______まだ二十かそこらのころ、私はよく

夕暮れの道路に車を走らせた。当時はワーゲンに乗っていて、

ずんぐりと堅固なそのボディは私のお気に入りだった。

春まだ浅き日のこと、幹線道路から逸れて

海の見える細い道に車をとめていると、

「レイコ」

知らない男が知らない名前で私を呼んだ。

「だれだか知らないけど、私はレイコじゃないわ」

私はセーラムをポンと彼のほうに向かって

投げ捨てて行った。

「失礼」

一瞬、とまどった表情をしたのちに、彼は言った。

「ずっと昔に親しかった女性に

後ろすがたがあまりに似ていたので・・・・・・」

急に彼は礼儀正しい態度に変わり、

少しぎこちなく謝った。

これが私と彼とが出会ったきっかけ。

彼は私よりもひとまわり年長で、奥さんがいて、

そして、大人だった。

私は彼の大人をふりまわすことによろこびを抱いた。

それでいて、彼の大人についていけなかった。

愛し方も彼は大人だったから、

それはどこかさびしくて________。

・・・・・・と、まあ、こんなふうな話が、私は

大っっっっっっっっっっっっっっ嫌い!!である。

ヒメノ式ベストINDEXへもどる・ヒメノ式番外編その2・・・角川文庫「愛は勝つ、もんか」・・・恋愛下手になろう・・・より抜粋・・・ディズニーアニメ白雪姫より「いつか王子さまが」。本書「愛は勝つ」の解説で唐沢俊一氏が、スカした文章に出会った時にその文章の最後に「そんなあたしの、う・ん・こ」という言葉を付け加えるとよろしい、と書いています。イラストはまだ私がスカしてた20才当時のもので、・・・このいかにもな感じが恥ずかしい。