24.かわいい落とし物
もうお散歩もおしまい、あと少しで家に着こうかという道にさしかかったとき
レオは「それ」を見つけました。「それ」はあるビルの植え込みの中にいました。
レオが見つけたのとほぼ同時にカオルさんの目にも「それ」がうつりました。でも
カオルさんとちがってレオは地面すれすれを歩いていますので、素早く「それ」を
くわえようとしました。ところがそれよりも早くカオルさんの手がのびてきて
「それ」をつかんで持っていってしまいました。「それ」は小さなぬいぐるみでした。
車に轢かれた かんじです。なんかぺちゃんとしているようにカオルさんは感じました。
レオは自分が 見つけたんだぞ、というようにジャンプして「それ」を取りかえそうと頑張りましたが、
そんなこと カオルさんが許すわけがありません。カオルさんはすばやくぬいぐるみをバッグの中に
しまいました。そばで小学生のきっと1年生でしょう、小さな男の子がカオルさんの行動をずっと
みています。カオルさんは「まずいかな?」と一瞬思いましたが、さっさと歩いてきてしまいました。
角を曲がって後ろをふりかえると、小さな男の子も角を曲がってカオルさんとレオをみていました。
落とし物を盗んだおばさん、って思われるでしょうか。
カオルさんは家に帰るとすぐに洗面所でぬいぐるみを洗いました。耳の長い、というか
耳の大きなうさぎです。丸っこい耳をしているのが特徴です。かわいそうなことに目がかたほう
とれてしまっています。ちゃんと直してあげなくちゃ、とカオルさんは思いながら、ぬいぐるみの
体をいい匂いのするせっけんで何度も洗い、タオルで抱き締めるように乾かしてあげました。

りりぃさんとあくあさんがこの子に「あとぅいちゃん」という名前をつけてくれました。
「あとぅい」とはアイヌ語で「水」という意味です。「あとぅいちゃん」はきれいに洗ったら
うっすら水色をしていたのでした。
「あとぅいちゃん」どんなふうにしてあの植え込みまでやってきたんでしょうか。
