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海上労働調査報告 第19集 海上労働科学研究所 昭和44年10月
(海上労働科学研究会資料 第13号 海上労働科学研究会)
掲載記事抄録
船橋における情報分析
森清善行、飯田裕康、吉竹 博 海労調報(19)2〜11、(1969)
昭和38年春日丸から船橋における情報分析が開始され、昨年度、超大型船において試みられた。今年度(昭和43年)は国鉄連絡船にて実施した。調査方法は前と同じく船橋において交わされる言語情報とその流れの方向を記録するとともに、テープレコーダーで録音した。宇高連絡船24便、青函連絡船14便で得られた情報を、情報密度、補助情報検索比、情報の流れの方向と頻度から解析した。
結果を要約すると次の通りである。
(a)宇高速絡船の場合
1.情報密度(=総情報数/操船所要時間)は入港時に最も高く、出港時、航海時の順である。
2.出港時の情報密度は経験による差はなく、どの操船者の場合もほぼ一定している。
3.入港時の情報密度は操船者によってかなり変動がみられる。
4.夜間航海中の情報密度は日中のそれに比べて高い。
5.補助情報検索比は航海中に大きく、出港時にくらべて、入港時の方がやや大きい傾向がみられる。
(b)青函連絡船の場合
1.入港時に情報密度がやや多いと思われるが、その他の点で特筆すべき傾向は認められない。
2.入港時、経験年数が多いと、補助情報検索比は小さくなる傾向が認められた。
船員の健康管理の動向
西部徹一 海労調報(19)14〜24(1969)
船員の健康管理は古い歴史をもっているが、現状は決して満足できる状態にはない。疾病、災害とも近年増加傾向を示し、労働力の不足がさし迫っている情勢を考えると、憂うべきことである。診療施設の整備拡充、健康管理システムの確立、安全衛生教育の徹底、予防対策の樹立などが必要である。わけても研究組織をつくり、船員の疾病像を正しく把握することが、何よりの急務である。
船員の死亡・災害・疾病統計の検討
篠原陽一 海労調報(19)25〜29(1969)
船員の死亡・災害・疾病統計は、運輸省、社会保険庁、海上労研、海運会社各社において、それぞれ独自の観点から集計・分析されている。
しかし、それらはどれをとっても、それらの構造・変相などを表現しうるものとなっていない。そこで、それら統計の問題点を指摘するとともに、船員関係者が思いうかべている観念が、それら統計のうえで、どのように裏付づけられるかを検討してみた。その結果、その観念は、統計のうえではかならずしも表現されてはいないが、いちがいに否定されるべきものでないことが、あきらかとなった。そこで、これら統計が、実態をさらに正確に表現し、さらにその防止に役立ちうるようにするため、いくつかの組織的な取り組み方や、統計分析の方法などについて、若干の提言をおこなった。
無管法胃液検査からみた船員の生理について
久我昌男 海労調報(19)30〜36(1969)
無管法胃液検査法は簡易な方法であるから、船内衛生管理者にも推奨でき、多発する船員の胃疾患の船内治療に有効な検査法であるとして、その具体的方法を記述し、筆者の応用例から船員の胃液性状と胃疾患との関連、本検査実施上の注意等を述べる。
機関運転管理システムとしての集中制御方式の検討
神田 寛 海労調報(19)38〜54(1969)
高度集中制御方式の研究に関連し、コンピュータを実用化する揚合、如何なる機関管理システムにおいて、如何なる機関集中制御方式の装備が最も好ましいかという問題を文献を中心として検討した。
(1)航海当直中、計器盤を「じっと見張って」万一の事故にそなえるというような看視作業はさける。また従来の航海当直の考え方を止め、全員でデイリ・ワークとしての機関保守整備作業に当ることを立前とし、諸機械の運転状態の看視、巡視は定められた基準にしたがって定時刻に実施する。したがって第一に聴覚情報によることを主眼とすること。聴覚により異常を知り、ついて原因を視覚により容易に確認できる計装に目標を置くべきである。
(2)機関室には当直者が常時いないので、船橋から主機の遠隔操縦が可能であること。
(3)機関室の異状を適切に関係者に知らしめる居住区警報が必要である。
(4)データの自動記録が必要である。
