Maritime Labour Research Institute

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海上労働調査報告 第17集 海上労働科学研究所 昭和42年9月
(海上労働科学研究会資料 第11号 海上労働科学研究会)

第1篇 船員の資質能力に関する研究
1.操船者の情報処理能力(3)
西岡昭 海労調報(17)1〜4(1967)
 開発過程にあるRKP401(情報処理)の信頼性を検討するため、水先案内人試験受験者41名を対象として、検査を実施し、これまでの資料と共に、若年群(海技大学生)の検査成績と比較吟味した。
 その結果、主課題作業正答率では、40〜54才台までは、@若年群より高い正答率を示すが、60才以後はかなり低下した成績を示す、A副課題作業正答率は若年群の方が良い成績を示す、B主・副両系列同時正答率では、本対象群では45〜50才台が若年群より高い正答率を示す、等々の諸点が明らかとなり、その他、主系列課題作業の困難な事態における副課題作業の正答率、作業中の附帯情報の処理、作業後の附帯情報の処理、主課題・副課題・附帯情報等完全回答率などからみて、本検査法の信類度について、若干の根拠が求められたと考えられる。

2.操船者の情報処理能力(4)
西岡昭 海労調報(17)5〜10(1967)
 操船技術者の持つ基本的なキャパシティーの一つとしての情報処理能力を、反応時間(単純及び2選択、4選択、8選択)及び視機能について測定することを試みた。測定器械はいづれも特別に考案・試作されたものを用いた。特に視機能については、今回は若干視点を変えて、フリッカーを認知する能力(フリッカー弁別限)を情報伝達率の概念を導入することによって一義的に整理し、この面から操船技術者の持つ資質特性を把握しようと試みた。測定法としては、音の最小可聴限の測定などに用いられるAB法(MUNSEN、et al、1954)を用いた。若干の結果も得られているが、なお今後の検討が必要である。

3.操船者の知能性格等
千原義男 海労調報(17)11〜44(1967)
 操船技術に要請される性能は、操船作業の分析とくに精神過程の分析にもとづいて、その所要性能と検査方法を研究する必要がある。今回は操船技術者の知能、性格および作業素質に関する検査方法検討のため予備的な調査を実施した。41年11月に海技大学生177名、42年1月に商船大学生94名を対象に行なった。@知能検査 成人知能検査(R100)と労研式高級知能検査(RK400)を実施した。両テストの間に低い正相関を認めた。RK400と実習成績にも低い正相関を認めた。A性格検査 精研式パーソナル・インベントリ(INV)を実施した。Z型(循環性)とE型(てんかん性)は機関科が、一般や航海科よりやや少なかった。S型(分裂性)は航・機とも一般の分布と同傾向で、N型(神経質)は両科とも一般より少なかった。H型(ヒステリー)は機関科がやや少なかった。B作業検査 災害傾向をみるため、アメフリ抹消検査、C.C.No.テスト、速度見越反応検査を実施した。その結果、3つの検査成績相互の間には相関関係がみとめられなかった。

第2篇
1.船員の疾病災害率の堆移
西部徹一 海労調報(17)45〜51(1967)
 主要海運会社9社を対象として、1951年より15年にわたる傷病下船者の統計を要約した。
 1.疾病下船率は、'53年まで横ばい(11%)、以後'60年まで減少をつづけ8%前後を示す。'61年から急上昇し、'64年には17%をこえる。災害下船率は'52年まで1%台であったが、'61年から増勢をたどり、'64年には3%をこえるに至った。
 2.病類別下船療養発生率 結核は3%台から1%を割るようになった。性病も減少していたが、'61年から増加傾向をみせ、'64年には0.18%に増加。新生物は近年0.1%をこえてきた。精神障害は、'55年に0.08%まで減少したが、'64年には0.29%まで増加。神経・感覚器系の疾患も近年増加をみせ、'64年には1.71%の高率を示す。消化器系も近年増勢いちじるしく、'59年に4%をこえ、'64年には8%をこえたなど。
 3.職種別疾病下船率 '65年の資料では、機関長・士を100とすると、船長・航海士118、通信長・士136、事務長・員141、甲板部員188,機関部員183,事務部員220の割合であった。
 4.職種別災害下船率 甲板部員は災害率最も高く、'61年に4%、'63年には5%をこえた。ついで機関部員が高いが、これも'64年には3%をこえた。

