Maritime Labour Research Institute

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平成16年度研究概要

T 船内情報管理の負担軽減と安全性向上に関する調査研究

U 船員の疾病要因に関する労働科学的研究

T 船内情報管理の負担軽減と安全性向上に関する調査研究
(2年計画、最終報告)
はじめに

 最近ISMコードやISO9000シリーズなどによる各種資料およびそれらに関する報告、通信士削減下でのGMDSS管理など船内での情報処理が増えている。他方陸上側もこれらのためのデータ収集や配信、その管理など膨大なデータ量を扱う状況になっている。データが年々蓄積され、処理の負担が増し、それを有効に活用することが難しくなってしまう可能性がある。例えば、これまで行ったインシデントレポートに関する調査では、危険経験の報告に手が回らないとか、収集した報告を活かすための処理が出来ないといった声が聞かれたことは本末転倒した状況といえる。
 これらの資料には、関係する領域は違うが内容が類似したデータを要する場合や、類似の報告が様々な提出先に必要とするなど、重複している場合がある。一方でパーソナルコンピュータ(以下、PC)とEメールの利用が船内でも一般化しつつあり、事務作業への活用が広がっている。したがって、PCを活用したデータの集約や簡素化、データの送受信、データの選択、データのネットワークを利用した共有などによってデータ処理負担を軽減することが可能である。

A 船内情報管理について 

1 情報管理負担軽減の課題
1.1 問題提起
 ヒューマンエラーとインシデントの情報収集と分析システム開発のため、大手海運会社のヒヤリハット報告の取り組みを調べた折、現場では報告、会社では収集後の処理に多大な負担を感じている様子がみられた。大災害を未然に防止するために、その芽を摘む資料として有効な情報の活用が負担になるようでは問題である。このことが本調査研究の動機となった。
 海運の国際化が急速で人材を世界中に求め、船舶管理などの経営も国際的に分業化する中で、大規模船舶事故が後を絶たたないといった状況があったために、安全管理の国際標準化を進め、ISMコードなどで備えおくべき文書・報告・申請などの資料が増え、その保管、点検や更新、報告が必要になったことがこの問題をもたらす大きな原因と思われる。また、無線業務へのGMDSS導入による通信士の削減、情報技術導入による現場の情報端末化、特定の人への管理的仕事の集中などによる負担増の可能性も指摘されている。
 これらは情報に関する問題である。従来の航海、機関、事務、貨物、港湾に関する情報にSMS、PSC、ISOに関する資料が加わり、資料収集、保管管理、取り出し、更新、点検などの管理とその経過の報告や申請などの事務作業が増えたことや、GMDSSの導入によって、定期的な点検、誤発信を含む送受信への対処、これら履歴の管理などが増えたことである。情報技術の適正な活用がこの問題を克服する方法の一つと考える。
1.2 情報管理負担の原因と背景
 情報管理の目的は必要に応じて有意な情報を得ることであり、その源となるデータとの関係が重要である。データの一般的定義は、人間又は自動的手段によって行われる通信、解析処理に適するように形式化された事実、概念又は指令、並びに物理現象によって得られる事実の表現であって、それ自体は価値をもたないが、人や事象がそれを活用する意味をもつ場合に情報となる。情報は、一定の約束に基づいてデータを意思決定に用い、ある決められた表現方法によって意味を持ったデータである。情報の内、常に活用することを前提に蓄えられ利用されている情報は知識として人や集団に備わる。
 以上のデータと情報と知識の関係を整理すると以下のとおり、データから情報が生成する関係と対象の包含関係で表される。生成関係ではデータに価値を見出す、あるいは価値を与えるという過程によって情報となる。包含関係ではデータの一部が情報となり、情報の一部が知識となる。

図表1 データと情報と知識の関係

生成過程 包含関係
 
  価値
データ 情報    データ 情報 知識

 船内作業に数多くある記録簿や報告書は、会社や官憲が管理する意味では情報であるが、事務作業でそれらを作成する側の船員にとっては完備しておく義務を課せられたデータであって、活用するという意味がない手続き作業である。一方マニュアルなどは提供する会社側にとっては船で必要なときに活用するためのデータであり、船にとっては保管・管理するデータであるが必要な時には意味をもち情報となる。この関係は下図のようになる。船と会社で共有するデータは分担して互いに提供し(図中の点線が分担境界を示す)、それぞれが活用できる一部のデータが情報となり、情報の一部が知識となる。


 情報負担は、ISMコード等に関する資料や報告事項は増えたがそのデータは船の情報とはならず、分社化した複数の会社ではそれぞれがマニュアル等のデータを提供し船の報告を活用する関係にあって、データの総量が増え、船と会社のデータ提供が船側にウェイトがかかった状態とみられる。負担感の解消には、現場で扱うデータ量を減らすこと、手続きを簡素にすること、会社側に移転すること、現場で情報となるデータ比率を高めることである。


1.3 情報社会の問題
 データは手書きの資料や印刷物によって利用される場合は、その手間が情報量を制約してきたが、コピー機の普及やコンピュータ利用によって情報の量は増え、データの分類や集計分析など質的にも高度になってきた。以前にはコンピュータ利用は専門家のテリトリーであったが、1990年代にパーソナルコンピュータ(以下、PC)が普及し、操作が容易なアプリケーションソフトの開発、PCのメモリーの拡大、インターネットによる情報通信の発達によって、情報の収集、蓄積、加工が容易になり情報量は増え続けている。
 その結果不必要な情報も多くなり、真に必要な情報が見えにくくなったり、情報相互の関連性の管理がしにくくなる状況、すなわち「情報のエントロピーの増大」が起き、情報に翻弄される懸念も生じてきている。情報技術の発達は、先だけを見て突き進む 「トンネルデザイン」に陥り、周辺で起こっている社会的事象に目が向かなくなり、現実への対処を見えにくくするととしてJohn Seely BrownとPaul Duguid は著書の中で以下の点を示唆している。
@情報技術の6D(非−マス・集中・国有・専門・仲介・集約)への過剰な期待を避ける。
A人の役割を代行するエージェント技術を人の行為とみなしてはいけない。責任を付与されてはじめて人間と重複した作業を補完的に行うことができる「道具」とみたほうがよい。
B情報技術には人と人の間の有機的効果は期待できず、社会は直線的・テクノロジーは幾何級数的に成長するという「崩壊の法則」のギャップが生まれるので、絶えずテクノロジーが社会に接近する努力が必要である。その重要な点は大衆化と有能なユーザーの育成である。
C業務に関する知識は、トップダウン的に縦のプロセスを重視すると組織の形と方向は明確にしやすいが硬直化しやすく、プラクティスを通じた横の連携によるボトムアップを重視すると現実をとらえやすいがグループ撞着とグループの一人歩きを起こしやすい。バランスよく運営することがナレッジマネジメントにとって需要である。
D知識は学習を通じてその人に付いたものであり、形式的側面と暗黙的側面が、人の心構え、態度、見通しなどの実践に活かされる。学習には実体験のコミュニティーが必要で、コミュニティーは他のコミュニティーとの緩やかなネットワークに支えられる。
Eコミュニティーは均質さを求めて創造性を失いがちだが、つながりを緩めてアイデンティティーを培うことによって創造性が保たれる。これは同業多種のコミュニティーのネットワークによって保証される集積の生態学による場合が多い。情報技術の見通しとは裏腹に、人の距離の近さ、人の組織化が知識の創造を保証する。
 以上の内Bは、一般に情報技術の発達によって新たな情報活用の展開をみせると次の展開を求めるようになるが、社会的仕組みと人の要求はそれほどには変化せず、利用者と開発者の間にギャップが生じる場合が少なくないことを強調している。例えば、バージョンアップやシステムの盛衰に伴う新製品への乗り換えなどに多大な労力を要する状況である。コンピュータの発達による可能性や有益性といった光の側面に対して、利用者がギャップに翻弄されるという陰の側面が指摘されることが多くなった。情報技術の発達と適応のバランスが問題であり、発達した技術の有効性を感じる以上に適応に負担を感じる場合には有効性を高めるか負担を緩和する必要がある。一般のユーザーがコンピュータを理解して技術を自分の方に引き寄せる努力、あるいはコンピュータ技術者が一般の社会的、技術的環境に配慮した開発を進めることである。
1.4 安全管理と情報管理
 船舶は一端航海に出ると他から物理的サポートは受けられず、わずかに通信による情報支援のみである。そのため自己完結型システムと称され、所定の技能を備えた乗組員集団が備え付けられた設備やその予備品を利用して独立的に運転・管理している。乗組員が対処出来ない事柄は寄港地やドックにおいて適宜あるいは一定間隔で関連業社が対処している。これらのサポートは、会社の海務部や工務部と言われる担当業務セクションが仲介している。外航船ではこのセクションは分社化されて、本社が定めた必要な業務内容を、乗組員についてはマンニング会社、保守整備と運航については船舶管理会社と契約して実施している。船舶の安全管理もそのような業務形態にしたがっており、先に述べた国際的な標準を、独立性が強い複数の組織が協調的に行うという性格がある。その結果、安全管理のためのデータ量は増え、遠隔地を結ぶ情報網は広がり、データの交流は頻繁になる。
 安全管理のデータは大きく分けると、第一は船舶設備の堪航性の確認のための各種の検査証書、仕様書、取扱い説明書類であり、メーカーや検査機関が発行した資料が主なデータである。第二は安全上実施すべき作業内容であり、勤務場面での担当者の作業標準である。船舶と乗組員の関係会社が乗組員に求める服務規程、安全チェックリストなどで、乗船時や人事考課時などに利用する情報でもある。第三は作業の実施状況の確認であり、規則上、契約上実施が求められる安全に関わる作業記録などである。保守整備記録、安全確認記録、運航記録、作業記録、ときにはトラブルなど新しい履歴を保管し、報告するデータである。第四は、以上のデータの内から船会社、関係会社、官憲などが必要とする情報をまとめて報告するデータである。先に述べた最近の海運経営の性格から、第二以降のいずれのデータも増加しているものと思われる。
 これらのデータは的確な安全管理の方策を提供し、手際良く対処するためのものであり、データを必要とする場面とタイミングは従来と変わらないが、これまで個人的な経験的知識にとどめて済んでいたことが、標準的なデータとして外部化して絶えずそれとの対応を確認しながら業務を行い、その結果を記録に残すというデータ管理が加わったといえる。そのためにアクセスすべきデータが増え、記録し保管する業務が増えており、情報管理の負担を感じるようになったと思われる。情報管理での大きな負担は、大量の紙記録記録データを保管し持ち出すことが難しく、変更や更新などがあると訂正や差し替えに手間がかかる上、変更後の体裁が不統一になることや、記録や報告書が蓄積して資料が次第に多くなり管理が難しくなることなどの問題が考えられる。したがって、情報管理負担軽減策を整理すると、@利用者にやさしい(ユーザーフレンドリー)な情報技術の活用、A大量のデータをコンパクトにする、B保管したデータを利用しやすくする、Cデータを共有しやすくすることであり、情報管理の負担に目を向けることと情報技術を発展させることのバランス点を、できるだけ負担を緩和する側でとることによって安全管理が機能するようにするということが課題になる。
 負担を緩和するのに有効か見出すためには、最近の情報技術の状況と将来の可能性を探り、これからの船内業務のあり方にどのように適用するかを検討する必要がある。

