を専有する権利ではなく、単なる排他権に過ぎない。また、72条は68条の例外規定と解すべきでなく、92条との関係で念のための規定に過ぎない。これは、発明者は特許権の決定を待つまでもなく本来実施の権能がある、ことを根拠とした説である。
第44回
修理・改造
- 特許品を特許権者から購入後、特許権者に無断で特許品の一部又は全部を業として「修理又は改造」する行為は侵害となるか。
- 【論点】消耗理論と法2条3項生産との関係
- 消耗理論は、あくまで購入した特許品そのものを実施することは侵害とならないことであり、ここで一度購入した特許品を生産することは考えられない。従って、問題とあることは、購入品自体を修理・改造した結果物が購入品そのものと認められるか、或いは、新たな生産物と認められるかが論点となる。
- 【結論】
- 基本的基準:修理・改造が新たな「生産」(再生産)と認められる場合は、侵害となる。
- 補助的基準:修理・改造の部分及び程度により、用尽説的効果の残存具合や権利者の利益と購入者の利益とを比較考量して、社会通念、商習慣に照らし、是認される程度か否かで判断する。
第43回
試験研究の結果、製造された物又は取得された物を販売することは侵害となるか。
- 【具体例】
- @特許品靴下製造機により製造した靴下
- A方法特許集魚法によって捕獲した魚
- B物を生産する方法特許で生産された物
- 結論:Bのみが侵害
- @、Aは2条3項の実施に該当しないから。
第42回
方法特許権の効力範囲は、間接生産物にまで及ぶか
- 生産物は、生産方法の使用により直接生産された物に限るべきか否かが論点。
- 【具体例】
- @染物の製造法(特許)の使用によって生産した染料(直接生産物)を用いて染色し、織物(間接生産物)を製造した場合の織物まで効力が及ぶか。
- A中間体(原料)の製造法の使用によって生産した中間体(直接生産物)に慣用手段を施して最終生産物(間接生産物)を生産した場合の最終生産物まで効力が及ぶか。
- 結論:効力は及ぶと解する。
- 法は、「直接」に限定する必要があるときは、その旨を明記している(37条4号)から、2条3項3号を直接に限定解釈することは文理上不当である。
- また、「直接」に限定すると方法発明の保護が有名無実化するから。
第41回
方法発明と用尽説
- 【論点】
- 特許権者が方法の特許権とともに、この方法を実施するための装置についても特許権を有している場合、その装置を正当に購入した者が、この機械を使用する行為は、方法特許権の侵害となるか。なお、方法特許のみの場合は用尽説とは関係ない。
- 【事例】
- @その方法はその装置によってのみ使用され、その装置はその方法にのみ使用される場合
- Aその方法は他の装置によっても使用できる場合、方法特許が装置をカバーする。
- Bその装置は他の方法にも使用できる場合、方法特許が装置の一部をカバーする。
- 【結論】
- @の場合は、侵害とならない(用尽説適用)。
- Aの場合は、原則として侵害とならない(用尽説適用)。但し、他の装置で方法を実施すると侵害。
- Bの場合は、売買上の実施許諾があるか否かの問題で処理する。
第40回
虚偽表示-VI
- 特許願済と表示することは虚偽表示となるか。
- 判例(大審判大5)は、特許出願が許可済(特許済)となったことを表示した物であると解される可能性が多く、「紛らわしい表示」(大正10年法93条3号)に該当する旨、解釈するが、今日の取引社会における認識では疑問である(吉藤)。
第39回
虚偽表示-V
- 誇大広告は虚偽表示となるか。
- 例えば、冷蔵庫のポケットに特許発明があるにもかかわらず、特許冷蔵庫と表示して、冷蔵庫そのものに特許発明があるように思わせて新聞広告をする場合は、物の一部について特許されているにもかかわらず、物全体について特許されているとの印象を与えている誇大広告の取扱い。
- 結論:虚偽表示になると解する。
- 誇大広告が法上の虚偽表示となるか否かは、当該誇大広告の程度により判断すべきである。よって、本問についてみると、特許に係る物はポケットであって冷蔵庫でない以上、特許に係る物以外の物に特許に係る旨を表示すること(法188条1号)に該当すると解するのが妥当であるから。
- なお、同時に不正競争防止法上の虚偽表示(1条1項5号)、いわゆる景品表示法上の不当表示(4条)に該当する場合もあり得る。
第38回
虚偽表示-IV
- 特許に係らない物に「特許」の文字のみを付した場合は虚偽表示となるか。
- 結論:虚偽表示であると解する。
- 番号の有無(又は成否)は、第三者が調査する際の便宜のために過ぎず。特許表示上、第二義的な事項に過ぎないから。
- 参考までに、特許表示とは、物の発明の場合は、特許の文字及びその特許番号、物の生産する方法の特許発明の場合は、方法特許及びその特許番号(特施規68条)です。
第37回
虚偽表示-III
- 特許出願11-123、特許出願中、又はPAT.pending11-123と表示することは、虚偽表示となるか。
- 結論:虚偽表示にならないと解する。
- これらは出願中であることを明らかにしており、「特許表示と紛らわしい表示」(法188条1号)にも該当しないと認められるから。
第36回
虚偽表示-II
- 特許権存続中に製造された物に特許表示が付され、特許権消滅後に販売する行為は虚偽表示になるか。
- 結論:188条2号に該当し、虚偽表示行為になると解する。
- 188条2号は、同条1号に該当したものにつてのみ適用があると解すると、特許権消滅後に販売されることを知りながら、特許権存続中に特許表示をした者が罰則の適用を受けないこととなり不合理だから。
第35回
虚偽表示-I
- 特許権消滅後、原権利者が相変わらず元の特許品に特許表示を付することは虚偽表示となるか。
- 結論:虚偽表示となると解する。
- 特許表示を付する際には、既に特許に係る物ではないから。
第34回
延長期間の取扱い
- 拒絶査定謄本が送達され、4条1項により2ヶ月延長された場合の審判請求期間の末日はいつか?
- 延長されない場合の審判請求期間の末日(以下、「当初の末日」という)が官庁の休日の時にどのように解釈するのか。
- 結論:当初の末日の翌日を起算日として2ヶ月後の応答日の前日が請求期間の末日となる。
- 理由:2月延長された場合の付加された期間は、元の期間と一体をなし、合計された1つの期間として審判請求期間が定まると解すべき。従って、官庁休日が明けた日を起算日として2ヶ月後の応答日の前日と解することはできない。
- 論点は、3条2項にいう「期間の末日」が合計された1つの期間の末日を指称し、延長される以前の元の期間の末日が休日に当たっても、そこに3条2項を適用する余地があるのか否かである。
第33回
期間を延長できる者
- 長官、審判長、審査官以外の者が指定した期間は延長できるか。
- 延長できるとした場合、延長する者は長官か指定者か?
- (1) 通産大臣が指定した裁定の答弁書(93条、84条)
- (2) 主席審判官が指定した判定答弁書(令7条)、意見書(令10条)
- 結論:各指定者が延長できる。
- 理由:5条1項の類推解釈により、上記結論とすることが妥当。
第32回
特14条本文とただし書
- 14条但書の規定は、2人以上が共同して手続きした場合において、所定の代表者選定届の提出があったときは、14条本文に掲げる手続以外の手続については、その代表者が全員を代表することを定めたものであり、14条本文に掲げる手続きについても、その代表者が全員を代表することができる旨を定めたものではない(判例)。
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