2.船員の死亡率
西部徹一 海労調報(17)52〜56(1967)
 10年間の社会保険庁資料から、船員死亡の実態をみた。
 1.年間平均1,300名が死亡、漁船員62%、汽船員22%、機帆船員16%。10万人比でみると、10年間の平均は6.06となる。
 2.職務上56.5%に対し、職務外43.5%で、職務上死亡率は汽船員に対し、機帆船員2倍、漁船員4倍を示す。職務外の死亡率では、汽船員に対し、機帆船員1.8倍、漁船員2倍である。
 3.年令別死亡率では、30才台がもっとも低く、40才台1.4倍、50才台3.2倍となる。
 4.職務上死亡の月別発生率をみると、8月に最低で1月が最高となる。
 5.職務外死亡を原因別にみると、第1位ががん、第2位は診断疾病名なし、第3位神経系感覚器疾患、第4位循環器系疾患の順位である。

3.船医衛生管理者に必要な虫垂炎の保存的療法
久我昌男 海労調報(17)57〜67(1967)
 虫垂炎の開腹手術は、船内では直ちに活用し得ない環境にあるので、医師不在船における保存療法について体験的なとりまとめをした。
 (1)発生機序 船内環境からくる消化器疾病、運動不足、ビタミン欠乏、疲労、環境激変などの影響が考えられる。(2)年令 船員歴1〜2年が多い。(3)職種 司厨員に多く、ついで機関部。(4)共通主訴として、便秘、倦怠感、胃部痛、食欲不振が多い。(5)保存的療法の意義 保存療法は船内において最もすぐれた医療で、機会を得て揚陸手術を受けるのが最良の方法である。保存法に最も重要なことは安静で、とくに下剤の誤用に注意する。厳重な食事療法を行なう。廻盲部は白血球増多症好転時まで冷却療法を行なう。激痛時は鎮痛剤を用い、サルファ剤内服、脉注投与を行なう。抗生物質としてはクロラムフェニコール錠の内服は効果がある。また治癒力増強には,リンゲル液500cc、ビタミンB10〜20mg、ビタミンC100〜200mgを混注または内服させる。また保存療法中の病状膠着状態には、1日200ccの輸血が効果がある。穿刺療法は中間期に腫瘤、硬結、膿瘍形成例に対し行ない、治癒日数を短縮しうる。治癒機転は、船医では赤血球沈降反応値、白血球数の減少をもって定め、船舶衛生管理者では、熱型を主とした各種一般症状によって判定する。

4.痘苗接種による皮膚疾病の予防
久我昌男 海労調報(17)68〜71(1967)
 外航船員の痘瘡接種は3年に1回実施されている。接種後12〜24時間で、接種痕に軽度から相当強度の掻痒感を発生し、同時に硬結はほとんど認められないが、発赤が起り、接種創痕は針頭大から粟粒大の丘疹状を呈する例が少なくない。
 入出港前後の口唇単純性庖疹、眼瞼内外麦粒腫その他陰部単純性庖疹、尋麻疹、汗疹、下腿湿疹、擬似アフター性口内炎、薬疹等の既往歴に頻発例が多い傾向がみられる。7日後に再接種すると、大部分は前回より反応程度が軽減し、さらに7日後に接種すると反応はさらに軽減され、さらに次の接種で反応は消失するが、ほとんど認めがたい程度に軽減する。以下、船医としての体験から、接種の方法、接種後の措置、反応の観察法、判定について述べる。

