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海上労働調査報告 第18集 海上労働科学研究所 昭和43年10月
(海上労働科学研究会資料 第12号 海上労働科学研究会)
第1篇 船員の資質能力に関する研究
1.操船技術者の情報処理能力(5)
西岡昭 海労調報(18)2〜5(1968)
これまで行なってきた反応時間に関する分析に加えて、新らしく考案した交互打叩検査器による運動規制機構からみた船員の情報処理能力の分析も行なった。対象者は、水先案内人志願者で、分析は第一次試験の合格者群と不合格者群との比較をとおして行なった。その結果、@反応時間については、合格者群の方が速い、A交互打叩検査では、どのパターンとも合格者群の方が速い、などの点が判明したが、なお、標本数を増やして検討する要がある。
2.操船技術者の情報処理能力(6)
森清善行 海労調報(18)6〜8(1968)
これまでに検討してきた情報処理能力の基本的因子に関する反応時間の測定法を発展させて、操船という現実的な状況に若干近い課題状況を作り出して、情報の出現事態のちがいによって処理能力がどのようにあらわれるかという問題を検討するために、海技大学校生(航機103名)を対象に実験した。その結果、@同じ情報が2度繰り返し呈示されると、その情報の処理に要する時間は遅れる、Aしかもおくれの時間は先行経験とは関係なくほぼ一定である。つまり同じ情報が繰り返されたために起った反応のおくれという経験はそれ以前の同種の情況とは全く独立的である、Bしかし、それも情報の呈示の仕方によっても異なり、全体としては「予測の溝へ」は反応を速くすることも遅くすることもある、等々の諸点が明らかとなった。
3.間隔評定検査
鈴木由紀生 海労調報(18)9〜11(1968)
操船に際して、比較的近い位置関係を知る場合には、現在もなお目測が用いられている。この目測がどの程度精確こ行なわれているかを知るために、間隔評定検査装置を新しく作製し、速度と間隔評定との関係を検討することを試みた。検査対象には、海技大学校109名(航60、機49)、消防学校生徒59名とした。その結果、評定値の平均値は実際の間隔より大きいこと、間隔の変化の速度が速い場合は、遅い場合にくらべて狭く評定すること、広範な個人差が存在すること、などが判明したが、尚一層の検討を要する。
第2篇 船員の安全衛生に関する研究
1.船員の疾病災害統計
西部徹一 海労調報(18)14〜23(1968)
1951年から1966年までの16年間の統計的推移。内容的には前年度分、「船員の疾病災害率の推移」(海上労働調査報告、17、1967)に66年度分が加わったもの。
2.船員労働災害の背景
西部徹一 海労調報(18)24〜30(1968)
船員の労働災害は下船率でみると、1959年以降増勢に転じ、1964年には3%をこえるに至った。その背景としてつぎのような点が考えられる。
(1)船員を取り巻く環境 海象・気象の変化、東西航走による生活リズムの乱れ、船体の振動・動揺
(2)船内作業の多種性と変化 熟練に時間がかかる、雑務的諸作業に対する教育訓練の不足、作業状態の不安定、安全段取の不充足、時刻上の規制など
(3)船員の身心の不安定 生活のリズムの乱れ、入港時の多様性と航海中の単調性
(4)人間関係 船内における私生活の埋没と定員減少による孤立化現象
(5)安全教育 現場における安全教育の困難性、現場指導者育成の不充足
今後に必要な対策としてつぎの点があげられる。
(1)人間工学的な考慮
(2)標準動作の設定
(3)安全教育の強化
(4)船員のリライアビリティの向上
(5)船内体育のすすめ
(6)眼と耳の管理 精密な感覚機能検査の実施
(7)安全管理の組織化と事例の追究
3.遭難時海水飲用による清水の飲みのばし
久我昌男 海労調報(18)31〜48(1968)
従来、船舶の遭難時における海水飲用は有害とされ、禁止していたが、アラン・ボンバールの漂流実験以来、海水は飲めるという意見があらわれ、1955年リスボンにおける海上人命安全会義で論争が行われ、その後IMCOでも論議されたが、今日まで結論が得られていない。わが国の漁船で、海水を飲んで命をつないだ例も散見するので、海水飲用が生体に及ぼす影響を実験的に研究することとした。