2 情報技術の現状
2.1 コンピュータシステム
 コンピュータは、かつては企業単位に大型機を設置して専用に開発されたソフトウェアーで運用していたが、1980年代にPCが加わり、性能は指数関数的に向上して中央処理装置(CPU)の処理速度は3GHz、主記憶装置(メインメモリ)の容量は1Gバイト、内蔵の補助記憶装置は300Gバイト、補助記憶装置の記憶媒体はDVDで4.7Gバイトに達しており、低価格化も進んでいる。この性能は鮮明に印刷できる画像データとしてA4サイズで圧縮しなくとも50Kバイト程度でありDVDに10万枚が収まるので、船内で必要な資料の大半が収納できる環境になっている。
 PCのOSとしてのソフトウェアは1980年代にMS-DOSが普及して、簡易な専用言語でハードシステムをコントロールすることが出来るようになり、ワードプロセッサ、表計算、データベース、作画などエンドユーザーが使用できる多様なアプリケーションソフトが開発された。画面のカーソルを移動して命令をコントロールできるOS(MAC、Windows)の開発によって、MS-DOSのみに準拠した数多くのアプリケーションソフトが淘汰され、今では数えるほどのソフトが圧倒的なシェアーを占めるに至っている。アプリケーションソフトは上記の表計算等に加えて音声や画像を操作するマルチメディアソフトが発達し、従来型のアプリケーションソフトとマルチメディアとの連携が進みつつある。
 OSとアプリケーションソフトは密接な関係があり、OSの機能を駆使した構成で操作に共通点が多い。プログラムが公開されているOS(例えばLinux)の普及やネットワーク技術を駆使してOSを共通化する技術が開発される可能性はあるが、従来の有力なOS及びアプリケーションソフトで蓄積されたデータは膨大になっているために、将来のソフトはこれと互換性があるものでなければ普及しないだろうと予想される。
2.2 通信技術
 PCの普及は情報処理の分散化を促すとともに、データや機器を共用するネットワーク化が図られるようになった。情報伝送に一定の決まりTCP/IP(Transmission Control Protocol / Internet Protocol)を伝送する情報の単位(パケット)に付加することで、コンピュータ間のローカルエリアネットワーク(LAN)や世界的に公衆回線などを利用して伝送するインターネット(World Wide Web:WWW、単にWebともいう)が可能になった。インターネットの情報の伝達は情報分散システムであるハイパーテキストのWWW技術が利用されている。WWWはインターネットに情報を送るWebサーバと受け取るWebブラウザからなる。Webブラウザは情報閲覧の仕組みであり、全てのPCに共通に利用できる簡易言語で現在は、HTML(Hyper Text Markup Langage)によって造られているが、さらに便利なXMLの普及が予想される。
 一般にインターネットでは公衆電話回線や光ハイバーなどバックボーン・ネットワークを利用することになるが、初期は電話回線のアナログ信号をデジタル化するモデムを介したダイヤル接続であったが、パソコンからTA(Terminal Adapter)とDSU(Digital 
Service Unit)を介して電話のデジタル回線サービスを利用するISDN(Integrated 
Services Digital Network)によって回線使用料は極端に低額化した。最近はこのシステムを高性能化したxDSL(XDigital 
Subscript Line)方式のADSLなどによって高速化と大容量化を可能にし、上り回線で 512kbps 〜1Mbps (bps:bit per 
second)、下り回線で1.5Mbps〜45Mbpsを可能にした。船舶ではこのような通信回線を使用することが出来ず、外航船ではインマルサットの4.8Kbps〜9.6Kbps、内航船では携帯電話の9.6Kbps〜28.8Kbps(最近の高速化はめざましく、100K bpsを超えるものも出始めている)を利用することになる。これは陸上の数年前の状況であるが、文字データでは十分な速度であり、いずれ高速化はさらに進展すると予想される。
2.3 データベース技術
 データベースは、データ構造といわれるデータを関連づける仕組みによって性格が異なる四つのタイプがある。
 第一は、データの関連が一対多の親子関係のピラミッド型になっている階層型モデルである。階層型データモデルはデータの対応が単純で分かりやすい最も基本的なものである。現在のOSで用いられるルートディレクトリ(フォルダ)を「入れ子」状に作成してデータシートをファイル単位で格納し、その親子関係の中でデータ交換する方法はその典型である。ただし、「入れ子」状の親子関係を厳密にしておく必要があり、親子でつながった一つの局面でしかデータをとらえられず、別の局面に対してはまた別のデータベースとしなければならず、同じデータを含む独立のデータベースがいくつも必要になる。
 第二は、データが複数の親と関連を持つことができるネットワーク型モデルである。あらかじめ関係するデータベースの変数を階層型に関連づけておいて、階層型モデルのように単一の親データベースとの関係ではなく、複数の親データベースとデータ交換できる。その仕組みをデータシートのセルに設定するかプログラム機能で設定する必要があり、変数の関連づけの変更はしにくい。
 これら二つのタイプのデータベースは、現在、たいていのエンドユーザーが利用できる表計算ソフトを活用すれば容易に導入できる。
 第三は、データがグループとして関連づけられるリレーショナル型モデルである。データ及び変数の内容や性格を識別できる記号(識別子)を与えておくことによって分類や関連づけを行う。識別子の組み合わせはデータの利用時に目的に応じて自由に選択でき、階層型にもネットワーク型にもなるし、階層にとらわれないグループとしての操作など目的に応じた自由な操作が可能である。また、識別子をCPUに呼び出して処理し、データ本体は必要なものしか呼び出さない仕組みになっているために記憶容量の節約と高速処理が可能である。現在のデータベースシステムの大半はこのタイプである。
 第四は、データのグループの関連のあり方によって関係づけるエンティティ・リレーションシップ・モデルがある。エンティティ・リレーションシップ・モデルには、ソフト自らがデータの関連づけを探るという人の作業の一部を代行するエージェントソフトなどがある。ただし、関連づけの仕組みはあらかじめプログラムで造らなければならず、それをサポートするアプリケーションはまだ一般的ではない。
 上記のデータベースのうち第二に示したネットワーク型モデルは、PCの初期から開発された表計算ソフトで可能なことから、会計や顧客管理や資料リストのデータベースとして利用されてきた。第三に示したリレーショナルデータベースは、PCレベルのシステム開発が進んでおり、操作するための「構造化問い合わせ言語」(SQL:Stractured Query Language)の国際規格がありシステムの共通性が保たれている。これらは既存のデータを利用できるので、ここしばらくは併存しつつ次第にリレーショナルデータベースに移行していく期間が続くと予想される。
2.4 文書の電子化 
 契約書や証明書など多くの文書は紙で一定期間保存する必要性があり、これらの保管スペースと資料管理に多大な費用を要している。また、分社化した会社や他社との業務提携などの資料が増え、次々に導入されるOA機器の操作手引き書等の資料が増えている。一方、コンピュータのメモリが格段に安価になり、ローカルエリアネットワークやインターネットの情報通信技術が普及し、電子化された情報の活用が容易になった。このような状況から、紙の資料を電子化する動きが活発になっている。
 IT技術の社会的活用は、米国で動きは早く、それを追うように我が国もIT技術の推進に関する国家的プロジェクトに取り組んでいる。その一つの柱として総務省と経済産業省は、文書の電子化による文書管理業務の効率化を掲げ、「民間事業者等が行う書面保存等における情報通信技術の利用に関する法律」(略称、e−文書法)を制定した。法律で義務づけられた財務諸表や医療カルテなどを、電子的に作成した場合や紙文書を電子的な画像ファイルにした場合にも公式な文書と認めるものである。本規定は通則法において課している規定すべてに特例規定として係り、各法令の改正を必要とせず、電磁的記録による保存が可能となる。具体的に該当する規定は省令で定めるが、一般に@緊急時に即座に確認する必要があるもの:船舶に備える安全手引き書等、A現物性がきわめ高いもの:免許証、許可証等、B条約による制約があるものはe−文書法の対象から除外される。
 文書を電子化し、作成責任者と作成時期を明確にし、その後変更がないことを証明する手続きを決め、CDなどの確実な記憶媒体に保存して文書保管と検索機能などにより閲覧を効率化することができる。最も汎用性がある紙文書をスキャナによって電子化する方法を財務諸表を例に、電子文書の業務フローを示すと図表4のとおりである。
 スキャナ(フラットヘッドまたはシートフェッド)で一定水準以上の機能(診療録で300 dpi、256階調カラー)で読みとる。代表的なファイル形式はアドビシステムズ社開発のPDF、アルダス社開発・アドビシステムズ社改訂のTIFである。読みとった文書データに公開鍵暗号基盤などを利用した秘密鍵と公開鍵の一対のデータによる電子署名を付し、信頼できる第三者機関に文書データのハッシュ値(入力値から算出される唯一値)を送付してその時刻の証明(タイムスタンプ)を受ける。その後、この証明が必要な期間の保証の維持、文書データやこれら保証の管理が主な業務のフローである。