5.船員の腰痛症
久我昌男 海労調報(17)72〜78(1967)
 船員の腰痛症について調査を行った結果、一般的に陸上産業において日常認められる腰痛症に類似したものは少ない。しかし船内特殊性を有する腰痛症についてはその原因、誘因として船内は昇降階段の多いこと、また平面であってもパイプ等の突出物があるため足場が悪く、しかもそこを迅速に移動することを要求されること、作業姿勢が脊柱に与える影響、歩行量の急激な増加などがあげられる。対策としては、作業前に軽い体操を行うこと、休息時には出来るだけ側臥位をとることなどが考えられる。

第3篇 操船技術と労働負担に関する研究
1.港内操船時の情報系路と性質
師岡洋一 海労調報(17)79〜84(1967)

2.心拍数からみた操船者の精神的緊張
大橋信夫 海労調報(17)85〜92(1967)
 大型船の操船作業、特に着岸・離岸を含む港内の操船作業は精神的負担の大きい作業の一つと考えらえる。昭和39年から操船作業を妨げることのないテレメトリーによって操船者の心拍数の変動を測定してきた。その結果、心拍数の変化と船の置かれている状況との対応からみて、操船時の精神的緊張は、@船の運動性能とMASSとの関係、A組みたてられるシステムの問題とにかなりの関連があると考えられた。

第4篇 船内環境条件に関する研究
1.船酔に関する研究(1)
神田寛 海労調報(17)93〜97(1967)
 船体動揺の船酔い発生の実態を調査した。遠洋航海中の実習生を対象とし、船酔度は、船酔感、嘔吐の回数と量など自記調査させ、動揺測定は、ガイゲル振動計を使用して、上下加速度、縦揺角、周期などを測定した。@船の中央より1/4Lの場所で最大上下加速度は通常0.1〜0.25g位であり、船首尾はその約1.5倍を示した。A上下加速度が船酔発生の最大因子であるならば、PitchingはRollingよりその影響が大きい。B初めて航海するものは80%は船酔いにかかるが、慣れを生ずる傾向が強い。そのため、5日目で大半は訓練され、船酔いの続く者は10日目で極めて少数になる。

2.船酔に関する研究(2)
神田寛 海労調報(17)98〜103(1967)
 本研究第一報(船酔に関する研究1、神田寛、海労調報、17、93〜97、1967)において、船体動揺と船酔い発生の関係について報告したが、今回は第一報と関連して各種神経機能検査の結果について報告する。遠洋航海中の実習生10名を対象とし、Romberg、S Test、Aschners Test、Goniometer Test、Tilt Test、Caloric Test、遮眼書学テスト、血圧、脈拍数などにつき調査を行なった。出港前対象全員はこれら検査項目に異常を示さなかった。また、強い群と弱い群とに有意差はみられなかった。Caloric Testでは、出港後20日目の検査で、前庭機能の変動がみられ、強い群と弱い群の間に差がみられたが、40日目の検査では、出港前と同様であった。

3.船体の振動と乗心地
神田寛 海労調報(17)104〜108(1967)
 従来の船体振動感覚についての研究等を参考に乗心地の問題を検討した。すなわち、船体振動の特徴、船体振動感覚と加速度・振幅の関係、などから船体振動の感覚閾を求めた。また、測定された振動を判断する際に考慮すべき点を検討した。

第5篇 船員の作業管理に関する研究
1.船内における事務分布分析
小石泰道 海労調報(17)109〜113(1967)

2.入出港における船首尾作業分析
長尾好記 海労調報(17)114〜124(1967)

3.主機関操縦における作業分析
馬頭昭 海労調報(17)125〜129(1967)

4.調理供食における作業分析
小石泰道 海労調報(17)130〜140(1967)