1966年、伊豆下田須崎港において、膨張式救命いかだを用い、被験者2名を乗せて実験した。食事は船舶用救難食料を与え、海水は1日あたり300ccづつ3日間飲ませ、第4日には清水300ccを与えた。別にラット5頭を用いた。
検査項目は、血液の変化、腎機能、心臓機能、消化機能、眼底検査、心理、居住環境。
(1)海水飲用によって、清水の飲みのばしが可能。
(2)海水の影響は個体差が大きい。
(3)体力維持のため、遭難食の質について再検討が必要。
(4)救命ゴムボートは複雑な動揺をするので、疲労が甚だしい。
(5)精神力が不可欠の要素で、精神力を支える要因の研究が必要。
4.船医のみた船内精神衛生
久我昌男 海労調報(18)49〜72(1968)
船員の精神障害について、臨床例を中心に検討した結果次のことが考えられる。即ち船内精神神経症の診断、治療、予防については船内生活環境の影響について考慮する必要があり、自律神経失調については注意しなければならない。
船内生活環境は自律神経失調症を発生しやすく、その症状がさらに、船内生活環境の影響から、神経症を発生する原因になっていることは明らかである。
従来の報告では船内精神病・神経症は、司厨部、機関部に多発の傾向は明らかである。
船内精神衛生上非常に重要な位置を占めるものは、おそらく情意不安であり、その不安の根本原因はおそらく個人差の案外に大きな、性欲を始め船内生活環境の総体的なものから来ていると思う。
一般に、精神分裂症で重要な非衛生的生活環境症状は殆んど見当らない。かえって神経症症例では殆んど全例に非衛生的生活行為の症状は認められる。なお不眠も全般的に訴えられる。幻覚では幻聴が精神病、神経症共に認められ、特に精神症例に多発する。治療については、本報告中のインシュリン・サブショック療法は特に有効なる療法であり、自律神経失調症にも効果がある。予防法としてはまだ検討の余地が大である。要するに心因的には出来得る限り情意不安の根本を追求し、その原因を除くか、それに対する精神療法を施すことが大切である。
5.これからの船内給食のあり方
小石泰道 海労調報(18)73〜94(1968)
標題に関し、司厨員、設備器具、食材料3要素の適性化という観点から、今後のあり方をまとめる。
1.食材料の適正化 近年における食品加工・流通の一般情勢とCA貯蔵法やFD食品の概要を述べたあと貯蔵からみた船内食料について対策となるべき諸点をまとめた。(1)冷凍食品の包装単位の適正化、二重包装化、(2)生野菜のCA貯蔵化、庫内の殺菌、運搬積込時の取扱いと貯蔵効果、(3)FD食品の嗜好性と食残、(4)食品加工と細菌汚染、(5)俘和食品と栄養問題、(6)加工食品の使用による給食作業簡素化効果などにふれる。
2.給食設備器具の合理化 (1)能率向上の側面から近年の設備合理化の実態をみると、皿洗機などには顕著な効果を発揮するものはなく、電気レンジの使用は、温熱作業環境の緩和に有効であった。冷蔵庫では収納量に対して、冷蔵効果のあがる内容量を確保することが必要。また調理設備相互の関連を考えたレイアウトを工夫することが必要。(2)給食衛生面からは各設備・器具について具体的な基準化が望まれる。
3.司厨部船員教育の拡充強化 わが国における司厨科教育の経過を概観し、拡充強化の必要性を述べる。(1)職業的自覚、基礎労力、専門実技・知識など補導科3カ月養成の不足。(2)ILO69号条約(船舶調理人資格証明)や調理師法など資格制度との関連。(3)英国の司厨科教育制度の現状。
第3篇 船内設備に関する研究
1.船内緊急避難時における群衆流
神田寛 海労調報(18)96〜106(1968)
2.船員の上腕作業域
大橋信夫 海労調報(18)107〜117(1968)
これまで内外で発表されている上腕作業域に関する資料は、どれも左右が対称になっている。しかし、関節の可動範囲は体育活動などによって発達することなどの点から考えて、この左右対称性に疑問を持ち、肩胛関節の動きに基礎を置いた上腕の作業域を角度法を用いて実測して分析した。実験は1965年10月から1966年1月にかけて行ない、被検者は海技大学校生、商船大学生の約50名である。測定項目は、左右上腕の外転角・内転角・上後方拳上角・下後方拳上角とした。その結果、@内転角は、個人差も少なく左右の差も小さい、A外転角は、右の方が大きいが、個人差もまた大きい、B上後方拳上角は、下後方拳上角に較べてはるかに小さいが、個人差は大きい、C項目間に有意な相関のあるものもある、等の傾向が観察され、左右の作業域を対称に考えることには問題があることが示唆された。