 検索閲覧システムでは可視性と見読性が求められるが、基準を満たす読み取りを行えば、一般的なモニターやプリンターで十分可能である。検索機能や電子帳簿システムにおける相互の関連性の確認は、電子文書の保存先、作成・保存・証明などの履歴などを確実に管理し、必要に応じて的確に閲覧や印刷ができるデータベース機能が必要になる。
 文書の電子化の流れはここ10年間ほどに飛躍的に発達した会計ソフトや、文書を鮮明に画像として再現できるスキャナー機能などの普及が急速に進んだためであり、これからさらに加速されるであろう。現段階では、法律に係る文書について電子文書を容認するためには省令による指定が必要であるが、米国やEU諸国ではすでにこの流れが始まっており、次第に世界的に拡大すると予想される。海事分野では、例えば現在船員の雇入れ公認手続きは所定の文書に必要事項を記して運輸局に出向いて行っているが、この制度が導入されればインターネットでの手続きも可能になる。同様な文書は数多く、この制度は早晩実現されるであろう。
2.5 船内情報システムの可能性
 人事管理や船舶管理が分社化し、少数の陸上スタッフが大量の人材や船舶を管理する状況と、ISMコードやその他に関する資料や報告をシステマティックに管理する必要性から情報支援の動きが起きている。船舶情報システムの調査結果と情報技術について最近発表された3つのシステムの内容を紹介して、将来の方向性を検討する。
 船でのコンピュータ活用のための検討は、1960年代末に航海訓練所の練習船青雲丸にはじまり、制御機器や航海計器に組み込まれた専用のシステムとして普及した。
1980年代に汎用型のPCが発達し、誰でも利用できる状況になり、コンディション計算や船用品管理などに使われ始めた。船内給食や応急措置や海上労働情報提供などへの情報技術の応用(海上労働科学研究所)では、リレーショナルデータベースはニーズに合わせて設計されたものであれば実用の可能性があること、インマルサット通信は手続きに時間を要してロスタイムが多く費用が高くなってしまうが将来の発達によって利用できる可能性があることが指摘された。
 船舶情報システムの調査(海技協会)は、船舶での運航者オリエンティドな情報技術のシステムの要件として以下の事項が指摘した。
・情報の完全電子化
・マルチメディア対応
・既存システムとのシームレスコネクション
・適度な分散処理とし、運用管理者の障害時の負担軽減
・綜合システム化
・機能フレームの共通化、パッケージソフ
 トウェア化
 また、綜合的な船舶情報システムとして必要な次の5つの機能が指摘された。
・船舶機能
(情報収集、状況認識、異常判断)
・情報綜合機能(情報収集、環境認識、意思決定、命令支援、実行支援)
・データベース機能
(情報検索,情報加工,情報蓄積,レポート)
・ユーザインターフェース機能
(入出力支援,可視化支援,シミュレーション)
・通信機能
(船内通信、船外通信、暗号処理)
 そして、計画段階にある衛星通信の船舶への導入、インターネット活用の普及、電子海図最新維持データ提供、港湾物流関係システムの発達状況が紹介された。
 造船分野や船舶情報システム分野から整備や船舶管理の支援システムが市場に出始めている。いずれもモジュールに分割され、保守管理、ログ管理、ISM文書管理、データ管理、帳票作成、通信システムなどの機能がリンクされている。
 各システムの特徴は、ORCAシステム(ORCA社)は船舶管理のトータルシステム的であり、船費や船員管理が充実しており、システムサポートや教育訓練などの事業に結びつけている。Ship Operation Management Tool(エス・イー・エー創研社、以下、SEAシステム)は機関保守整備を主としたものでありログ機能が充実しており、他にも顧客のニーズに合わせたシステム開発の事業に結びつけている。三菱船内業務管理システム(三菱重工業社エンジニアリング部、以下、三菱システム)は同じく機関保守整備を主としたものでありその発注支援が充実しており、造船所の保守整備受注や機材を供給する事業に結びつけている。以上のように各システムは自社の事業展開に必要な情報をもとに利用者を支援する形にアレンジしたものといえる。
 全体として高価であり、導入して実用に至るにはアレンジ、指導、訓練が必要であるため乗組員の負担を含めた導入コストを相当に覚悟する必要がある。そして法規などの変更に従った更新がサポートされるが、これらすべてに費用が伴うことになり、システムのランニングコストも予定する必要がある。
 本調査研究のテーマの重要な課題は、どの程度、船内情報負担軽減に寄与するかである。確かにデータをリンクして保管管理や書類作成の負担軽減策はとられているが、まずシステムを使いこなす負担が予想される。陸上側では標準的情報がリアルタイムに現場から上がる便利さはあり、導入実績もあるといっても、その陰に初期の導入や変更への対応や、現場で日常的におこるデータ入力にどれほどの努力を要したか知る必要がある。これまで簡単な報告を陸上が入力していたものを現場が入力する、いわば現場が情報端末化するといった苦情が起こらないようにする必要がある。課題を整理すると以下の項目があげられる。
・船内業務に集中した簡素なシステム
・導入コストとランニングコストの軽減
・船内事務作業者の習熟負担の軽減
・現場での入力負担の軽減
・陸上データによる船内事務の支援

図表5 市販されている船舶情報管理システム


B 船内業務に必要な情報の管理

1 船内業務の種類
 船員制度近代化委員会(以下、近代化委員会)は、25名乗り組み体制の従来のコンテナ船、鉱石船、タンカーの就労実態調査行い、船内作業の基本的作業工程の要素を分類した。その後近代化船実験によって省力化の試みがなされたが、混乗船になって再び23名前後の乗り組み体制に戻っており、船内作業の大勢は基本的にあまり変わらない。ただし、外国人の乗組員構成になったことによる労務管理の変化や幹部船員と部員との知識・技能格差の増大、GPSやGMDSSなど新しい航海計器や通信設備の導入による業務内容の変化、ISMコードの管理体制による事務作業の増加などがあり、業務の簡素化と複雑化が同時に進行し、幹部職員の担当作業の増加が指摘されている。この章では従来の船内業務の分類を概観し、情報に関係する業務の詳細を把握する。
1.1 従来の業務分類 
 近代化委員会は、海上貨物輸送に必要な船内作業を一次、二次、三次の作業に分類し、さらに作業が同じ種類のものをユニット作業とした。一次分類は当時の職別の作業系統ではなく職務を水平にみて、以下に示すように、@〜Bの管理(運航、技術、一般)、C以下の個別性の強い業務として当直、保守、その他(貨物輸送、サービス、渉外)とした。
@運航管理:法的あるいは諸契約や規定にもとづき、船舶を運航するために必要な管理業務
A技術管理:船体、プラント(機関諸機械、通信機)の性能維持を図るためや自船以外の一般的技術、技能水準の維持のための管理業務
B一般管理:船内における安全衛生、教育、労務等の日常一般の管理業務
C当直業務:船舶の運用を行う業務
D貨物輸送:貨物の揚積み及び運送保管に関する管理と業務
Eサービス業務:船内生活を維持するために行われる業務
F渉外業務:対外折衝に係る業務
G保守業務:船体プラント及び各種機器の整備点検及び補修作業にともなう業務
 ユニット作業は作業内容が同じでも作業対象の規模によって作業量が大きく違う場合や1次〜3次の分類が違うものに属する場合は別のユニットとし、作業を漏れなく網羅したとしている。しかし、職務分掌による当直の服務規程、職務部門別の縦割り船務のために、下位分類にはこれらの分類を含める必要があったとしている。
 この分類は業務が総合的か個別的かによって分けたとしているが、情報管理の観点でみた場合、前者は情報の分析や総合や情報交換などの事務作業、後者は作業標準などの資料や状態の記録の情報を扱う現業に関わる事務作業である。


