白内障手術説明書

1.白内障とは
虹彩(茶目)の後ろにある水晶体というレンズが濁る病気です。主に老化に伴うもので、程度は人それぞれですが、80歳以上のほとんど全員に認められると言われています。カメラに例えればレンズという内部構造に濁りが生じて曇ってしまった状態ですので、これが原因で生じた視力障害はメガネを新しくしても改善されません。

2.白内障の症状
 視力低下(見づらい、かすむ)、羞明(まぶしい)などの症状が出現します。時に「メガネをかければよく見えるけれども裸眼では見づらい」と訴える方がおられますが、この場合の見づらさは近視・遠視などの屈折異常や老視(調節力の加齢による減退、いわゆる老眼)によるものですので白内障による症状とは異なります。メガネで改善する場合は手術よりもメガネを新しく作り直すことをお勧めしています。

3.白内障の治療
 白内障が進行してしまったら、現在有効な治療は手術しかありません。目の中の水晶体というレンズが濁って光の通りをさえぎるわけですから、この濁りを取り除けば光の通りが回復します。しかし取り除いただけではピンボケになってしまいますので、通常は合成樹脂製の眼内レンズ(いわゆる人工水晶体)を目の中に移植します。
 手術の内容をもう少し具体的に説明しますと、水晶体は水晶体嚢と呼ばれる透明な袋に包まれており、その中身が濁っています。そこで、この透明な袋の前の方に丸い穴をあけて中身を超音波で砕いたりしながら吸引して取り除きます。そうすると透明な袋が残りますので、その中に眼内レンズを挿入します。万が一手術の状況によって眼内レンズを移植できなかった場合にはコンタクトレンズなどの使用を考慮します。
なるべく丁寧な手術を心がけており、手術時間は平均15分以内ですが、手術中に合併症が生じると1時間以上の時間を要することもまれにあります。

4.麻酔について
 手術は局所麻酔で行います。通常はまず点眼麻酔で痛みを抑制してから、痛みの軽い注射麻酔を併用していますので、麻酔に伴う苦痛はほとんどありません。

5.入院期間・来院日・費用
 原則として火曜日と水曜日の午後を手術日としています。1泊入院か日帰りかをあらかじめ選んで頂きます。(2007年4月より原則として日帰り手術の場合も事務手続き上は1日入院という形になっています。2泊以上の入院はお引き受けできません。) 水曜日は日帰り手術のみで泊まることができませんので、1泊入院を御希望の方は火曜日に手術を予定させて頂きます。
 また、恐縮ながら当院では入院中のお食事はお作りしておりませんので、係の者が御要望に沿って近隣のお店でお弁当等のお食事を購入してまいります。御家族の方に御用意いただくことも可能ですが、出前の注文は御遠慮いただいております。
 1泊入院の場合は手術当日に入院、翌朝(概ね9時半頃に)退院となります。入院・日帰りを問わず、原則として手術翌日と次の日、手術の約1週間後に診察します。その後は診察の間隔が延びます。
 費用は、保険3割の方が4〜5万円、1割の方が1万5〜6千円前後です。
 (日帰りと1泊入院の費用の差は数千円以内です。)
*手術給付金付きの生命保険等に加入されている場合、白内障手術も対象となることがあります(現在の医療保険上の手術の正式名称は「水晶体再建術」です)。
詳しくはご加入の保険会社にお問い合わせ下さい。診断書の用紙を御提出いただければ医師が記入してお渡しします。(記入までに少なくとも数日はお時間をいただきます。また、所定の診断書作成料を申し受けます。詳しくは受付事務員にお尋ね下さい。)

6.レンズの度数
 眼内レンズの度数は、眼球の大きさ(直径)と角膜(黒目)の形から計算し、御希望によって度数を選択します。この度数の狙い方の大まかな指針を記しておきます。
・ 遠くに合わせる場合:裸眼の状態で遠く(2〜3m以上離れた距離)が見やすいようにします。その場合読書時には近用眼鏡(老眼鏡)が必要になります。もともと眼が良かった方はこのような選び方にされることが多いようです。
・ 近くに合わせる場合:裸眼で近く(読書距離の30cm前後)が見やすいように度数を設定します。遠くをはっきり見るためにはメガネが必要です。若い頃から近視でメガネをかけるのに慣れており、手元を見る時にはメガネを外して見るクセがあるような方に適しています。
・ 中間に合わせる場合:1m前後に合わせると裸眼で遠くも近くもある程度は見えます。あまり細かい字を読まない方はこれで満足される場合もありますが、遠近ともにはっきり見るためにはメガネが必要となる中途半端な狙い方ともいえます
 大まかに以上の3通りの狙い方がありますが、適切なメガネを用いれば遠くも近くもピントは合いますので、あくまでも「裸眼で」どのようになりたいか、ということが選択の基準です。また、近視の強いコンタクトレンズユーザーのような特殊な場合もありますので、個別の状況に応じて反対眼の状態も考慮しながら適切な度数を御提案致しますが、最終的には御本人に決めて頂きます。術前検査の予約日に眼内レンズの度数を決定しますので、前もって御自分の御希望をよくお考え下さい。