(5)主機関等停のたのの操作と直接関連する計器については、極力数を少なくして操作を中心に1つにまとめ、人間工学的配慮が必要である。
(6)セントラル・コンピュータを装備する場合には、その特性を十分に生かすためにも、高度の集中制御方式を目標にすることが望ましい。
小型鋼船の騒音、振動調査
神田 寛、小原武史 海労調報(19)55〜70(1969)
東京湾内航行の油槽船、大島航路旅客船を選んで、船内騒音、振動の測定とその評価、乗組員全員の聴力検査を実施した。
@小型鋼船においては、中速ギャードディゼル機関の採用によって、騒音振動とも、大型鋼船と異なった特徴を持っている。
A機関室騒音は大型鋼船に比べて極めて大きい。〔105〜110ホン(A)〕。しかし機関制御室があり、ギャードディゼル機関のため船橋制御が簡単で信頼性も高く、機関室当直はほとんど聴力保護限界以下の騒音レベルである機関制御室内で行なわれている。
B乗組員の聴力検査では、機関部に高音域の聴力損失がみられ、明らかに甲板部との差がみられる。これは騒音性難聴によるものと考えられるが、会話困難となる語音域聴力損失30dB以上の者はいなかった。
C居住区は直接機関室の直上に位置することが多く、一般に騒音レべルは大きい。航海中は75ホン(A)をこえるところがある。大型鋼船では75ホン(A)をこえることは余りない。当面の目標として75ホン(A)以下におさえることである。反面、この種の船は日中運航、夜間停泊というように陸上の生活に近く、夜間の睡眠にはさしつかえがないことが多いという点があり、大型外航船より許容限界を緩和できるであろうが、75ホン(A)以上は居室としては好ましくない。
D振動はこの種の小型鋼船の特徴として、2000c/mというような比較的高い振動数のものが主勢力となって振動感覚に影響する。振動は特に大きいとは考えられないが、しかし騒音がきわめて不快なうえに振動が加わってますます不快さを増すことも考えられ、今後この面の検討と対策が必要である。
外航船における食糧消費構造の変化
矢田貝美保子、小石泰道 海労調報(19)72〜75(1969)
昭和32年から昭和41年現在の約10年間の変動、および一般国民における消費構造との比較を試みた。
穀類では米類の消費が約10年間に1日の消費量が640gから518gと約20%減少した。船員は一般国民に比べて、まだ米食偏重で、小麦の相対的消費量は少ない。
動物性食品は375gで一般国民に比べて消費量は多いが、10年間の変動を見ると、横ばい状態で、内訳をみると魚介類が減少し、卵、牛乳、乳製品の消費は著しく伸びているが、国民一般と比較すると、牛乳・乳製品の消費は少ない。
油脂類は25gで10年前の17gに比べて1.5倍の増加。
野菜についてみると、有色野菜65g、その他の野菜281gで、いずれも10年前より減少した。
果実類では、従来のリンゴ偏重が是正されつつあると思われる。
船員の栄養基準量
小石泰道、矢田貝美保子 海労調報(19)76〜83(1969)
今回は既存の資料を用いて統一的基準量の算定をした。
1.商船(外航船)の熱量は750種の単位仕事のRMRを推定し、ワークサンプリング資料から職種別の熱量を求め、M+Qを求めて給与熱量3,000Calとした。その他の栄養量は「日本人の栄養所要量」に準拠するが、ビタミンBl、B2、Cの実質的な確保に努めるべきである。
2.漁船については、遠洋まぐろはえなわ漁船を指標とすると、給与熱量は操業中3,400〜3,600Cal、航海中2,600〜2,800Calぐらいとなる。
3.乗船中の代謝亢進ないし変動については、未だ充分な調査研究が行なわれておらず今後の課題である。
壮年体カテストと船員の体力
広田弥生、大橋信夫 海労調報(19)86〜90(1969)
「壮年体力テスト」を実施した理由は、@壮年体力テストの目的と条件に合致する。A船員は陸の職業についている人との比較を非常に希望する。B船員での測定は検査者の負担を考え、1種目の測立方法は一つであることが望ましい。C船内で成績が比較できる等である。
測定者数は陸上による船員4種目延べ1,9488名、航海中の船員4種目延べ7,484名である。
陸上にいる船員についてのみ44年文部省発表の一般日本人の値と比較すると、@一般日本人にくらべて船員がすぐれているのは40才未満の筋力だけであり、A職員が部員よりも優れている傾向にあることがわかった。