1.2 管理事務作業
 管理における情報の分析や交換などは、現業における資料や記録などの情報をもとに行うものであり、管理事務作業に情報の大半が含まれる。具体的に二次分類以下とその担当職をみると、運航管理は当直業務、技術管理は保守業務、一般管理はサービス業務と渉外業務を含んでいる。以上には貨物に関する管理が含まれておらず、輸送管理として、貨物の性状、荷役、保管管理などに関する事務作業が甲板部作業に追加される必要がある。


2 船内書類
2.1 本社提出書類 
 船会社が船に課す提出書類は、職部門別に区別し一部は統合して提出する形になっている。各部毎に内容を分けると下表のとおりである。

図表 本社提出書類(省略)

2.2 備付書類
 船内に備付けておくべき書類は、法令で定められた法定備付書類、会社が造船会社や荷主や雇用者との契約等に関して定めた社内規定備付書類がある。この他、入出港値において提出または提示を求められる入出港書類がある。それぞれを分類して整理すると下表の通りである。

図表 法定備付書類
図表 社内規定
図表入出港書類(米国)
(省略)
2.3 SMS書類
 ISMコードは安全管理システム(SMS)を義務づけており、Port State Controlの検査対象になる。その手引き書から、安全管理記録と各種の報告書群、安全管理に必要な業務のチェックを整理すると以下の内容がある。

図表 SMS記録・報告書
図表SMS書類・チェックリスト
(省略)

2.4 内航海運の事務 
 内航海運において実際に行った事務作業を、約140隻の約1千人から3日間(延べ約 
3000人日)調べた結果を整理すると下表のとおりである。

図表 内航海運における事務作業(省略)
3 船内情報システムのための事務作業分類の見直し 
3.1 業務分担の変化 
 外航船の船内業務のあり方は、先に記したとおり基本的には近代化船実験前とおなじとしても、短期契約の途上国船員の増加、GMDSSの導入、ISMコードによる管理などの変化や、船舶管理や人事管理が分散した関連会社が行うという変化が起こっている。内航海運では省力化が進んでいる。このような状況で従来通りの業務を課すならば、幹部船員が作業に直接携わる機会や情報を管理する機会が増えることは必然である。例えば一等航海士は、従来でも8時間の当直業務以外に貨物に関する書類整備などを、実際には一部当直中にするにしても、所定の勤務時間以外に求められていた。
 通信設備の自動化(下表参照)によって通信士による当直が不要となり、一般的に航海士が担う場合の資格では整備をしないことになった。しかし、確かに情報機器の導入によって省力化した側面もあろうが、通信設備の管理業務はあるし、種々の電子機器が増えるに連れて、情報機器を管理する業務が発生している。しかも、その導入と運用は発展途上にあるために、皆が操作出来る状況になく、操作に長じた一部の人に負担がかかる可能性がある。また、これまで通信士が行ってきた入出港手続きの書類整備や通信業務、官憲の応接などが他の職員に求められることになった。

図表 GMDSSと従来の通信技術の対比(省略)

3.2 情報活用からみた船内事務作業の
   運用
 実際の船内業務では、誰が、いつ、何を、どうするか(3W1H)が明確でなければならない。これまでみてきた近代化委員会の分類は、業務が総合的か個別的か、間接的か直接的かを重視しており、分類と担当者の関係は錯綜している。船内文書の資料では、業務と文書の関連性や一貫性が希薄である。
 業務の分類を業務の担当者、対象及び文書の関連について整理すると、業務担当者(「誰」)は、職務分掌が乗組員の職名に対応して決められており、管理業務の一覧に担当職名が明記されている。ただし、複数の人が管理責任の上下や大小、業務に従事する時間帯に応じて、部分的に内容を分割して担っている場合や、船舶衛生管理者のようにある職名の乗組員が特定の職務を兼務している場合がある。
 業務の時期(「いつ」)は、船舶の状態からみると、最も時間が長い航海、その前後の入出港、荷役を含む停泊、ドックに分けられる。その場面で求められる情報はそれぞれに特有なものがあって互いに関連し合っているものが多いことから、時期は情報管理作業の実施時期ではなく情報が必要な時期によって分類した方がよい。
 業務の対象(「何を」)は、管理すべき情報であるが、その情報が必要となる対象によって決まる。対象は設備など直接的な対象である場合と、貨物など直接的な情報に荷役業者など間接的な対象が加わる場合がある。
 業務の内容(「どうするか」)は、状態や状況を反映する情報、他の情報との関連づけなど情報に特有な多様な内容が考えられる。大きく分けて保管して参照する情報、記録する情報、計算や分析する情報、報告する情報などがある。

図表 船内業務分類の新しい枠組み

SMS書類
法定備付書類
管理事務

 情報の分類は、以上を組み合わせたマトリックスで表され、情報量の多さはおおよそ3段階(◎:多い、○:中、△:少し)を想定すると、下表のようになるであろう。一枚目の表を管理事務分類にみた事務作業を含むものとし,図の二枚目をその後にみた法定備付書類の対象の表とすると、一枚目の一部は二枚目の法定備付書類の対象となり、事務作業の対象ではないものが若干加わることになる。三枚目をSMS書類とすれば、また同様の関係になる。このような分類の関係から必要な事務作業や文書を共通にすることができ省力化できる。このような手続きは現在も適宜行っているであろうが、情報技術によって整合性と迅速さを増すことができる。
 情報技術活用を確実にするためには、確かな情報技術もつ者が行うことが望ましく、疾病災害の応急処置や薬品の管理などを行う衛生管理者のように、情報管理を責任持って行う担当者を指名することが望まれる。

C 船内情報管理システムの具体策

1 情報管理システムの方針
1.1 システムのねらい
 安全管理のための情報は豊富になっている。しかし、その管理に費やす時間が多くなって実際に点検や整備に費やす時間が減ったり、多すぎる情報で的確な情報の収集や選択に時間がかかるなら、安全確保のための情報とはいえ、その有効性は疑問である。この無駄な時間をインシデント報告やインシデント情報を現場にフィードバックする時間に充てる方が安全に寄与すると思われる。無駄をなくすには、入力の負担を減らし、情報を整理して保管し、出力と更新が容易にする情報管理の負担軽減策が必要である。 
 先に示した3つの船舶管理システムは、それを目指したものであろうが、あまり普及しているとは言えない状況である。その主な原因は、開発、運用および管理の全体にわたって費用負担が大きいこと、現場船員が利用できるようにするまでの導入に指導や研修が必要であること、さらには汎用的で各社が必要としない機能も含まれていて各社向けには特注を要するなど幾多のマイナス要因があるためと思われる。
 最近、プログラムによって自由に操作できる文書作成や表計算やデータベースのアプリケーションティソフトが普及し、システムエンジニアやプログラマでない一般の実務者が自らの業務に相応しい自前のシステムを作るケースが増えている。船員もこれまで天測計算やコンディション計算に自分なりプログラムを組んだり、文書管理のシステムを作っているケースもあり、既に多くの文書や記録簿などがコンピュータで扱われている。前述の問題提起や情報社会の問題や安全管理と情報管理を考慮したシステムのねらいの観点から、一般的アプリケーションソフトや既存のデータを活用することで速やかに普及して実際に有効にすることを重視し、これまで用いた情報システムで、誰でも構築できる容易で簡素なシステムについて検討する。
 船舶情報管理システムの調査では、必要とされる機能は@ユーザインターフェース機能(入出力支援、可視化支援、シミュレーション)、Aデータベース機能(情報検索、情報加工、情報蓄積、レポート)、B通信機能(船内通信、船外通信、暗号処理)、C情報綜合機能(情報収集、環境認識、意思決定、命令支援、実行支援)、D船舶機能(情報収集、状況認識、異常判断)であるとされた。このうち、現在すでに利用されているのは、市販アプリケーションソフトを用いた@とA、Eメールを用いたBである。当面はこの範囲を充実させ