7.乱視とメガネ作成の時期について
 手術では器具を出し入れするために角膜(黒目)と強膜(白目)の境目付近に数mmの切り口を作ります。これは人工的に作成された切り傷ですので、傷の治りに伴ってある程度のひきつれが生じます。これがわずかな眼球のゆがみ、つまり乱視の変化を引き起こします。今まで乱視と言われたことのない方でも、詳しく調べれば必ずある程度の乱視は存在するものです。したがってもともとの乱視が手術によって変化することになりますが、この変化は通常1〜3か月で落ち着きます。手術の直後にメガネを作ってしまうとすぐに度数が合わなくなる可能性がありますので、お急ぎの事情がない限り、手術後1カ月以上経て乱視が落ち着いてからメガネを処方します。

8.合併症
 白内障手術はとても安全になりましたが、それでも1〜数%の確率で合併症が起こります。合併症の多くは適切な対処によって大きな問題を残さずに済みますが、中には眼内レンズを移植することができなくなったり、かえって視力が低下してしまう場合も可能性としてありえます。この危険性を完全になくすことはできないのですが、危険が少しでも低くなるように細心の注意を払って手術に臨んでおりますので、御理解の程お願い致します。
 手術後に眼をこすったりすると、細菌等が眼に入って感染症を起こし、失明する可能性もありますので、手術後1週間以内は特にお気をつけください。
*下記は1998年4月から2007年5月初めまでの約9年間に当院で施行した白内障手術約3040例における主な術中・術後発生率(発生数)です。
・後嚢破損(水晶体の袋が破れること):1.3%(41例)
・水晶体小帯断裂(水晶体を支える線維が外れること):1.3%(40例)
・水晶体落下(水晶体が眼球後方に落下すること):0%(0例)
・合併症のために眼内レンズ挿入をできなかった例:0.07%(2例)
・術後の網膜剥離(術中合併症がなくても生じ得ます):0.13%(4例)
・術後の細菌性眼内炎(術後早期のもの):0.07%(2例)

9.手術後の見え方について
 白内障の他に問題がなければ、翌日眼帯を外した時にはすでによく見えるようになっていることも多いです。しかし、御高齢の方や手術時に伴う角膜のむくみが強めに出現した方は視力が改善するのに1週間以上かかる場合もあります。
 また、眼内レンズの度数設定においても、個人差のために裸眼でピントを合わせたはずの距離でもメガネが必要になることがあります。裸眼で遠くから近くまで自由に見えるということは通常あり得ませんので、少なくとも1つメガネが必要となります。もし白内障以外の病気がある場合には視力が出ないこともあります。手術前から予想できればお話しますが、手術してみなければわからないこともあります。もちろん、そのような場合にもできる限り事前に説明いたします。
 また、後発白内障といって、手術から1〜2年位たつと水晶体の袋が濁って視力が落ちてくることがあります。この濁りが視力低下の原因であれば、外来でレ−ザ−治療を行えば視力は回復します。(2〜3分で終了し、しかも無痛です。)

10.手術前後のご注意
 消毒が効きにくくなり、細菌感染をおこしやすくなるため手術日のお化粧は御遠慮下さい。また、感染予防のため術後約1週間は洗顔および洗髪はできませんので御注意下さい。(美容院等での仰向けの体勢でのシャンプーは手術翌日から可能です。)

11.手術中のご注意
 手術中は強い光が当たるため眩しくて目をつぶりたくなるものですが、できる限り目をぎゅっとつぶらないように御注意下さい。目をつぶろうとすると眼球が上を向いてしまい操作がとてもやりづらくなります。さらに力が入ると眼球に大きな圧がかかるため危険です。また、急にお顔を動かさないように御注意下さい。手術中は顕微鏡で拡大して観察していますので、ちょっとした動きも術者には非常に大きな揺れとなります。咳、くしゃみが出そうになったり、体をずらしたくなった場合に我慢していると手術に悪影響が出ますので、ご遠慮なく声を出してお知らせ下さい。すぐそばで聞いていますので、大きい声を出す必要はありません。危険な器具を遠ざけてから動いてよいことをお教えします。体調等から咳が出そうな予感や不安がある場合には、手術前にお申し出下さい。より一層注意して手術に臨みます。経験上よほどひどい動きでなければあまり問題はないのですが、念のために御注意申し上げています。よくこちらからの問いかけにうなずいたり首を横に振ったりする方がいらっしゃいますが、これは危険なことですのでご注意ください。
その他、手術中に気になることがございましたら、何でもお知らせください。

*その他ご不明の点がございましたら医師またはスタッフにお問い合わせ下さい。