トンボQ&A


一般的なQ&A

Q:トンボが少なくなったり、いなくなったりする原因はなんですか?
A:簡単に考えれば自然破壊という言葉が浮かびますが、実際のところ、トンボの種類によって好きな環境が違うので一概には言えません。例えば、サラサヤンマが住んでいた湿地をつぶして、池を掘ると、サラサヤンマは姿を消していまいますが、代わりにオオヤマトンボ、ウチワヤンマ、クロイトトンボが飛んでくるようになります。
 ただ、最近全てのトンボは確実に減り続けています。トンボは多様性のある環境を好みます。水辺の近くに林がないと休憩場所がないので住めない・・・といった具合です。
 トンボが減った直接的原因は、
生態系の破壊です。
 間接的原因は、広い意味での
環境破壊と言えます。

Q:生態系が破壊されるのは何のせいですか?
A:元々強者と弱者の数の段階的均衡によって生態系は保たれてきましたが、最近、極めて単純化する傾向が見られます。いま最も問題視されているのが、ブラックバスブルーギルなどの外来魚です。彼らの極めて旺盛な食欲のために、従来水辺に住んでいた生物は殆どがその犠牲となってしまいます。本当に彼らの食欲は半端ではないので、物理的に確実にトンボの幼虫の数を減らすことに貢献します。例えば、埼玉の比企郡には多数のため池があり、トンボがたくさんいそうですが、実際はバスやギルしか住んでいないことが殆どです。ウシガエルミドリガメアメリカザリガニも本来はいなかった種類で、これらの放流は絶対にやめるべきです。バスとギルの放流は法令で禁止されており、違反すると罰金を課せられます。また、鯉を養殖しているような池ではトンボが極めて少ないのですが、この原因もおわかりでしょう。

Q:環境破壊とは?
A:リゾート、ゴルフ場建設のための土地開発。土壌まで入れ替えてしまい、水はけをよくしてしまったりもするので、周囲の水環境は極めて悪くなります。ゴルフ場維持に使われる、農薬、除草剤、芝生の染料などが、そのままゴルフ場から流れ出す沢をつたわって流れ、周辺の生物を死滅させることもあります。排気ガス工場からの噴煙不法廃棄物消却によって発生する有害物質が大気中にばらまかれることにより、人間も含めて周辺の生物に悪影響を与えます。それらが直接的に動植物を死に至らしめることもあるし、最近注目されている環境ホルモンが大気中や土壌、水中に入り込んでいる可能性は否定できません。環境ホルモンは、子孫を残す機能に重大な障害を与えることが知られており、雌雄同体などの性機能障害個体を生み出すことがあります。トンボなどの昆虫は一度に産む卵の数が非常に多いのですが、これらが全て無精卵だったとしたら・・・、確実に絶滅への道を辿ることになるのです。他、農薬の空中散布によって直接的に広域に渡って昆虫が死滅します。最近は空散を控える地域も増えているようで、そのようなところではトンボの絶対数も増えてきているようです。また、これらの、環境破壊の要因は常に複合された形で作用していることに注目しなくてはなりません。環境破壊とは言えませんが、水田耕作の放棄によるトンボの減少も注目されています。
オニヤンマ、カトリヤンマ、アキアカネなど身近な種類が減反によって減っています。

Q.トンボの食べ物や天敵について詳しく教えて下さい。
A.トンボは空を飛んで獲物を探します。従って、空を飛ぶ虫を食べることになります。
最も多く餌になるのは、蛾やハエ、カなどの小さな虫です。
トンボ自身の大きさによって必然的に捕まえられる虫の大きさが決まってきますが、時に自分と同じくらいの大きさの昆虫を捕らえることがあります。イトトンボでも、他のイトトンボを捕食することが度々あり、時には、キイトトンボやベニイトトンボが自分より大きなモノサシトンボを捕らえて食べてしまうこともあります。特に、羽化して間もないやわらかいトンボは他のトンボの絶好の餌食になってしまうことが多いようです。
シオカラトンボは見かける機会が多いので、捕食シーンもよく目撃されますが、ヤマトアブのように比較的大型の昆虫を好んで捕食する他、ウスバキトンボやアカネの類を捕食している場面にも出くわします。
ヤンマなど大型の種類では、更に大物にも手を出します。
ギンヤンマ♂は、交尾を断られた♀を捕食してしまうこともあるそうです。また、リュウキュウギンヤンマが同じくらいの大きさのカラスヤンマを捕食している写真も図鑑で発表されています。コオニヤンマは、時にカラスアゲハなど大型の蝶を捕食します。オニヤンマは特に顎の力が強く、セミやキイロスズメバチ、ムシヒキアブなど手強い相手を捕食することがあります。
特殊な例としては、アオヤンマ、ネアカヨシヤンマが上げられます。彼らは、他のトンボと同様、小虫も捕食しますが、空中に巣を張っているオニグモなどかなり大型な蜘蛛を襲って食べることで知られています。一般にトンボは蜘蛛の巣にかかったら抜けられずに捕食されてしまいますが、このヤンマ二種は蜘蛛の巣の抜け方をよく知っているようです。