情報をコンパクトで扱いやすく活用しやすくすることで、かなり情報管理負担軽減が可能であり、具体化しやすく実効的であると考える。
1.2 システム開発から運用のステップ
 システムの活用には開発、運用、管理のプロセスがある。前項のシステムのねらいにしたがって、それぞれの段階を検討する。
 第一段階の開発は、目標設定、業務分析、設計、プログラミング及び点検の順で行われる。目標設定はシステムに期待する役割を定めることで、実際の業務の何を支援するかを決める。業務分析は実際の個別業務の内容と関連性を調べて業務をモデル化する。設計では、このモデルを反映したシステムを構成する。プログラミングはこのシステムを実行するためのアプリケーションソフトの利用法やプログラムのコードをアレンジする。点検では、実際の業務の流れで作成したシステムを試用して整合性や操作性を確認する。以上、開発の基本的進め方は従来の情報資源やシステムを活かすボトムアップであるが、全体の構成が簡素で整合性を取りやすくするためにトップダウンで基本的枠組みを作り、従来のシステムを組み込む。
 第二段階の運用は、導入とデータ蓄積とデータ整理が大きなウェイトを占める。既存のデータを利用できるものほど導入しやすく、新規のデータ蓄積が容易でデータへのアクセスが手軽で馴染み深くシンプルなシステムでのほど運用の負担が少ない。
 導入は、既に多くの情報システムが運用されているので、システム間の融通性が高ければ容易である。広く普及しているシステムと容易に交流でき、単純なプログラムやデータ形式を採用することで、他のプログラム言語への転換や、他のユーテリティソフトでの読み込みや書き出しができる。まず、従来の保存フォルダを業務のモデル化に沿ってフォルダ群を樹木状の階層型に構成してファイルを格納する従来の方法をシステム化し、次のステップの準備とする段階的取り組みでシステムの連続性(シームレス)を保つ。
 蓄積は、入力のためのデータ形式や書式があらかじめ決めてある場合はそれを利用して、既存の形式にそのまま入力するか、別に入力したものを既存の形式に変換してデータを追加する。例えば船用品、整備計画、運転記録、会計など頻繁に行われる定型的な作業記録は電子ファイル形式が整えられているのでそのまま入力できる。ただし、発達し続けるPC環境に書式がそぐわず使いにくいものになってしまうことや、システム間の互換性がなくなってしまうことなどがあるので、汎用性のあるテキスト形式や画像形式で保管することが望ましい。新たに作成しなければならない場合は、書式を設計するか、資料や紙文書を画像としてスキャナーで読みとった書式の記入欄にデータを直接入力したりデータベースとリンクする領域を設けることによって電子文書化できる。頻繁でない作業や公的文書などは電子化されにくく、スキャナーを用いた電子化は有効である。
 第三段階は管理であり、情報の保管、メインテナンス、セキュリティーである。データそのものの正確さやデータ相互の関連性の整合性を維持すること、データや管理システムに手を加えた履歴をたどることが重要な作業になる。
 保管は、増え続ける情報から必要な情報を取り出すために情報を的確に表現すること、取り出す手続きを手軽にすることが重要である。その前提として対象となる情報自体を的確で分かりやすくする必要があり、それには情報内容が業務に有用なものに絞り込んでおくこと、その内容を手短に表した圧縮した情報にすること、整理して保管することである。次に取り出す側の課題として、情報の選択内容が的確に表されることと、それを元に手際よく情報源にアクセスできることである。
 メインテナンスで必要なのは、変更すべきデータ部分にアクセスしやすく、変更の入力が容易で、変更した履歴を管理することである。変更部分へのアクセスは、変更を要するファイルを呼び出して、変更部分のデータにジャンプするわけであるが、これを自動的に行う方法があれば操作は簡単になる。履歴は情報の作成、閲覧、更新の時期と更新内容をたどることである。先に見たとおり船内業務や関係する制度は多様で変更も多いため、それらを全てカバーするシステムは膨大なものとなり、その変更も頻繁になる。これをいかに効率的に行うかがシステム導入の実現に大きなウェイトを占める。
 セキュリティはインターネットに解放しているシステムでは難しい問題であるが、履歴管理によって前の状態に遡ってから復帰する対応も考えられる。
1.3 基本的構成
 船内の業務は運航に関連する諸業務を所定のとおり実施し、その状況を証明して収益に結びつけるのが基本で、それには多くの情報を必要とする。また、現場で必要な支援や将来の対処法の確立や技術革新には、現場から業務実施状況をフィードバックする必要がある。このような情報には、船舶と乗員などの状態を示す基礎的な資料(基本情報)、必要な業務を所定の実施法に従って行うための情報(マニュアル情報)、業務の実施状況を共有するための情報(記録情報)、運航や貨物や保守などに関して外部の求めに応じたり外部に要求するために発信される情報(報告情報)、及びこれらの情報を管理する情報(管理情報)があり、基本情報と作業標準は記録の基礎、記録情報は報告情報の基礎、管理情報はこれらを関係づける。
 情報技術はインターフェース機能、データベース機能、通信機能からなる。
 @インターフェース機能
 情報の入力では、情報の対象となる文書やデータの電子ファイルが既にある場合はそれを利用するアプリケーションソフトの機能、電子化されていなければ紙情報をスキャナで読み取る機能がインターフェースとなる。このインターフェースは、それぞれの機能で手入力したりデータベースから自動的に入力する領域を設計して便利なものにすることができる。
 Aデータベース機能
 データベースは、業務分析によって活用すべき情報の対象(エンティティ)とデータとして必要な属性(アトリビュート)を特定し、相互の関連づけ(リレーション)を行い、テータの選択や補完を行う。データベースは、上記の基本情報その他すべてが情報の対象で、それにインターフェースを結合したものである。
 B通信機能
 通信は一般にLAN及びインターネットで伝送する機能であるが、データベース機能で利用されるすべての情報が関連づけられるには、所定の保管場所まで管理するシステムが必要であので、ここでは通信と保管と履歴を管理する機能と考える。
 これらはインターフェース機能を介して他の二つの機能機能が活用されることから、下図の関係で表すことができる。ここで矢印は各機能のウェイトを示す。

図表 船内情報と情報技術の関係

 開発環境は、誰でも導入できる当面の支援策として、業務の目的別に分けた小規模システムを考え、コンピュータシステムは単体のPC(スタンドアローン)、ソフトは一般に普及しているOSとアプリケーションソフトを利用した方法を検討する。
 スタンドアローンPCとして最も普及しているシステムはOSがマイクロソフト社の 
Windowsでハードウェアはそれを搭載するPCである。そして最も普及しているユーティリティソフトは、文書形式の情報についてはワードプロセッサソフトであるマイクロソフト社の Word、データ形式の情報は表計算ソフトであるマイクロソフト社の ExeclとAccessであり、データベースとしても利用できる。これらはプログラム言語 (Microsoft Vidual Basic for Applications Edition:VBA)で操作できる。また、画像情報は画素情報を少なくし編集もできる画像処理ソフトであるアドビシステムズ社の Acrobatが普及している。
Word、Execl、AcrobatのアプリケーションソフトはPCにあらかじめ組み込まれて販売されているのがほとんどで、利用実績は豊富である。新たなソフトが開発されたとしても、この資源を無視した新種のソフトが普及する可能性は少ないと考えられる。また、これらのソフトは各形式のファイルを相互に転換し合ったり、一部を取り込んだりすることが可能であり、融通性に富んだソフトであるため、別のソフトによる情報も取り込みやすい。とはいえ、システムの変更や開発者の移動などがあるので、システムがPC環境に左右されにくく安定し、コンパクトで分かりやすいほどよいことは当然である。
 上記の方針に沿ったできるだけ単純な方法として、表計算ソフト(Excel)を用いて、各作業が一画面に表示できる表と簡単な少数の命令語による単一プログラムのシステムを検討する。プログラムを短く簡単にするために、表の升目(Excelでは、表をシート、表の升目をセルと称す)に作業内容や変数を配し、それを利用するプログラムを少なく簡単なコードで表現し、選択したセルのダブルクリックだけでコントロールすることをえる。

2 システムの機能とその仕組み
2.1 システムのコントロール
 システム全体の作業フローを管理するため、表計算ソフト(Excel)のVBAプログラムを活用する基本システムを設ける。作業の種類を@新規に文書を作成する場合は「新規」、A既にある文書を利用する場合は「開く」、B文書を作成したり開いたりせずに整理する場合「管理」に分けて、それぞれに以下のような具体的な作業に進む。
@新規:Word、Excel、Acrobatのうち選択されたソフトを立ち上げ、Excelにあらかじめ作成した保存先のフォルダの表を開く。作成し終わったらその表の所定のフォルダを選択して保管する。
A開く:Excelにあらかじめ作成した保存先のフォルダの表及び文書ファイルを分類した一覧表またはキーワード検索する表のうち選択されたものを開く。
B管理:Excelにあらかじめ作成した保存先のフォルダの表及びEメール送受信を要する場合はそのための表を開く。
 方法は、セルに配した作業名を選択してダブルクリックすると、「新規」の場合は作業に利用するアプリケーションソフト(10列目の新規作業ソフト)が立ち上がり、「開く」と「管理」の場合はその作業に用意されたExcelのシート(11列目に保存したフォルダのExcelシート)を表示してそれぞれの作業に移る。
 プログラムは分かりやすくするために、Excelのワークシートのコード画面を開いて、ダブルクリックのイベントで動作する一つのコマンド群を、できるだけ一画面で見渡せるように記述する。その内容は資料2(1/6)に示す(以下、同様)。