考察@船上で壮年体カテストの5種目が実施可能であったこと、A壮年体カテストが一つのきっかけとなり船員自身の体力に関する関心が高まったこと、B海上にいる船員の値については実施時の環境条件(風力、波浪、うねり,天候等)、や測定条件を規制すれば陸上との比較ができそうである、C以上3点より陸上で実施する場合の制約を考えれば、今後は海上で実施した方が実際に近い値がでそうである。
海運水産会社の家族対策
神田道子 海労調報(19)92〜102(1969)
海運、水産会社で行なわれている家族対策の実情を把握することを目的とし、昭和43年12月から2月にかけて、郵送法及びインタビュー法によって、海運会社63社、水産会社6社について実施した調査の結果である。
船員及びその家族が、お互いはその動静をとらえ、実情を知るための対策は、各社とも、自社の特色を出しながら、かなり広く行なわれている。家族便乗、面会費用の支給は各社で非常に大きな差がみられた。家族会や家族相談なども最近、活発に行なわれはじめている。家族生活を対象にした福利共済制度は、住宅資金貸付、慶弔見舞金、貸付金制度などは、その内容に差はみられるが各社とも行なわれている。
漁船の海難事故原因の究明
西部徹一、岩崎繁野、篠原陽一、服部 昭 海労調報(19)104〜115(1969)
漁船保険中央会の委託研究として、海難発生にかかわる社会的・経済的な背景を調査することにより、海難事故原因を再検討し、海難防止の努力目標を考える資料とすることを、めざした。調査対象をサケマス流網漁船(釧路港、塩釜港)、遠洋底曳網漁船(北転船、塩釜港、釧路港)、遠洋マグロ延縄漁船(焼津港、石巻港)を選び、船主、乗組員、漁業協同組合、海上保安部、海員組合に聞取り調査を実施した。その結果、漁業の経済溝造からくる経営格差、漁船の機械化にともなう乗組員の知識技能、漁場の遠隔化と操業の長期化による就労形態、漁船の計画的な運航や保全の管理などに、多くの問題点があることを指摘できた。海難原因は、乗組員の知識技能あるいはその技術的行為にかかわる直接的な原因ばかりに注視せず、広範囲な発生原因に目をむけ、総合的な判断が必要であることを提起しえた。
まぐろ漁船船員の家族に関する研究
西部、岩崎、神田 海労調報(19)116〜125(1969)
長期間の出漁日数をもつ遠洋まぐろ漁船船員の船内生活においては、人間関係をもっとも重要視する必要があるが、その背後には、家族の漁業に対する考え方が大きく影響している。そこで留守家族、特に妻の考え方について調査を行ない漁船船員の妻としての意識の究明につとめた。
調査対象は遠洋まぐろ漁船に関係した3地域を選定したが、A、B2地域は漁業基地、C地域は漁船員の給源地という特徴をもっている。そのために地域の慣習その他の影響は多少現われてはいるが、根本的には留守をまもる主婦の漁業に対する考え方には大差はなかった。
またその考え方が漁船船員たる夫の労働意欲に、生産性の向上に、更に海難防止に直接につながっていることについて、留守家族の問題を再認識する必要性を痛感した。
港湾荷役企業の労務管理−横浜港と紳戸港の実態調査−
玉井克輔、篠原陽一 海労調報(19)128〜149(1969)
この報告は、1968年7〜10月に港湾荷役企業の労務管理の実態把握を目的として行なった、横浜神戸両港の港湾荷役企業の労務管理に関するアンケート調査と、両港の代表的港湾荷役企業各5社のインタビュー調査にもとづくものである。
アンケート調査の対象は、横浜港76社、神戸港98社計174社であり、その内容は、基本項目、会社沿革、労務管理の組織、昇進昇給、貸金制度、労働時間、休日休暇、安全管理、福利厚生等々に関するものであり、インタビューは、主に課長以上の管理職者を対象とした。
調査の結果、港湾荷役企業の労務管理は、あげて雇用管理と賃金管理にあるといっても過言ではなく、港により、企業個性・企業履歴により、労務管理の形態は多様でありながらも、その格差の均等化と近代化への志向がみられた。
それにもかかわらず、基本的には企業本来の他律性が、労務管理をも他律的に支配しているため、自己完結を困難にしており、その発展は、雇用構造の変革と不可分であると考えられた。
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