第6篇 船員の体育に関する研究
1.船内体育の背景とその実態
大橋信夫 海労調報(17)141〜167(1967)
 1964年、某大手船会社社員に対して、アンケート調査を行った。有効回答数は船員788名、陸員379名である。
 戦後の海上労働に関する多くの調査研究によって、船員の健康に関する問題点が摘出された。我々はこの問題の解決の一つの対策として、船内における体育活動があるのではないかと考えた。調査の結果、他の調査研究によっていわば客観的に描き出されている健康上の問題点は今回のアンケート調査による船員自身の自覚と一致していることがわかった。戦後船員の三大病のひとつにあげられている消化器系の疾患に関しては、今回の調査においても船員が陸員にくらべて、有意に消化器系の異常に関する自覚が多い。また、運動をする際の希望目的から、体育が健康上の問題点の解決の一つの手段になり得ることがわかった。多くの人々は運動の必要性を痛感しているにもかかわらず、種々の条件で制約をうけ、ほとんどの人がなにがしかの運動不足を感じている。また実施している種目と希望している種目とから、今後の体育活動振興の方針をたてるなら、その年令構成を考慮に入れて、種目はまずは、体操とゴルフ、散歩であるといえよう。

2.船内体操の一試案としてのサーキット体操
大橋信夫 海労調報(17)168〜174(1967)
 船内体育の実態と背景について「船内体育の背景とその実態」(大橋信夫 海労調報、17、141〜167、1967)の調査結果をもとにして、船内でできる体操を具体的に作成したものである。サーキット体操の特徴は、@対象が個人である、A船内の諸設備を利用する、B運動と運動との間に場所の移動がある、C個々の運動は独立していて、入れ替えられる、D主として大型船に適している、などである。サーキット体操の作成に際しては、体に与える影響のひとつである心拍数を測定し、その結果を目安として個々の運動の回数、移動距離などを決めた。この体操は1966年にはF丸(鉱石専用船D/W 70,000t)で4航海、1967年にはS丸(油槽船D/W 103,000t)で6航海試験的に実施する機会を得た。
 船内における体育の振興をはかるには、船内の労働と生活とからくる種々の制約を考慮しなければならない。すなわち、@乗組員のメンバーが絶えずかわる、A暇があれば横になるという生活慣習、B消極的な心理特性、C動揺、D積荷の影響、E時には50℃を越える甲板表面温度、F多職種のため生活時間構造がそれぞれ異なること、G小人数のわりに年令差が大きいこと等である。

第7篇 船員家族に関する研究
1.船員家族の職業評価
神田道子 海労調報(17)175〜223(1967)
 本研究は船員家族(妻)が、夫の職業である船員をどう評価しているかを明らかにすることを目的にしている。
 調査対象は外航労務協会、外航中小労務協会、火曜会、一洋会に所属する会社で夫が働いている船員の妻で、858人の調査の結果である。調査時期は1966年4月〜6月である。
 調査の結果は、T、職業評価のうち、@職業観では安全性、貸金が重要視されているが、安全性に対する評価は低い。賃金に対する評価は、職員と部員家族ではことなり、職員家族は評価が高い、A職業特性のうち、家族と一緒に暮す機会が少ない点が、もっとも重要視されており、かつその評価は低い。B家庭生活観は経済状態、子どもの教育が重視されており、家庭の経済状態に対する評価は高いが、子どもの教育についての評価は低い。
 U、職業継続観は、@継続希望、非継続希望は、両グループとも43〜50%程度で、両グループの間に差はみられない。継続希望は、妻の年令が40才代以上の高年令層に多い。A職業継続観と職業評価は関連があり、職業評価の3領域とも、継続希望グループは評価が高い傾向がみられた。B職業継続観は、家族生活にもっとも影響する条件である。年間家庭生活日数及び方法、別居間隔、賃金によって変化し、これらの条件に対する希望が実現されると非継続希望は13%内外に減少する。C転職の機会の有無は職業評価と独立して継続観に影響する。

第8篇 漁船船員の労働に関する研究
1.キャッチャーボートにおけるモラールとリーダーシッープ
大木修次 海労調報(17)224〜243(1967)

2.遠洋まぐろはえなわ漁船員の労働実態
岩崎繁野 海労調報(17)244〜266(1967)

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