点眼薬とその副作用について

 点眼薬というと何か万能の目薬のように思われる方は結構多いようです。
 何らかの症状が生じたため「市販の目薬をつけたが全く効果がないので」受診した、という場合にどんな目薬を使ったのか尋ねると、「疲れ目の薬」などというのは良い方で、中には「よくわからないが家にあった目薬を適当につけた」という強者もいらっしゃいます。
 点眼薬も内服薬と同様、それぞれの症状に応じた効能の成分が目に安全な状態に調整されていますので、万能の目薬などというものはありません。市販の目薬は医師の目が行き届かないので、成分の選択や濃度調整には副作用がほとんど出ないような配慮が加えられていますので、安全性は高いものの、効きは弱くなっているのです(毒にも薬にもならない、というわけです)。これに対し、医療機関で処方される点眼薬はよく効く薬物が十分な濃度で調整されていますので、よく効きます。しかし、薬の副作用がしばしば問題となります。
 細菌性結膜炎など一時的な使用ですぐに治ってしまう場合には副作用はほとんど問題になりませんが、慢性の疾患で、長期にわたる継続的な使用が必要な場合には、点眼の回数をきちんと守っているか、副作用が出ていないか、ということにはかなり気を遣います。

 ここでは眼科で用いる代表的な点眼薬や眼軟膏についてその特徴や使用回数、副作用などをまとめてみました。副作用には添付文書に載っているものの中で代表的と思われるもの、および私の経験から感じたものも一部含めてあります。また、同じ薬品でも商品名が製薬会社によって異なるというのはよくあることなので、一般名も載せておきました。商品名は当院で処方しているものを中心に載せましたが、多くは代表的な会社のものです。
なお、当院でも2003年4月よりジェネリック医薬品(後発医薬品)の処方を開始しましたので、表の中でジェネリック製品を青字で示すことにします。一般名で処方しているものは一般名も青字で示してありますが、この場合は薬局で商品名の異なる製品を渡される可能性があります。

点眼薬全般の副作用

 一般に、点眼薬には薬効成分以外にpHや浸透圧などを調整する成分が含まれています。さらに、口をあけた後の細菌汚染を防ぐために、多くの点眼薬には塩化ベンザルコニウムなどの防腐剤が添加されています。
 長期にわたって点眼の使用を続けるとこれらの添加物による接触性皮膚炎などの副作用を生じる場合があります。特に点眼薬を一回に2〜3滴以上つけたり、点眼した後にあふれた液をよく拭き取らなかったりするとこのような副作用が生じやすくなります。このような副作用が生じた場合には防腐剤を含まない特殊な点眼薬を用いる他、むしろ点眼薬の使用を中止する場合もあります。点眼薬は1滴つければ十分なので、副作用を抑えるためにもつけすぎに注意しましょう。
 次に、特定の薬物に対して体がアレルギー反応を示す場合があります。これを薬物過敏症と呼びます。これは実際に使用してみなければわからないのですが、薬物過敏症の存在がわかっている場合には慎重に薬物を選ぶ必要があります。一方、点眼薬であれ、内服薬であれ、薬の副作用はまず動物実験で確認され、次に人間での臨床試験によって安全性を確かめられています。この場合に、妊娠中の女性への試験やお子様への試験は倫理上行うことができませんので、妊婦や子供に対する安全性を確認された薬はありません。したがって、臨床上の有益性が確実と思われた場合にのみ処方するということになります。お薬をお出しするときにはできるだけ確認をするようにはしておりますが、何らかの薬物アレルギーの既往がある場合や、妊娠中もしくは妊娠の可能性がある場合には、ご自分からその旨を申し出られるようおすすめします。点眼薬は涙とともに下鼻道に排出され、その途中にある管の粘膜から吸収された分が全身に影響しやすいので、点眼した後に目頭と鼻の間を1〜数分圧迫することによって全身への吸収を抑えるなどの対処法をおすすめすることもあります。

