虹の橋の上で




虹の橋で出会った2人に



 彼女は一人暖かな陽だまりで太陽の温もりを感じていた。
 暖かな光の元、まどろむのは至極心地の良い事だ。
 薄れ行く意識の中、彼女はそんなことを考えていた。
 獲物を追うのも、同居人の二人を見物するのも楽しいものだが、これも心地よい。
 この公園のベンチの上は、彼女の指定席。
 誰にも邪魔されることのない、安らぎの場所。
 ふと彼女にさしかかる日の光が遮られた。
 誰かが彼女を覗き込んでいるらしい。
 不機嫌な顔をして彼女が見上げると、銀の光が彼女の視界を覆い尽くしていた。
 そっと手が伸ばされ、あれよあれよと言う間に、彼女は誰かの膝の上に載せられていた。
 抗議して爪でも立ててやろうかと一瞬、考えたが、彼女が背中を撫ぜる心地よい感触にその意識も霧散していく。
 ゆっくりとだが、彼女は眠りの海へと沈んでいった。

 彼は新緑の香りのする並木道を歩く。
 一人の女性と待ち合わせの現場に向かう途中なのだ。
 木々の間から零れる木漏れ日を感じながら、彼は一人目的地に向かって歩くのだ。
 輝かしい世界をその目で見つめながら・・・・・・・・・
 「急がないとな、待ってるだろうからきっと」
 自分の愛する人の顔を思い浮かべ、言う彼、きっと彼の愛しい人はもう待ち合わせの場所で待っているのだろうから。

 ふわりと木々の葉を揺らし、風が舞う。
 吹き抜ける風を彼女は目を閉じ、感じる。
 暖かな光とともにそれは、彼女に自分が今ここにいると言う事を感じさせてくれるから。
 そう、彼女の愛しい人と共に成長する喜びを感じさせてくれるから。
 もう、一人くらい闇の中で、待つことはないのだ。
 ずっと一緒にいられるのだ、死が二人を別つまで。

 それは、今まで彼女が知らなかった幸せ。

 背中を撫ぜる手と、何処と無く月をイメージする、少女の声を子守歌代わりに彼女はまどろむ。
 至極心地よい、まるで暖かな想いに包まれている、そんな気がして。
 どこかで、感じた事があるような気がする、そんな、感じの暖かい想いに・・・・・・
 彼女は瞳を見開き、同じような想いの事を思い出そうとする。
 「ふにぃ」
 思わずそんな泣き声をあげた彼女の喉を、月の少女は撫ぜてくれる。
 その心地よい感触に彼女は同じ想いを感じた場所を思い出す。
 彼女の同居人の、少女と同じだ。
 自分の思いが正しかった事を意識しながら、彼女は再び夢の国へと帰っていく。
 心地よい、想いと感触にその身を委ねながら。

 膝の上に感じる温もりと微かな重み。
 それを感じながら、彼女は手を動かし続ける。
 蒼い空と、白い雲が、視界一杯に広がっていた。
 そんな、蒼い空を見上げながら彼女は一人待ち続ける、そろそろ彼女の愛しい人がやってくるような気がして。
 ふと、名前を呼ばれたような気がして、その方向を向くと、そこにいた。
 愛しい人がそこに・・・・・・・・・・

 「・・・・・・!!」

 「・・・・・・様!!」

 公園に入った彼が見たのは、猫を膝の上に抱く愛しい女(ひと)の姿。
 彼女が見たのは、彼女と共に生きる事を誓ってくれた愛しい男(ひと)の姿。
 彼は彼女の元に駆け寄り、彼女は笑顔で迎える。
 「待たせちゃったかな?」
 問いかける、彼に彼女は笑顔で首を振る。
 「いいえ、そんなに待ってませんから」
 交錯する笑顔、想い、願い・・・・・・

 彼女は閉じていた瞼を開け、新しくやってきた人の顔を見上げる。
 黒髪の一人の青年がそこにいた。
 「ところでこの猫は?」
 青年の問いに月の少女は答える。
 「しらないです、ここにいた、猫さんです」
 そんな二人を見つめ、彼女はそっと月の少女の膝の上から降りる。
 「あ、猫さん。」
 静かな恋人達の時間を邪魔するほど、野暮じゃないのだ、彼女は・・・・・
 月の少女の声に彼女はそっと振り返ると、一声泣いた。
 二人に幸せがあらん事を願い。
 小さな声でだったけれども、一声、泣いた。

それは、ある初夏の日の出来事


fin


     虹の橋の上で 完


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