2004年

4月

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『さくらインテリーズ』 戸梶圭太(早川書房)2003.09出版
インテリくずれのホームレス達が繰り広げるドタバタ劇。
...などと言うと、王道を極めたユーモア小説のようだが、これは先の展開が全く読めない。 お約束にとらわれない、つまり読者に媚びないシュールとさえ言えるその筋運びは、エンターテイメントとして破綻している。 それは彼の短編の特徴でもあるわけだが、その手法をとうとう長編にも持ち込んで来た。
これに比べたら筒井の初期短編でさえ読者の方を向いている。 ま、長編ゆえそのシャープさは薄まっているので、結果的に筒井の短編を 無理矢理長編にしたような印象を持っちゃうことは確かだけど。
ま、ほぼ同時期に出版された、小説版根本敬とも言える『CHEAP TRIBE』と同じテイストだが、媚びなさ加減では若干負けている。
いずれにせよリハビリ代わりに読む本ではない。

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『ペトロシアンの方程式(上下)』ビル・ネイピア(新潮文庫)2003.12出版
リズム的にいまひとつノリ切れず。訳のせいばかりとは言い切れない。
冒険小説としても、謀略ものとしても、百歩譲ってSFとしたって底が浅いなー。欲張りすぎたか。 ここまで面白くなりそうなネタをてんこ盛りにして、ここまでぬるく(良く言えば「まったり」か)仕上げられるのも一種の才能かもしれない。
ところで新潮ってどうしてこの程度の長さの本をいつも上下巻に分けるのだろう。
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『博士の愛した数式』 小川洋子(新潮社)2003.08出版
ここ最近、数学をテーマにした小説が目立ち始め(もちろん映画「ビューティフルマインド」の影響)、 一定時間で記憶がリセットされる前向性健忘症を扱ったミステリやサスペンスも多い。 これはその2つを無理なく自然に組み合わせてハートウォーミングな話しに仕上げている。
「完全数」や「黄金率」などの数学アイテムから心温まるエピソードをつむぎ出すテクニックはさすがだし、 一般的な痴呆症ではなく、ルールの明確な痴呆とも言える前向性健忘症の老人を主人公に据えることによって、 悲惨さを表立てさせないで、ほのぼのとした空気を演出したあたりは上手い。 特に、背広のあちこちに沢山のメモをクリップどめした博士のイメージはなかなか絵になる。 (「メメント」の刺青メモとは対極)
でも、一人暮らしの老人と家政婦、そしてその幼い子供を登場させたら、それだけで泣ける話しになるのは当たり前のような気もする。
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『おさかな棺』 霞流一(角川文庫)2003.10出版
現代日本のバカミス王による4編収録の短編集。
ま、バカミスっつても、この作者の場合は「天然バカミス」ではなく「確信犯的バカミス」なので、 ジャンル的には「ユーモアミステリ」だと思うけど。
ちょっとした手がかりから推理(というより妄想)を重ねに重ね、結論にたどり着くとなぜかそれが真相だったりする。 推理(妄想)自体はいつも以上にロジカルに展開されているので、これはこれで芸風の一つとして良しとする。
ま、私は確かにロジックは好きだけど、無謀なチャレンジの果てに結果的に自爆してしまったロジックはもっと好きなんだけどね。
途中の「ご都合主義」も実は伏線だったりするので侮れない。
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