図表作業選択画面(作業名をダブルクリック、資料2(1/6))

2.2 電子ファイルの作成(新規)
(1)新規作成
 新たに文書を作成する場合、Wordを起動して必要な情報内容(属性)を入力し、作成後、後述の管理システムに移って他の情報と関連づけるためのデータベース及び保管先を決めて保存する。
 文書に記入欄があって、記入内容がデータベースから取り入れられる場合には、記入位置に、単一の場合にはテキストボックス、複数の場合はデータベースのセルをリンクして挿入すれば、データベースから自動的に値を変更できる。
 文書の取り扱いに説明を要する場合には、メモ欄を挿入して参照することができる。メモを音声で入力すれば、作成ではキーボード入力の手間が省け、後に参照するときも文字を読む手間が省かれる。
(2)紙文書の電子化
 紙文書を画像で取り込む場合、Acrobatを起動して、ファイル−PDF作成−スキャナ−スキャンの順で選択するスキャナが稼働して紙資料を読み込む。連続ページの場合はシートフィーダーが利用でき、業務用複写機で高速(例えば、リコーImagio Neo310で約10ページ/分)で読み込むことができる。
 報告書式のように一部を変更してそれを利用できる場合には、画像処理ソフト(マイクロソフト社のペイント)や文書作成ソフト(Word)に貼り付けて、変更部分を切り取るか変更部分に空白枠(テキストボックス)を設け、枠内にデータベースの値ならばその値のセルをリンク貼り付け(セル選択→編集・コピー→テキストボックス内選択→編集・形式選択貼り付け→リンク貼り付けチェック→OK)を行うことによってセルのデータ変更が自動的に反される。また、電子化されたファイルを活用しやすくするために、文書の表題や概要や目次のページを文字認識機能(OCR機能)で画像を文字化して利用することもできる。
(3)文書のデータベース化
 文書データベースは文書を電子化して保管・管理し、記録データベースは状況を記録したデータ群を保存し、加工データベースは文書やデータを報告に必要な形に構成する。
 文書データは、Excelシートの1行から、所在するアドレス、PC、フォルダ、ファイル名、タイトル、分類を入力し、11行からは文書にある目次と概要(または序文や要約)をコピーする。スキャナで読み込んだ文書の場合には、その部分を文字認識ソフト(例えば、「読んでココ」)で文字化した結果をコピーする。
 記録データは、10行目までは文書データと同じで、11行から記録項目を並べ、列に記録を追加していく。
 加工データは、10行目までは文書データと同じで、11行から加工のタイプと加工に必要な文書や項目を指定する。
2.3 データベースと文書管理
 既存の保存ファイルを呼び出す作業は、一般にはファイルを指定して開くが、その作業はフォルダやファイルが多くなると手間取ることになるために、その作業を支援する。
(1)フォルダから選択
 データベースの親フォルダ群を表示し、順次選択されたフォルダに含まれるファイル名とタイトルを表示され、目的のファイルを選択すると、そのファイルを開く。
図表文書画像に記入欄(データベースとリンクする点線部)を設けた例

図表 文書データベースの例

図表フォルダ選択の画面(資料2(1/6))

(2)ファイル選択と管理
 文書データベースの一覧を分類、作成時期、キーワードなどを表示し、選択されたファイルはタイトル・目次・概要が表示され、内容を確認してファイルを選択すると文書または記録データが開く。選択されたファイルの保管や削除などファイル管理機能もある。

図表文書選択の画面(資料2(2/6))

図表 履歴管理の画面(資料2(3/6))

(3)履歴管理
 ファイル管理と同様にフォルダとファイルを選択すると、タイトルと作成日、変更日、閲覧日が表示される。
(4)データ選択
 複数のデータベースに共通の項目がある場合に、そのある項目に該当するデータを抽出するものである。その項目の値に条件を付ければ、検索データベースになる。以下の例は、X,Y,Zの三つのデータベースに、項目a,b,cはいずれにもあり,項目x,y,zは一部がないものから、項目bの値があるデータを抽出したものである。タグは項目名とデータ値を記号化したものであり、タグの組み合わせでデータを管理するリレーショナルデータを構成する。

図表 データ選択の画面(資料2(4/6、5/6))

(4)メール管理
 メール作業は、送受信するファイルに下図の送信用シートを加えておき、フォルダ、ファイル、アドレスを指定し、「送信」をダブルクリックするとメールソフトのOutLookに送信メールができその添付ファイルになる。通常どおりにOutLookで送信操作をすると指定のアドレスに送信される。
 受信側ではこの添付ファイルを開き、「保存」をダブルクリックすると、指定のフォルダに指定のファイル名で保管される。
 以上のインターネットの方法はマイクロソフト社のOUT−LOOKブラウザを介して行う例を示したが、同社のリレーショナルデータベースのアプリケーションソフト(Access)で直接行う方法もある。その一例として、インターネット機能の他、上記の文書管理機能を備えた Accessプログラムを昨年度に開発した。

図表 メール管理の画面(6/6)

おわりに

 船会社の船舶管理会社や船員派遣会社への分社化、安全管理制度の国際標準、GMDSSの導入による通信士の削減などによって、船内事務作業の大幅な変化が続いている。このような事務作業を情報管理負担の問題と捉え、情報技術の活用による負担軽減を本研究の課題とし、船内で活用できる情報技術をデータ管理を対象に検討した。
 情報技術はPCとインターネットの普及によって誰でも活用できる環境にはなったが、反面、データの氾濫やソフトウェアーの維持管理の負担などが生じているため、これまで活用されたデータ資源を活かし、現場の実務の中で自然に導入できる方法として、市販の表計算ソフトと文書ソフトを用いる方法を提案した。
 この方法によれば、既に利用されている表計算ソフトを用いた船用品リストや文書ソフトを用いた報告書などがそのまま利用できるし、その資源を管理する表計算ソフトによるデータベースで管理することもできる。さらには既存の紙文書を電子化してデータベースのデータとリンクして管理するとともに、文書作成の自動化も可能になる。その実例として最も広く使用されているマイクロソフト社の表計算ソフト(Excel)の簡単なプログラムを紹介し、実務者が自ら作成する方法を示した。参考にして自分なりのシステムを作って実際に活用されれば本調査研究の目的はかなったと言える。
 しかし、この範囲はデータを手際よく操作するというもので、いまの情報技術を十分に活用したとは言い切れない。現場でのデータ管理をなくし、船舶の運航管理に必要な情報はそろっている状態が理想である。管理事務作業を軽減し、安全・効率運航をめざすために、さらなる情報技術の活用を促す必要がある。運航計画が策定されたら自動的に必要な情報が整うことや、運航の実績データは船舶動静や機関運転ログのデータが自動的に収集されることなど、主な課題は以下の点であろう。
・文書、運航ログ等のデータの自動収集
・報告文書の自動生成
・情報提供のためのインターフェース
 これらを実現する情報技術の活用によって、データ操作に係わる作業を減らし、有意味な情報と常に活用される知識を拡充し、安全、運航、保守が十分な余裕をもって遂行できる状態の実現を期待する。

本稿は「情報管理負担軽減と安全性向上に関する調査研究(第2年度)」執筆担当:村山義夫の要約である。


U 船員の疾病要因に関する労働科学的研究

(2年計画、最終報告)

A 目 的

 

 三日以上の休業または死亡を伴う船員の疾病は、毎年二千件前後発生している。現在の船員の年齢分布を考えると、若齢船員の大幅な採用がない限りは、高齢化がすすみ、中高齢船員の活躍が期待されている。船員が健康に長く働ける事ができるためには、より有効な疾病の予防が必要である。それには、健康診断などの医学的対応の他、就業環境や、作業条件、食事等の生活環境全般の向上が必要である。船員の労働環境は船内環境、漁撈種類、航海日数、操業方法が船種によって大きく異なっている。疾病対策に当たっては、これらの条件の違いに対する疾病の発生状況を詳細に、分析する必要がある。船員の疾病要因を知るには、年齢要因などにも考慮しながら船種毎などにわけて、疾病を詳細に分析し、特徴をとらえることが必要である。そこで国土交通省に届けられた、昭和61年〜平成12年まで発生した疾病約五万件のデータを、時系列や、項目毎に統計解析できるように、データベースを作成する。医師などの専門家からの意見を得ながら、疫学的な観点から、船種や年齢等の因子と、疾病との関連を分析する。さらに、アンケート調査により、船種毎に就労体制、運航や操業状況、船員の就労実態、生活習慣などを調べ、疾病の背後要因について検討し、船員の疾病の予防、対策を考察するための基礎的な研究を行う。