以下の表は2007年9月時点の情報です。

緑内障治療薬

 最近新しい商品の開発が進み、選択肢が増えました。そのため、点眼のみでコントロールされる方も増えてきたように思われます。特によく処方している薬品名を太字斜体にしておきました。

分類 商品名 一般名 点眼回数 禁忌や副作用
PG系 キサラタン ラタノプロスト 1回 長期連用時の眼瞼色素沈着・睫毛異常
  レスキュラ イソプロピル
ウノプロストン
2回 点眼時の刺激感、角膜上皮障害
β遮断薬 チモプトール マレイン酸チモロール 2回 喘息、心不全、不整脈、ドライアイ、異物感、結膜充血など
  チモレート 同上 1回 同上
  チモプトールXE 同上 1回 同上
  リズモンTG 同上 1回 同上
  ミケラン 塩酸カルテオロール  2回 同上
  ミケランLA 塩酸カルテオロール  1回 同上
  カルテオロール 塩酸カルテオロール  2回 同上
β1遮断薬 ベトプティック 塩酸ベタキソロール  2回 心不全、点眼時の刺激感、流涙、異物感
α・β遮断薬 ハイパジール ニプラジロール 2回 喘息、心不全
ニプラジロール ニプラジロール 2回 喘息、心不全
α1遮断薬 デタントール 塩酸ブナゾシン 2回 異物感、結膜充血
α刺激薬 ピバレフリン 塩酸ジピベフリン 2回 反応性充血、心悸亢進、頭痛
α2刺激薬 アイオピジン アプラクロニジン 2回 血圧上昇、充血、上眼瞼後退、散瞳、心拍数異常、鼻乾燥感など
副交感刺激薬 サンピロ 塩酸ピロカルピン 4回 点眼時の刺激、暗視野、近視化、白内障
炭酸脱水酵素阻害 トルソプト 塩酸ドルゾラミド 3回 点眼時の刺激感
エイゾプト ブリンゾラミド 2回 一時的な刺激症状、かすみ、かゆみ、充血など

抗菌剤・抗ウィルス剤

分類 商品名 一般名 点眼回数 副作用
ニューキノロン クラビット レボフロキサシン 3回 刺激感、掻痒感
   ガチフロ ガチフロキサシン 3回 刺激感、過敏症状
   ベガモックス 塩酸モキシフロキサシン 3回 刺激感、過敏症状
  タリビッド オフロキサシン 3回 刺激感、掻痒感
  オフテクター オフロキサシン 3回 刺激感、掻痒感
  ロメフロン 塩酸ロメフロキサシン 3回 刺激感、掻痒感
セフェム ベストロン 塩酸セフメノキシム 4回 刺激感、掻痒感
アミノ糖 サンテマイシン ミクロノマイシン 4回 刺激感、掻痒感
マクロライド エコリシン エリスロマイシン
+コリスチン
4回 接触性皮膚炎
  コリマイC クロラムフェニコール+コリスチン 4回 接触性皮膚炎
  オフサロン 同上 4回 接触性皮膚炎
抗ウィルス剤 ゾビラックス軟膏 アシクロビル 5回 角膜上皮障害
  IDU点眼 イドキシウリジン 頻回 涙点閉鎖、刺激感、眼瞼・結膜炎

抗アレルギー剤

花粉症や通年性アレルギー性結膜炎、アトピー性角結膜炎やコンタクトレンズによる巨大乳頭結膜炎などアレルギーによって生じる病態の治療薬です。アレルギーの特徴は”かゆみ”ですが、かゆくない場合もあります。かゆみを抑える効果の強いもの、予防効果が主体のものなど製品によって特徴がありますので、どの薬が合うか、ということに関してはかなり個人差があり、次の項目の抗炎症剤に含まれるステロイド剤が必要な場合もよくあります。太字斜体は当院でよく処方している薬です。

