3つの代表的な調律法

◇自然純正律:各音間の振動数比に基ずく調律法

  • 各音間の振動数比に基ずいている事から、純正な和音が得られる。
  • 旋律の輪郭の明確さはピタゴラス律、12音平均律の両方より劣る。
  • 転調は難しい。

◇12音平均律:1オクターブを12の等しい半音で分割する調律法

  • すべての調に共通する12の半音を持つことから転調が可能である。
  • 和音の純正さは自然純正律とピタゴラス律の中間に位置する。
  • 旋律の輪郭の明確さはピタゴラス律と自然純正律の中間に位置する。

◇ピタゴラス律:純正5度を上下に次々重ね1オクターブ中に移す調律法

  • 全音の幅が広く半音の幅が狭いことから旋律の輪郭が明確である。
  • 和音の純正さは自然純正律、12音平均律の両方より劣る。
  • 転調は難しい。 

【自然純正律】の計算法

和声的に最も協和度の高い純正5度(振動数比3/2)と純正長3度(振動数比5/4)を基本としてその組み合わせからオクタ−ブ内の各音を導きだす。

CとG(純正5度)・CとE(純正長3度)を基にDはCから5度上行を2回繰り返す。FはCから5度下行。AはCから3度上行して5度下行。HはCに3度と5度を加える事で次の表が得られる。

 C 

 D 

 E 

 F 

 G 

 A 

 H 

 C 

1

(3/2)2

5/4

2/3

3/2

5/4 X 2/3

5/4 X 3/2

2
これらの音をオクタ−ブ内に移すと次の表になる。

 C 

 D 

 E 

 F 

 G 

 A 

 H 

 C 

振動数比

1

9/8

5/4

4/3

3/2

5/3

15/8

2

音程間隔

9/8

10/9

16/15

9/8

10/9

9/8

16/15
参考までに12音平均律との比較のためセントに換算

 C 

 D 

 E 

 F 

 G 

 A 

 H 

 C 

セント

0

204

386

498

702

884

1088

1200

音程間隔

204

182

112

204

182

204

112
平均律では異名同音となる音も純正律では異なる音高を持つ、例えばFisとGesでは後者が高くその差は62セントにもなります。しかし純正律では主要三和音が4:5:6の最も単純な振動数比を持ち、平均律に比べはるかに美しく響く。反対にD-A、E-Hにおける5度の不協和、大全音と小全音の2種類の全音の存在など、転調する場合の不都合が大きすぎる。

【12音平均律】の計算法

純正律で転調するにはオクタ−ブ内に無数の音を用意しなければならない。そこでオクタ−ブ内の近似的な音程を平均して実用的にした調律法が平均律である。等分平均律・不等分平均律の2種類がある。不等分平均律は純正律やピタゴラス律の部分的修正で、その代表的なものが中全音律である、これはディデュモスコンマを解消したもので長3度は純正に近く大全音と小全音の区別をなくしその中間の中全音を用いるのであるがやはり転調可能な調は限定される。等分平均律には12等分や53等分平均律があるが、現在平均律といえば12等分平均律を指す、これはピタゴラスコンマを解消したもので、2セント(1/12ピタゴラスコンマ)狭くされた5度を12回連続して音階構成音を得る。

 

C

D

E

 F 

 G 

 A 

 H 

 C 

振動数比

 1 

6√2

3√2

12/5√2

12/7√2

12/9√2

12/11√2

2

音程間隔

6√2

6√2

12√2

6√2

6√2

6√2

12√2

 C 

 D 

 E 

 F 

 G 

 A 

 H 

 C 

セント

0

200

400

500

700

900

1100

1200

音程間隔

200

200

100

200

200

200

100
12等分平均律では12の半音オクタ−ブ内のすべての音を代表するので純正律やピタゴラス律では音高の異なる音が同一の音として扱われる。ここではFisとGesは異名同音として扱われ同じ音高を持つ、12音平均律の5度はほぼ純正に近い(-2セント)値であるが、長3度のずれは+14セントとかなり大きい、また全音階的半音と半音階的半音が同音程となり協和音程と不協和音程が同一音程になる等欠点も多い。しかし転調可能な12音平均律はその欠点を補ってあまりあるものがあり、現在広く用いられている。

【ピタゴラス律】の計算法

純正5度(振動数比3/2)と完全8度(振動数比2/1)を基本として構成される、古代ギリシャのピタゴラスの名がついている。

純正5度を繰り返すことによって次の音が得られる。

Db

Ab

Eb

B

F

C

g

d'

a'

e"

h"

(2/3)5

(2/3)4

(2/3)3

(2/3)2

(2/3)

1

(3/2)

(3/2)2

(3/2)3

(3/2)4

(3/2)5
これらの音をオクタ−ブ内に移すと次の表になる。

C

D

E

F

G

A

H

C

振動数比

1

1/2(3/2)2

1/4(3/2)4

2(3/2)

3/2

1/2(3/2)3

1/4(3/2)5

2

音程間隔

9/8

9/8

256/243

9/8

9/8

9/8

256/243

参考までに12音平均律との比較のためセントに換算

 C 

 D 

 E 

 F 

 G 

 A 

 H 

 C 

セント

0

204

408

498

702

906

1110

1200

音程間隔

204

204

90

204

204

204

90

平均律では異名同音となる音もピタゴラス律では異なる音高を持つ、例えばFisとGesでは後者が高くその差は24セントこの音程差をピタゴラスコンマと呼ぶ、またピタゴラス長3度は純正3度に比べ広くその差は22セント、この音程差をディデュモスコンマと呼ぶ、転調が不可能ことと、和音に純正な響きが得られないことから実際の使用には問題が多い。

日本や中国の調律法

順八逆六法(日本):順八とは完全五度上がる事、逆六とは完全四度下がる事。

         :或る音から交互に五度上、四度下を繰り返す方法。

3分損益法(中国):順八逆六法と同じ方法。

         :三分損一は順八、三分益一は逆六に相当する。