 本事業は()海上労働科学研究所と、()船員保険会、東京海洋大学との共同研究である。

 

B 方 法

 

@調査方法

Breslowらが、身体的な健康状態と関連すると報告している7つの健康習慣、@睡眠、A朝食、B間食、C肥満、D身体的な運動、E喫煙、F飲酒をもとにアンケートを作成し、社団法人日本旅客船協会の協力を得て就業期間中の生活習慣について質問をした。また、アンケートの結果を前年度調査で疾病分類の違いが見られた、年齢別、職員・部員の職種別、航海日数別に比較した。調査対象は、社団法人日本旅客船協会に平成1610月現

在登録されている船社のうち、船員法対象となる事業所184社、船員3420名である。

A配布回収

 調査票は、研究所→事業者→船員(記入)→研究所の経路をもって、配布、回収した。

B調査票の回収状況

 回収率は58.5%(2001/3420名)であった。配布した事業者のうち63.6%(117/184社)から回答が得られた。

 

C 結果

 

1. 旅客船乗組員の基本属性

 回答者を性別に分析すると「男性」1964(98.2)、「女性」31(1.5)、「無回答」6(0.3)であった。

 回答者を年齢別に分析すると「19歳以下」が6人(0.3)、「2024歳」が115人(5.7)、「2529歳」が219人(10.9)、「3034歳」が263人(13.1)、「3539歳」が227人(11.3)、「4044歳」が239人(11.9)、「4549歳」が284人(14.2%)、「5054歳」が383人(19.1%)、「5559歳」が228人(11.4%)、「60歳以上」が29人(1.4%)、「無回答」8人(0.4%)であった。回答者の年齢は、平均で41.9歳、標準偏差が10.9歳となった。

 「あなたは船員になって何年か」質問したところ、「4年以下」が166人(8.3)、「59年」が238人(11.9)、「1014年」が290人(14.5)、「1519年」が211人(10.5)、「2024年」が227人(11.3)、「2529年」が193人(9.6)、「3034年」が363人(18.1)、「3539年」が240人(12.0%)、「40年以上」が65人(3.2%)、「無回答」が8人(0.4%)となった。回答者の船員経験は平均で21.1年、標準偏差が11.7年となった。

 現在乗船している船舶について質問したところ、「199トン以下」が303人(15.1)、「200499トン」が293人(14.6)、「500999トン」が399人(19.9)、「10002999トン」が321人(16.0)、「30004999トン」が164人(8.2) 50009999トン」が234人(11.7)、「10000トン以上」が274人(13.7)「無回答」が13人(0.6)であった。平均で3512.4トン、標準偏差で4528.8トンとなった。

 船種について質問したところ、「フェリー」が1533(76.6)、「旅客船」が359(17.9)、「その他」が105(5.2)、「無回答」が4(0.2)となった。

航海区域(近海・沿岸・平水)について質問したところ、「近海が」357(17.8)、「沿岸が」845(42.2)、「平水」が755(37.7)、「無回答」が44(2.2)となった。

「乗船している船の乗組員は合計何人か」を質問したところ、「4人以下」が418人(20.9)、「59人」が490人(24.5)、「1014人」が330人(16.5)、「1519人」が113人(5.6)、「2024人」が192人(9.6)、「2529人」が232人(11.6) 3034人」が91人(4.5%)、「3539人」が33人(1.6%)、「40人以上」が62人(3.1%)、「無回答」が40人(2.0%)となった。平均で14.1 人、標準偏差で11.0人となった。

 職員・部員のどちらかを質問したところ、「職員」が1196(59.8)、「部員」が791(39.5)、「無回答」が14(0.7)となつた。

 

 職種について質問したところ、「船長」が330(16.5)、「甲板部」が782(39.1)、「機関部」が662(33.1)、「通信部」が2(0.1)、「事務部」が206(10.3)、「その他」が11(0.5)、「無回答」が8(0.4)となった。

 現在乗船している船の勤務形態は、「日帰り」が521(26.0)、「泊まり」が693(34.6)、「無回答」が787(39.4)となった。

 回答者の身長の平均は169.2cm標準偏差6.0cmとなった。

 回答者の体重の平均は68.6kg標準偏差1 回答者のBMI値の平均は23.9標準偏差3.3となった。

回答者の航海時間の平均は6.0時間、標準偏差8.3時間となった。

 回答者の就業日数の平均は19.4日標準偏差3.6日となった。

 回答者の就業日数の平均は8.6日標準偏差14.5日となった。

あなたの健康状態について質問したところ()1989人の回答が得られた。(回答率99.4)「最高によい」が73(3.7)、「とても良い」が238(12.0)、「良い」が1293(65.0)、「あまり良くない」が361(18.1)、良くない24(1.2)となった。年齢別では、「25-35歳」の人に「最高に良い」の比率がやや高く、経験年数では「15-25年」の人に「最高によい」の比率が高くなる。トン数別では、「199トン以下」の船舶で「最高によい」の比率が若干高い。

 

2 乗船期間中の生活習慣について

【1】睡眠時間は何時間ですか

 睡眠時間について1990人の回答が得られた。(回答率99.5)

「6時間以下」が974(49.6)、「7〜8時間」が991(50.5)、「9時間以上」が25(1.3)となった。年齢別では、「60歳以上」の人に「6時間以下」の比率が低く、経験年数では「40年以上」の人に「7〜8時間」の比率が高くなる。勤務形態では「泊まり」で「6時間以下」の比率が高かった。

2 睡眠時間は何時間ですか/家事労働を除いた労働時間は何時間ですか

【2】家事労働を除いた労働時間は何時間ですか

 家事労働を除いた労働時間について質問したところ、1963人の回答が得られた。(回答率98.1)「10時間以上」776(39.5)、「8時間前後」が1082(66.7)、「6時間以下」が105(5.3)となった。年齢別では、55歳以上の人に「6時間以下」の比率がやや高く、職種別では「船長」に「6時間以下」の比率が高くなる。トン数別では、「5000トン以上」の船舶で「6時間以下」の比率が若干高い。乗船人数別では、「25人〜34人」の船舶で「6時間以下」の比率が若干高い。

【3】 朝食は食べますか

朝食を食べているかにいて質問したところ、1994人の回答が得られた。(回答率99.7)「食べない」が167(8.4)、「時々食べる483人」(24.2)、「ほぼ毎日食べる」「食べる」1344(67.4)となった。年齢別では、「50歳以上」の人に「食べない」の比率がやや低くなっており、「19歳以下」の人は「食べない」の比率が高くなる。トン数別で見ると、「200499トンの船舶で「食べない」の比率が高くなっており、勤務形態別では「日帰り」で「食べない」の比率が高くなっていた。

【4】栄養バランスを考えて食べていますか

 栄養のバランスについて1994人の回答が得られた(回答率99.7)。「考えない」501(25.1)、「少しは考える」1235(61.9)、「考えて食べる」258(12.9)となった。

年齢別では、「34歳以下」の人に「考えない」の比率がやや高く、経験年数別では「24年以下」の人は「考えない」の比率が高くなる。

【5】間食は食べますか

 間食は食べているかについて質問したところ、1995人の回答が得られた。(回答率99.7)「ほぼ毎日食べる」190(9.5)、「時々食べる」1192(59.7)、「ほとんど食べない」613(30.7)となった。

年齢別では、「45歳以上」の人に「ほとんど食べない」の比率がやや高く、性別では女性に「ほとんど食べない」の比率が低かった。経験年数別では、「3034年以上」の人に「ほとんど食べない」の比率が若干高い。勤務形態別では、「日帰りの人」に「ほとんど食べない」の比率が高かった。

【6】塩分はひかえていますか

 塩分について質問したところ、1992人の回答が得られた。(回答率99.6)「ひかえていない」785(39.4)、「ときどきひかえる」883(44.3)、「ひかえている」324(16.3)となった。年齢別では、「39歳以下」の人に「ひかえいない」の比率が高く、「45歳以上」の人に「ひかえている」の比率がやや高くかった。経験年数別では、「30年以上」の人に「ひかえている」の比率が若干高い。

【7】お酒は飲みますか

 お酒は飲むかについて質問したところ、1992人の回答が得られた。(回答率99.6)「ほぼ毎日飲む」809(40.6)、「時々飲む(5日以内)652(32.7)、「ほとんど飲まない」531(26.7)となった。

年齢別では、「35-44歳」の人に「ほぼ毎日飲む」の比率がやや高く、性別では「女性」に「ほとんど飲まない」の比率が高かった。経験年数別では「9年以下」に「ほとんど飲まない」の比率が高く、「2024年」は「ほぼ毎日飲む」の比率が高かった。

【8】タバコを吸いますか

 タバコを吸うかについて質問したところ、1995人の回答が得られた。(回答率99.7)

「吸う」1133(56.8)、「止めた」157(7.9)、「吸わない」705(35.3)となった。年齢別では、「45歳以上」の人に「吸わない」の比率がやや高く、性別では「女性」に「吸わない」の比率が高かった。乗船人数では、「35人以上」の船舶で「吸わない」の比率が高かった。