第4篇 船内労働過程の変化に関する研究
1.船舶の技術革新と船員管理
小石泰道 海労調報(18)120〜124(1968)
2.自動化船運航をめぐる技術的問題
小石泰道 海労調報(18)125〜135(1968)
3.新鋭浚渫船における労働実態
小石泰道 海労調報(18)136〜149(1968)
わが国における港湾・航路の浚渫事業が、新鋭設備の浚渫船を投じて活発となってきた折から、その乗組員の労働と生活の実態調査をした。関門航路の浚渫に従事する官庁船海鵬丸(3,200GT)を対象として、1966年に乗船調査をした。
1.生活時間 船の作業海域や行動計画に大きく左右される。停泊中週48時間、航海中56時間の勤務時間規定があり、船は月曜9時に基地を出港し、土曜午後に入港、17時には停泊当直を残して自宅にかえる。即ち一般商船にない週休制をとっている。年次休暇は公務員として年20日あり、自己の希望する日に取れるので、労働日1日につき3名が休暇をとっていた。住居は基地から30分のところに官舎があり、多くはここに住んでいた。船内生活時は週の65.5%であった。
2.主要業務と作業時間 甲板部当直に特色があり、ドラグアーム操作盤、浚渫操作盤、浚渫ポンプ操作盤などすべて船橋から遠隔操作する。船長1名、航海士2名、甲板部員4名で編成され、浚渫と旋回を4〜6回くり返すとホッパー満載となり、埋立地まで航行して、捨土作業を行うことをくり返す。
3.疲労および機能検査結果 フリッカー、タッピング、色知呼称、膝いき値の各検査と自覚症候検査をした。他覚的検査の変動率はおおむね正常の範囲にあったのに対し、自覚的調査の訴えは著しく高く、具体的条件より生活態度や心理面に問題があるようだ。
4.作業分析からみた外航貨物船機関部船橋当直作業
大橋信夫 海労調報(18)150〜156(1968)
船内の諸作業のうち、工程の流れの変化に即時的に作業者が対応してゆく作業の一つである該作業について、11,000D・W・Tの最新鋭自動化船に乗船して、詳細な作業分析を行なった。具体的業務は、看視、計測、記録、流量制御、整備、その他の六つのカテゴリーに分類した。その結果、@各業務の発生頻度割合は、A各機器の状態の差、B作業者の担当機器の差、C作業者の心性のちがい、D共同作業者の社会的距離の差、などによって異なること、A設備と作業との関係をみると、作業環境は改善されているが、その他の新しい諸設備は、A各機器の自動化・遠隔化のアンバランス、Bそれらの機器の信頼性への疑問、C新しい設備に対する作業者の受けとめ方の差、D新しい設備に対する新しい作業基準の検討不足、などによって、新らしい設備が充分に生かされているとは言い難い面が見出された。
第5篇 船員の労働負担に関する研究
1.外航船乗組員における労働負担(3)
森清善行 海労調報(18)158〜160(1968)
船舶における機器の遠隔制御と自動化、ならびにそれに伴う定員の削減が、出入港時における船橋での労働の実態にいかなる変化をきたしているかを、言語情報を中心に観察を試みた。
船橋における言語情報の取扱という観点からみれば、人間の行動は発信型、受信型、中継型の三つにわけることができる。さらに言語情報を動作に結びつける操作型をつけ加えて考えることができる。発信型は船長、パイロットによって代表される。操作型は定員の削減された新鋭船の三等航海士と操舵手、在来船の次席三等航海士と操舵手がその典型である。新鋭船の三等航海士は操作型と中継型を兼ね備えるように変わってきている。これらのパターンを精神機能の面に関連させて考えてみると次のような特徴が見出されるであろう。発信型の精神機能の特徴は意志決定にあり、受信型の特徴は記憶、操作型の特徴は変換、中継型の特徴は選択にある。このパターンと、精神機能との実際的な結び付きについては、今後の検討をまたねばならない。
2.船員における疲労調査資料
小石泰道 海労調報(18)161〜176(1968)
今後の船員疲労調査に資するため、戦後行なってきた疲労調査の有効データを統計的に処理し、船内における測定法・判定法を検討した。
1.フリッカー値 日内変動の分布(当直前値と直間変動率、非当直者の日内変動率)、航海当直2回の前後16時間の変動率、測定評価上の考察(測定対象者と測定時刻、当直者は当直2回の前後を日内変動率とする)
