過ちの代償

 

 

人間という生き物は常に過ちを侵して生きている生き物だと言われます。

聖書によるとこの世に生まれ出た事自体が、「原罪」と言う名の罪なんだそうで・・・。

 

俺が思うに、罪(失敗)と言う物は必ずしてしまう物であり、

それをしない努力よりも、それをしてしまった後にどうリカバリ

(反省・教訓)していくかが大事だと思うのです。

 

と言う事で今回ピックアップして話したい失敗と言うのは、

「妊娠」についてです。

 

ちょっとヘビーなネタですが、あえて避けずに語りたいと思います。

 

この話題に触れようと思ったきっかけは、とある飲み屋での

お姉さんとの会話からであった。

 

「私、失敗した事があるの・・・・。」

 

その娘は唐突に語り出した。

 

その問いとも言える語り口調に俺は返答の言葉を失った。

しかし口調は平坦で、「普通の今日は天気がよかったですね。」

という何気ない会話の後にそのままの口調で語り出したのである。

 

その娘の心の奥まで覗いた訳では無いので、確かな事は言えないが

別に悪びれる様子も無く、普通の会話として話し始めた様に俺には写った。

 

別にその行為自体を非難・批判する気はない。

 

育てられない子を無理やり産むよりは、遥かに健全で

確かな判断であったと思われるからだ。

 

しかしその口調があまりに軽過ぎる為に、俺には少々不愉快に

写った事は事実なのである。

 

こんな飲み屋で、しかもこんな酔っぱらい相手に話す内容では

無いと思われたからだ。

 

その行為によって、

「傷ついたのは身体だけではなく、心も傷ついているはずだ。」

と思いたかったから。

 

「今時の若いもんは・・・。」とオヤジ臭く説教する気などは全然無いのだが、

その後のお酒はやけに苦い酒になった。

 

そんな話しを聞いて、大学時代のとある友人の事を思い出した。

 

 

 

その大学時代の友人Mは、研究室が一緒の仲であった。

だから、よく一緒に酒を飲んだし、研究の合間に下らない事を

話しあったりもした仲であった。

 

そのKが、担当教授に受ける大事なプレ発表会を休んだのである。

その発表会を休むと単位取得が危うくなる程、大事な発表会であった

のだが、その大事さを痛感しているはずのKが何故か当日、

研究室にこなかったのである。

 

翌日、何言わぬ顔で登校してきたMに向かって、研究室の

仲間達で問い詰めたのである。

 

「お前、昨日の発表会の大事さ知ってるよな?」

「単位取れなかったらどうすんだよ!」

「俺ら、みんなで卒業するって約束したよな!」

 

そう問い詰めるとMは、重たい口をしぶしぶ開き出した。

 

「俺、水子供養に行っていたんだよ・・・。」

 

その告白を聞いて、研究室の仲間一同は驚きの表情を隠せなかった。

たしかにMはモテる方ではあったと思うが、ここ2〜3年彼女らしき

存在はいなかったはずなのである。

 

「M、お前俺らに内緒で彼女作ってたんか?」

 

仲間の一人がふざけ半分でそう聞き出した。

 

 

しかしMの告白は違っていた。

 

その彼女と言うのが、4〜5年前の高校時代に付き合っていた彼女だったらしい。

その高校時代の浅い知識の中で、たった一度

過ちを侵してしまい、彼女が妊娠する羽目になってしまった。

 

当時は、その子供を産むと言って聞かなかった彼女だったのだが、

所詮は高校生カップル。

 

経済的な理由を元に、両親の猛反対に合い、泣く泣くおろす

事を決めたらしいのだった。

 

その彼女とは、それが元で分かれてしまったのだが、

その子供の命日には、分かれた彼女と毎年必ず、

子供のお墓参りに行っているのだと言う事だった。

 

 

その俺を含めた研究室の仲間一同は、一時でもからかいの

気持ちを持った事を激しく後悔した。

 

こいつはその高校時代のたった一度の過ちを、

未だに償い続けているのだなあと痛感したからであった。

 

その友人Mは、まわりの場の雰囲気が予想以上に重くなって

しまった事を察知して、

 

「いやーでも、分かれた彼女と今更ながらに会うのって気まずいんだよね。」

 

と取り繕った笑顔で言っていたが、その表情はいつもの

居酒屋で飲んだくれている、表情よりは一回りも二回りも

大人に写って見えた。

 

 

そんな昔話を思い出した。

 

たった一度の過ちである。

人は誰でも過ちをおかしながら生きている。

それは否定できない事実である。

 

けれど、その過ちによって失われる命があるのなら、

その過ちによって何かを得て、何かを学ばないと

失われた命も浮かばれないのではないだろうか?

 

そんな事を考えながら飲む酒は妙に苦い酒だった。

 

 

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