【9】運動はしますか

 運動はしているか質問したところ、1994人の回答が得られた。(回答率99.7)「しない」884(44.3)、「ときどきする」854(42.8)、「する」256(12.8)となった。年齢別では、「45歳以上」の人に「する」の比率がやや高く、経験年数では「3039年」に「する」の比率が高かった。勤務形態別では、「日帰り」に「する」の比率が高かった3.喫煙習慣について

【1】起床後何分で最初の喫煙をしますか

起床後何分で最初の喫煙をするか質問したところ、1119人の回答が得られた。(回答率55.9)61分以降」32(2.9)、「3160分」81(7.2)、「630」分450(40.2)、「5分以内」556(49.7)となった。年齢別では、「45-54歳」の人に「5分以内」の比率がやや高く、性別では「女性」に「5分以内」の比率が高かった。経験年数別では「2024年」に「5分以内」の比率が高く、勤務形態別では「泊まり」には「5分以内」の比率が高かった。

【2】 寺院や、図書館、映画館など、喫煙を禁じられている場所で禁煙することが難しいですか

 寺院や、図書館、映画館など、喫煙を禁じられている場所で禁煙するか質問したところ、1118人の回答が得られた。(回答率55.9)「いいえ」786(70.3)、「はい」332(29.7)となった。年齢別では、「60歳以上」の人に「はい」の比率がやや高く、性別では「女性」に「いいえ」の比率が高かった。経験年数別では「40年以上」に「はい」の比率が高かった。

【3】 1日の喫煙の中で、どちらが一番やめにくいですか

 1日の喫煙の中で、どちらが一番やめにくいか質問したところ、1118人の回答が得られた。(回答率55.9)「朝、最初の一本」449(40.3)、「その他」654(58.7)となった。年齢別では、「2034歳」の人に「その他」の比率がやや高く、「5059歳」の人は「朝、最初の一本」の比率が高かった。経験年数別では「30年以上」に「朝、最初の一本」の比率が若干高い。職種別で見ると、「船長」で「朝、最初の一本その他」の比率が高かった。

【4】 1日に何本吸いますか

 1日に何本吸うか質問したところ、1118人の回答が得られた。(回答率55.9)10本以下」42(3.8)1120347(31.0)2130429(38.4)31本以上」300(26.3)となった。年齢別では、「4054歳」の人に「21本以上」の比率がやや高く、職種別では「職員」に「21本以上」の比率が高くなっていた。経験年数別では、「20年以上」で「21本以上」の比率が高かった。

【5】 他の時間帯より、起床後数時間以内に多く喫煙しますか

 他の時間帯より、起床後数時間以内に多く喫煙するか質問したところ、1117人の回答が得られた。(回答率55.8)「いいえ」712(63.7)、「はい」404(36.2)、どちらでもない1(0.1)となった。年齢別では、「5059歳」の人は「はい」の比率が高かった。経験年数別では「20年以上」に「はい」の比率が若干高い。職種別で見ると、「船長」で「はい」の比率が高かった。トン数別では、「499トン以下」に「はい」の比率が高かった。

【6】 ほとんど1日中、床に伏している病気の時も喫煙しますか

 ほとんど1日中、床に伏している病気の時も喫煙するか質問したところ、1116人の回答が得られた。(回答率55.8)「いいえ」712(63.8)、「はい」404(36.2)となった。年齢別では、「60歳以上」の人は「いいえ」の比率が高かった。経験年数別では「4年以下」と、「1524年」に「はい」の比率が若干高い。トン数別では、「5000トン以上」に「いいえ」の比率が高かった。

 

【7】ニコチン依存度判定

 ニコチン依存の程度を簡便に判定するために、1978(昭和53)年、Fagerstrom(ニコチン代替療法の開発者でもある)が開発したFTQはこれまで最も利用されてきた質問評価表で、ニコチンガムなどのニコチン代替療法の適用を決定するのに有用である。1991(平成3)年、Heathertonにより改訂されたFTNDは、臨床的により有用性が認められている2)。合計6点以上は重症のニコチン依存症となる

4. メンタル面について

【1】 気分が沈んでゆううつだ

気分が沈んでゆううつかついて質問したところ、1948人の回答が得られた。(回答率97.4)「いいえ」863(44.3)、「ときに」962(49.4)、「たいてい」78(4.0)、「いつも」45(2.3)となった。

年齢別では、「2029歳」の人に「いつも/たいてい」の比率がやや高く、性別では「女性」に「いつも/たいてい」の比率がやや高かった。トン数別では、「500999トン」と、「30004999トン」で「いつも/たいてい」の比率がやや高かった。

【2】朝方がいちばん気分がよい

 朝方がいちばん気分がよいかについて質問したところ、1947人の回答が得られた。(回答率97.3)「いいえ」811(41.7)、「ときに」671(34.5)、「たいてい」366(18.8)、「いつも」99(5.1)となった。年齢別では、「34歳以下」で「いいえ」の比率が高く、「55歳以上」の人に「いつも/たいてい」の比率がやや高かった。性別では「女性」に「いいえ」の比率が高かった。職種別では「船長」に「いいえ」の比率が低かった。乗船人数別では、「30人以上」で「いいえ」の比率がやや高かった。

 

【3】泣いたり泣きたくなったりする

 泣いたり泣きたくなったりするか質問したところ、1962人の回答が得られた。(回答率98.1)「いいえ」1461(74.5)、「ときに」454(23.1)、「たいてい」17(0.9)、「いつも」30(1.5)となった。年齢別では、「45歳以上」で「いいえ」の比率が高く、性別では「女性」に「いいえ」の比率が低かった。乗船人数別では、「3039人」で「いいえ」の比率がやや高かった。

 

【4】夜よく眠れない

 夜よく眠れないか質問したところ、1963人の回答が得られた。(回答率98.1)「いいえ」913(46.8)、「ときに」819(41.7)、「たいてい」145(7.4)、「いつも」81(4.1)となった。年齢別では、「2029歳の人に「いつも/たいてい」の比率がやや高く、性別では「女性」に「いつも/たいてい」の比率がやや高かった。トン数別では、「500999トン」と、「3000トン以上」で「いつも/たいてい」の比率がやや高かった。

【5】 食欲は普通にある

 食欲について1964人の回答が得られた。(回答率98.2)。「いいえ」84(4.3)、「ときに」153(7.8)、「たいてい」907(46.2)、「いつも」820(41.8)となった。年齢別では、「4555歳」の人に「いいえ」の比率がやや高く、年数別では「2529年」に「いいえ」の比率がやや高かった。

【6】 異性に関心がある

異性に関心があるかについて1951人の回答が得られた。(回答率97.5)「いいえ」169(8.7)、「ときに」638(32.7)、「たいてい」542(27.8)、「いつも」602(30.9)となった。年齢別では、「50歳以上」の人に「いいえ/ときに」の比率がやや高く、性別では「女性」に「いいえ/ときに」の比率がやや高かった。職種別では「船長」で「いいえ/ときに」の比率がやや高かった。

【7】やせてきた

 やせてきたかについて質問したところ、1925人の回答が得られた。(回答率96.2)「いいえ」1572(81.7)、「ときに」242(12.6)、「たいてい」72(3.7)、「いつも」39(2.0)となった。年齢別では、「24歳以下」の人に「いつも/たいてい」の比率がやや高く、職員別では「部員」に「いつも/たいてい」の比率がやや高かった。経験年数別では「4年以下」に「いつも/たいてい」の比率がやや高かった。

【8】便秘する(通じがない)

便秘する(通じがない)か質問したところ、1932人の回答が得られた。(回答率96.6)「いいえ」1350(69.9)、「ときに」468(24.2)、「たいてい」71(3.7)、「いつも」43(2.2)となった。年齢別では、「24歳以下」の人に「いつも/たいてい」の比率がやや高く、性別では「女性」に「いつも/たいてい」の比率がやや高かった。乗船人数では、「3539人」で「いつも/たいてい」の比率がやや高かった。

【9】心臓がどきどきする

心臓がどきどきするか質問したところ、1963人の回答が得られた。(回答率98.1)

「いいえ」1287(65.6)、「ときに」611(31.1)、「たいてい」29(1.5)、「いつも」36(1.8)となった。年齢別では、「24歳以下」の人と「60歳以上」に「いいえ」の比率がやや高く、性別では「女性」に「いいえ」の比率がやや高かった。経験年数別では「4年以下」に「いいえ」の比率がやや高かった。乗船人数別では、「2529人」と「40人以上」で「いいえ」の比率が高かった。

【10】疲れやすい

疲れやすいか質問したところ、1966人の回答が得られた。(回答率98.3)

「いいえ」397(20.2)、「ときに」1122(57.1)、「たいてい」285(14.5)、「いつも」162(8.2)となった。年齢別では、「60歳以上」に「いいえ」の比率がやや高く、性別では「女性」に「いつも/たいてい」の比率がやや高かった。トン数別では、「30004999トン」で「いつも/たいてい」の比率がやや高かった。勤務形態別では「泊まり」で「いつも