トンボの天敵は、陸、空、水に存在します。
陸上では、待ち伏せする敵、
カマキリ蜘蛛などがその典型です。
水中の敵は、
カエル肉食水生昆虫魚類です。
水際に静止して産卵する♀は、カエルの絶好の標的になります。ギンヤンマの連接個体に向かって果敢にジャンプして捕食しようとするウシガエルの姿も頻繁に目撃されます。同様に、ジャンプしてトンボを襲う者として最近注目されているのがブラックバスです。他のページでも触れていますが、ホバリング中のトンボを水中からジャンプして一呑みにしてしまうそうです。バスに食べられてしまうトンボの数は半端ではないようで、それによってトンボの数が少なくなってしまっているという報告があります。
肉食水生昆虫も主に産卵中のトンボを襲います。
ゲンゴロウの成虫幼虫は、水面下に産卵するトンボのしっぽに食らいつき、消化液を注入します。トンボは僅かの時間で体の内部を溶かされてしまい、吸い尽くされてしまいます。イトトンボの他、産卵中のオオルリボシヤンマがゲンゴロウ幼虫に捕食された例が報告されています。
空中の敵は大型のものでは野鳥の類やコウモリが上げられます。
ツバメコウモリによる捕食圧もかなりのもので、尾瀬ヶ原でツバメが増殖したためにトンボが激減したという話もあります。それより小型な昆虫類は空に於いては殆どトンボにかないませんが、中には同じ昆虫でトンボを襲って食べてしまう者もいます。それはシオヤアブなどをはじめとする大型のムシヒキアブです。ムシヒキアブの類は、種類によって好きな餌が微妙に異なりますが、マメコガネなどの行動の鈍い者がよく餌食になります。しかし、トンボの類もよく襲われ、アカトンボの類が餌食になります。そして、時にはより大型なシオカラトンボの仲間、さらには、稀にヤンマの類もムシヒキに襲われてあえなく命を落とします。ミルンヤンマがムシヒキに捕食された事例の他、屈強なオニヤンマまでもがムシヒキの類に襲われて捕食されてしまった例があります。ムシヒキは、背後から飛びつき、すぐさま口吻を突き刺して体液を吸ってしまいますので、後ろを取られるとどうしようも出来ないようです。


埼玉県編

Q:埼玉には何種類のトンボがいますか?
A:記録があるのは何と90種類です。実際に見られるのは70種類前後です。

Q:故郷・埼玉のトンボというホームページをわざわざやっているくらいだから、埼玉にはトンボが多いのですか?
A:いいえ、むしろ少ないと思います。何処へ行ってもトンボが少なくてがっかりすることが多いし、撮影するチャンスもその分少ないですが、逆に、トンボを探し出す楽しみは増えます。

Q:埼玉には珍しいトンボがいますか?また、種類にはどんな地域性がありますか?
A:全国的に珍しい種類としては、ヒヌマイトトンボ、ベニイトトンボ、オオセスジイトトンボ、オオモノサシトンボ、コバネアオイトトンボ、メガネサナエ、キイロヤマトンボ、ベッコウトンボ、オオキトンボなどの記録がありますが、埼玉は首都圏にあって開発も進んでしまっており、現在ではこれといって珍しい種類は生息していませんし、今後見つかる可能性も低いです。本州中部以北の平野部にいるような普通の種類オンパレードです。埼玉には海はありませんが、県南部には満ち潮のときに海水が遡上するいわゆる汽水域があります。ここでは珍しいヒヌマイトトンボも記録されています(現在は絶滅した可能性がある)。県西部大滝村には、2000メートル級の山が連なっており、高山性のトンボも期待できそうですが、残念ながら自然にできた湖沼や湿原がこの地域になく、長野、群馬、栃木などで見られる高山性のトンボ(カラカネイトトンボ、エゾイトトンボ、ルリイトトンボ、オオトラフトンボ、カラカネトンボ、ホソミモリトンボ、カオジロトンボ、ムツアカネなど)は生息していません。辛うじて低標高地にも生息するオゼイトトンボ、ルリボシヤンマ、オオルリボシヤンマが記録されている程度です。

Q:家族連れでトンボを気軽に楽しめる場所は?
A:浦和の秋が瀬公園、北本の自然観察公園、長瀞の岩畳などがあげられます。夏の夕方は、トンボ採りのおじさんがよく来ます。ただ、沼地なので足元や蛇、毒虫などに注意が必要です。

Q:どんなトンボがいなくなってしまったのですか?
A:有名なベッコウトンボハッチョウトンボも、昔、埼玉にいましたが、もう25年以上記録がありません。コバネアオイトトンボメガネサナエ1960年代前半の記録しか残っていません。ですから、この4種は絶滅したと考えられます。

Q:他にもいなくなりそうなトンボがいるのでは?
A:元々埼玉に生息していたトンボの内、キイロヤマトンボは1991年、東松山市での記録が最後です。ホソミイトトンボも公式の記録は1977年が最後です。最近見つかったという話もありますが、裏がとれていません。オオセスジイトトンボは、64年が最後の記録でしたが、何と1999年に記録されました。ただ記録は1♂だけで定着しているかどうかも不明です。トラフトンボは、20年振りに1995年に北本で複数目撃されましたが、それ以後はみつかっていませんし、1993年に見つかったオゼイトトンボも1994年の記録が最後です。以上の5種はまさに絶滅に瀕していると言えそうです。他、オオエゾトンボ、ハネビロエゾトンボはかろうじて生き残っていますが、最近見つけづらくなり、姿を消してしまうかもしれません。オオキトンボも、近年生息地が再発見されましたが、発生数は少なく今後の生存が極めて危ぶまれます。確実な産地が極めて少ないキイロサナエベニイトトンボヒヌマイトトンボ、確実な産地のないマダラヤンマも崖っぷちに立たされていると言っていいでしょう。記録の極めて少ないハネビロトンボ、タイリクアキアカネ、オオギンヤンマは埼玉で発生していない飛来種なので、見られるかどうかは、その年の元々の発生数、気象状態によると言えそうです。