商品名 一般名 特徴 点眼回数 副作用
インタール クロモグリク酸ナトリウム 予防効果主体 4回
結膜充血、眼瞼炎
クロモフェロン クロモグリク酸ナトリウム 予防効果主体 4回
結膜充血、眼瞼炎
インタールUD クロモグリク酸ナトリウム 防腐剤なし 4回  
ザジテン フマル酸ケトチフェン かゆみ↓↓+予防 4回 点眼時の刺激感、過敏症、結膜充血
ケトチフェン フマル酸ケトチフェン かゆみ↓↓+予防 4回 点眼時の刺激感、過敏症、結膜充血
パタノール 塩酸オロパタジン かゆみ↓↓ 4回 刺激感、まぶたの腫れ
リボスチン 塩酸レボカバスチン かゆみ↓↓ 4回 刺激感、乾燥感、接触性皮膚炎
リザベン トラニラスト かゆみ↓ 4回 刺激感、眼瞼炎、眼瞼皮膚炎
ケタス イブジラスト かゆみ↓ 4回 刺激感、掻痒感
アイビナール イブジラスト かゆみ↓ 4回 刺激感、掻痒感
アレギサール ペミロラストカリウム かゆみ↓ 2回 刺激感、接触性皮膚炎
ペミラストン ペミロラストカリウム かゆみ↓ 2回 刺激感、接触性皮膚炎
ゼペリン アシタザノラスト かゆみ↓ 4回 刺激感、接触性皮膚炎

抗炎症剤

太字斜体は当院でよく処方している薬です。

分類 商品名 一般名 点眼回数 副作用
ステロイド系 リンデロン リン酸ベタメタゾンナトリウム 2〜6回 長期連用時の眼圧上昇、
創傷治癒遅延、易感染性
  サンベタゾン リン酸ベタメタゾンナトリウム 2〜6回 同上
  デカドロン デキサメタゾン 2〜6回 同上
  DMゾロン デキサメタゾン 4回 同上
  フルメトロン フルオロメトロン 4回 同上
  オドメール フルオロメトロン 4回 同上
  ネオメドロールEE軟膏 メチルプレドニゾロン
+硫酸フラジオマイシン
1〜数回 同上
非ステロイド系 ジクロード ジクロフェナクナトリウム 3回 角膜上皮障害
  ブロナック ブロムフェナクナトリウム 2回 刺激感、眼瞼炎、結膜充血
  ニフラン プラノプラフェン 3〜4回 刺激感、眼瞼炎、結膜充血
  プロラノン プラノプラフェン 3〜4回 刺激感、眼瞼炎、結膜充血
  アズレン アズレンスルホン酸ナトリウムなど 4回 眼瞼腫脹、眼瞼発赤
  ムコゾーム 塩化リゾチーム 4回 過敏症

角膜治療剤・眼精疲労改善剤

ドライアイや角膜上皮障害、眼精疲労などの際に用いられます。太字斜体は当院でよく処方している薬です。

商品名 一般名 特徴 点眼回数 副作用
ヒアレイン ヒアルロン酸ナトリウム 保護効果++ 5〜6回
接触性皮膚炎、刺激感、掻痒感
アイケア ヒアルロン酸ナトリウム 保護効果++ 5〜6回
接触性皮膚炎、刺激感、掻痒感
ティアバランス ヒアルロン酸ナトリウム 保護効果++ 5〜6回
接触性皮膚炎、刺激感、掻痒感
ヒアレインミニ ヒアルロン酸ナトリウム 防腐剤なし 4回
接触性皮膚炎、刺激感、掻痒感
コンドロン コンドロイチン硫酸ナトリウム   4回
点眼時の刺激、掻痒感、結膜充血
フラビタン フラビンアデニンジヌクレオチド ビタミン B2 4回
FAD フラビンアデニンジヌクレオチド ビタミン B2 4回
サンコバ シアノコバラミン ビタミン B12 4回
過敏症

白内障治療薬(進行予防薬)

商品名 一般名 点眼回数 副作用
カタリン ピレノキシン 4回 眼瞼炎、角膜上皮障害
カリーユニ ピレノキシン 4回 眼瞼炎、角膜上皮障害
タチオン グルタチオン 4回 刺激感、掻痒感、結膜充血


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