Maritime Labour Research Institute

財団法人海上労働科学研究所
    

ホーム 海上労研とは 研究業績 スタッフ 情報開示 リンク

 

海上労働調査報告 第10集(労働科学研究所報告) 運輸省船員局 昭和34年12月
(海上労働科学研究会資料 第4号 海上労働科学研究会)

第1篇 船内における人間関係に関する調査研究報告
船内における人間関係とリーダーシップについて
大沢文男 海労調報(10)2〜47(1959)
 船員のモラールの測定方式を改訂するとともに、モラールの高低に対応するリーダーシップの諸相を考察した。調査方法として、意見調査表(簡便版25問)、ソシオメトリックテスト、職員層に対するリーダシップの基準、上司の対部下評点を求めるための自由形式の要望調査表、職制上の従属関係の強さ、船内におけるリーダーシップに関する全般的な問題点をさぐる調査表、労研式「情意生活しらべ」などの質問紙法によった。対象は20隻の船員に発送、応答船員642名であった。
 結果を要約すると、(1)指導者の行動として、常に部下の立場を考えて、自発的なモラールの高まりと、集団の結合度の強化を期待している。しかし船長、機関長のトップリーダーの中には、部下の監督の厳重にすることを高く評価する傾向あり、若年層との間にギャップがみられる。(2)船内では同じ部の上級者を指導者として認知する傾向がつよい。他のパートまたは陸上勤務者を選ぶことは稀で、職制上の従属関係が船内生活をつよく支配している。(3)職員のモラールの高い船では部員のモラールも高く、職員のモラールの低い船では部員も低い。また、職員と部員の間のモラール水準の差が小さい程、船全体のモラール水準が高い。このことから、船内におけるリーダーシップのあり方がモラールを左右する大きな条件となっていることがわかる。(4)職員の意見として部下に対して厳重な監督を必要とすると考えているような場合、すなわちリーダーシップの弱い船では、モラールが一般に低い。職員が従来のしきたりにとらわれず、新しい考え方を採用しようとする場合は、モラールが高く指導性も高くなっている。指導者の意識過剰はかえってモラールを低下さす。

第2篇 船員の疾病災害に関する調査研究報告
船員の職種別疾病災害下船率について
西部徹一 海労調報(10)49〜86(1959)
 船内における労働条件と傷病の発生との関係を明らかにする一つの手がかりとして、33社、延108,878名の船員について1951.1〜1956.12間の下船療養者の疾病件数12,586件、災害件数1,990件を分析した。即ち結核、性病、腸管伝染病、新生物、アレルギー性疾患、血液及び造血器の疾患、精神病、神経系、循環器系、消化器系、性尿器系、皮膚および疎生結合組織の疾患、骨および運動器の疾患、等について、又災害について、疾病災害率の順位について、それぞれ職種別にわけて分析した結果、船員の労働には考慮すべき点が多く摘出された。

第3篇 船員の栄養に関する調査研究報告
1.ペルシャ湾航路タンカーにおける食品の貯蔵による変化と船員の栄養状態について
高木和男 海労調報(10)89〜125(1959)
 1956年8〜9月、いままでの船員栄養の研究結果から、航海中の栄養状態、食欲、貯蔵食糧の状態等を総合的に乗船調査することを計画し、M社C丸で行った結果の報告である。
 @食品の貯蔵に関する調査結果−a.野菜の庫内目減と調理時廃棄率を秤量し、10品目について実可食率を算出。b.野菜のVC含有量の変化を5品目について測定し、鮮度低下に比しCの減少はそれほどでないことをみる。c.米の変質とVB1の変化の対応性から、VB1含有量の変化を測定。4週間目に低下大なるをみる。d.魚類6品目について遊離脂肪酸を測定。白身より赤身の低下大らしいことをみる。e.群別食品使用量の週間変動から、長期貯蔵給食の困難性を指摘する。
 A乗組員の栄養保持状態調査の結果−血液、尿性状、身体症候、発汗量等から、全般的には正常の範囲内にあるが、暑熱と食物の偏りによる健康状態の低下がみとめられるとする。
 B食生活態度調査の結果−食残調査と嗜好品調査の結果から、a.食残は司厨員>機関員>甲板員、航士>機士で、年令別には30〜34才台がおち当直の影響が考えられる。b.嗜好品としてミルクが階層を問わず比較的多い。しかしながら航海変動や職種間格差の詳細は摘出困難であった。