2.タッピング 事務用手掌数取器の有用性、日内変動率の分布(当直者については、フリッカー値と同じ時刻帯別の考慮が必要)
3.膝蓋腱反射いき値 日内変動の分布(1.5δをこえる者には収斂傾向が明らかでないので、集団値から除いた方がよい)
4.睡眠調査 ねつき、ねむりの深さの自覚評点の日次変動には8つのパターン区別ができ、標準的な変動パターンからのズレをみるのも有効。
5.自覚症状調査 (1)集団値の期間変動(航海の条件変化、乗組員の受検態度変化に考慮する)、(2)個人値の分布(比較判定資料)、(3)年令別訴え頻度、(4)小項目別頻度分布
6.情意不安調査 労研「情意生活しらべ」の期間変動(回数が多いと変動巾も大きい)、年令別訴え数
7.職別比較
第6篇 漁船船員の労働に関する研究
1.遠洋まぐろ漁船船員の傷病
岩崎繁野 海労調報(18)178〜190(1968)
遠洋まぐろ漁船船員の傷病の特徴を(1)昭和39年、静岡県焼津港に所属するかつお・まぐろ兼業船およびまぐろ専業船の乗組員1,885名の既往症の分析、(2)出漁期間中の乗組員109名の自覚症状の分析、(3)洋上で発生した傷病を医療無線電報によって分析(昭和37年〜39年、焼津、室戸両漁業無線局の交信控にもとづいて)、以上三つの方法によって検討した。
@在籍船員1,885名の78%、1,469名が何らかの既往症をもっており、消化器系の疾患が最も多く、既往症をもっている人の50%を占めている。
A次いで循環器系の疾患14.7%、伝染病及び寄生虫病8.9%、呼吸器系の疾患5.9%となっている。
B出漁中の自覚症状は、「肩こりと肩の痛み」、「だるい」、「腰や背が痛い」の訴えが多く、船の動静とのかかわりでみると、操業中に訴えが増えている。
C3ヶ年の医療無線からみると、年を追って重篤な傷病者の発生が増加しているとともに、疾病の種類も増えている。
Dこれら傷病の発生は、物的な生活環境、労働負担との関連とともに、船内生活の態様からも考えなければならない。
2.遠洋まぐろ漁船船員の人間関係(1)
西部徹一 海労調報(18)191〜205(1968)
調査目的:漁船の人間関係を知るべく、背景要因としての労働市場、船乗経歴の実態をつかむ。
調査対象:遠洋漁業基地として中咳をなすA、B港、および両港に係わるマグロ漁船船員。調査方法:資料の収集、インタヴュー
調査時期:1966年4月〜8月
調査内容:A、B両港の労働市場、水揚実績、労働力構成、乗船経路、乗船経歴、特殊下船者
調査結果:@A港は関東地方を中心とする大消費地を控え、漁船の大型化、大資本企業の進出、全国的労働市場、近代的な雇用関係といった特徴がある。一方B港は土着の個人企業が主体となり、県内から労働力を供給され、乗組員は血縁的、地域的関係にある。A航海日数が増大し、内地生活期間がきわめて少ない。Bそのため船内生活不適応者が増加し、船内秩序を乱す、傷害事件をおこすなど強制下船者があとをたたない。Cまた希望下船者の理由別からみると、対人不和、長期航海不適応、外地にての脱船が多い。D長期航海における船内リーダーシップの転換が要請される。
3.遠洋まぐろ漁船船員の人間関係(2)
西部徹一 海労調報(18)206〜242(1968)
調査目的:マグロ漁船船員の意識、態度をつかむ。
調査方法:質問紙によるモラール意見調査、リーダーシップテスト、情意生活調ベ。会社、組合の協力をえて各船に配布・回収
調査時期:1967年5月〜9月
調査内容:モラール水準、幹部に要請されるリーダーシップスタイル、情意不安、定着意識
調査結果:@モラール水準は全体的にみて低く、特に甲板部職員の低モラールには問題がある。内容的にみると経営、上司、同僚に対するネガティブな態度が指摘される。A甲板部職員の低モラールと上司に対する不信感が背景となって船内のリーダーシップはむずかしい局面を呈している。Bリーダーシップの現実的担い手はP機能にあっては漁労長、甲板長、M機能では船長、同僚により大きな影響力が見いだされた。C情意不安訴え数は他の職場に比べかなり多く、特に司厨部員は著しい。D幹部の影響力が強すぎると情緒面にマイナスに働く傾向がある。E転職希望者は7割ほどで、転職先の希望は圧倒的に陸上産業に集中している。
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