2.船員における消化吸収試験結果について
高木和男 海労調報(10)128〜133(1959)
 動揺・高温等をともなう船内生活が栄養状態へ影響ありや、食欲と消化吸収の関係ありやについて、1956年、ペルシャ湾タンカーC丸について乗船調査した結果の報告。
 方法−復航、3日間0−4時直の士官3名の摂取栄養量(計算値)と糞中排出量の差を見掛け上の消化吸収率とする。
 結果−@一般所見と異なるところなし。
    Aしかし個人差からみると長期間の乗船(休暇後から)と暑熱が消化能力を低めるのではないかという疑いはもたれる。

3.船用米の貯歳に関する研究
高木和男 海労調報(10)136〜166(1959)
 米の変質、食味低下防止の上から船内貯蔵法の研究に着手、第1回の調査研究の結果報告である。
 @夏期船用米の品質調査−1956年、停泊船58隻から試料採取し、水分、VB1、害虫、包装を調べる。
 A船内貯蔵条件調査−15隻に記録依頼するとともに内地出港時、帰港時の試料採取、水分、VB1、害虫を指標として、実船貯蔵における包装、温湿度条件の影響をみる。a.紙袋とプライニウム格差なし。b.タンクは設計条件により効果異なる。c.冷蔵法は例数少なく不明。
 B高温室内貯蔵試験−労研内人工気候室(32℃、60%以上)内にタンク、紙袋、プライニウム袋、麻袋別に試料貯蔵。外観、水分、VB1、粘度、重湯の表面張力、食味テストで効果測定。
 密封タンク貯蔵の成績では、a.湿度があがり、カビ発生。b.VB1と防虫効果あり。c.粘度は流動的に変化し、d.食味テストでは通気貯蔵の方がよかった。以上の結果水分の多いことがすべての点に影響してくるようである。

第4篇 船員設備に関する調査研究報告
1.船内冷房に関する研究
 第1報 ペルシャ湾航路タンカーにおける船員居住区の温熱条件について
神田寛 海労調報(10)167〜183(1959)
 今回船舶の居住性能研究の一環として、ペルシヤ航路タンカーK丸における船室の室内気候の実態と、その遮熱、保温、通風、冷房等に関する資料とを得るために調査を行ない、次の如き結果を得た。@ペルシヤ湾における室内気候と、外洋上のそれとはかなりの差がみられ、ペルシヤ湾内は大陸性気候を示し、暑さも著しい。A居住区に対する貫流熱の影響は、曝露甲板の日射と機関室の熱源によるものが最も大きい。B船室の換気による熱の流出入量は、壁体からの貫流熱量と同程度の影響を持つ。従って通風を有効に利用すれば室内の温熱環境はかなり改善される。Cこのような酷暑の海域にあっては冷房装置が必要である。

 第2報 船内における冷房設備について
鬼島榛衛 海労調報(10)187〜204(1959)
 13次造船以降、ペルシヤ湾航路タンカーの公室には冷房設備を設けることになり、昭和33年8月現在、外航油槽船の60%が冷房設備を備えている。そこで、船内冷房の実態について質問紙調査を行ない、18隻、850人の回答を得た。その結果さまぎまな問題点が明らかになったが、主なものは次のとおりである。@公室1人あたりの床面積不足のため、所要換気回数が満たされないなど、冷房設備の不完全なこと、A作業条件などを考慮した船員のための至適冷房温度の把握等を目的とする実験的研究の必要性があること。B船内冷房負荷算定に必要な資料を作成し、基準を設定すること。

2.野菜冷蔵庫内の温度分布について
神田寛 海労調報(10)205〜211(1959)
 ペルシヤ湾航路タンカーK丸の野菜冷蔵庫の温度分布と変動の実態を調査し、食料の適正保存のための問題点を検討した。結果は次のとおりである。@庫内の垂直温度分布は、水平温度分布よりも偏差が大きい、A周期的温度変動が大きい、B今後、温度差を小さくするための方法の研究が必要である。

第9集 第11集 調査報告項目へ