Maritime Labour Research Institute

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海上労働調査報告 第20集 海上労働科学研究所 昭和45年10月
(海上労働科学研究会資料 第14号 海上労働科学研究会)

掲載記事抄録

海難経験に関する調査
狩野広之 海労調報(20)1〜3(1970)
 この報告は、操船技術の本質と海難事故に関する諸要因について、何らかの手がかりをうるため、経験の多い船長及び水先人に面接し、その海難及び操船一般に関する事項について、意見を聴取したところを取りまとめたものである。調査は昭和42年、7名の船長との個人面接、座談会、及び6名の水先人の座談会によっておこない、その中から問題点を摘出する方法をとった。
 海難に関連のある心理的要因としては、操船運航にあたり操船者の知識経験にもとづく予測機能が、操船上の情報の取捨選択、総合判断、意志決定等のプロセスに、大きな要因として作用していることを認めた。
 操船技能の主なる特色は、情報の収集、総合判断及び意思決定にわたって時間的制約があり、且つ試行錯誤が許されないところが、他の高度の技能に比して際立った特性であると認めた。

国鉄連絡船船長の操船時の精神的緊張について
大橋信夫、広田弥生 海労調報(20)4〜12(1970)
 これまでに観察してきた操船時の心拍数の変動について、個人内あるいは個人間の差を考察するとともに、運動性能や情報取得システム、操船条件あるいは慣れなどの影響を検討するため、国鉄連絡船船長を対象として調査を行なった。その結果、@出船づけで着岸する際は心拍数の変動は大きく、かつ個入差は少ないが、A入船づけで着岸する際は個人差が大きい、B同一個人では離岸時より着岸時の方が心拍数の変動が大きい傾向にあるなどが判明した。なお、これまで報告してきた大型商船の例と比較すると変化はあっても心拍数のレベルがあまり高くはならず、これは、運動性能、情報取得システムが、より秀れていること、および慣れのためと考えられた。

各種視覚検査基準について
神田 寛 海労調報(20)13〜19(1970)
 船舶職員試験の視力色覚検査基準の検討資料として、わが国の船舶職員法による視力基準、防衛庁の検査基準、国鉄健康管理基準による視力色覚検査基準、航空法による検査基準を集録した。

視力と作業能力に関する実船実験
神田 寛、小原武文 海労調報(20)20〜29(1970)
 海難防止協会の視覚検査基準研究委員会の作業班として、東京医大、航海訓練所の協力を得て実施した。
 海技試験における視力検査基準において、現行の基準に定められた根拠が明らかでない。また現行基準の最低の視力のものが果して職務を遂行する上で支障がないものかどうかも明らかでない。このような点より、航海士および機関士が行なう代表的な視覚的作業を取り上げ、近視の程度と作業遂行の支障の程度との関係を検討するため、実船において実験した。
 遠距離物標看視作業(昼間)では、橋脚、旗竿、灯浮標、信号所塔、信号所の信号灯火等を看視対象に選び、航海士の視力を凸レンズを用いて視力を段階的に低下させ、視認の程度を測定した。視力1.0の場合にはすべての看視対象が良く視認できるが、段階が下るに従って悪くなる。しかし視力0.6以上であれば作業遂行上特に大きな支障はない。
 パネル計器の看視では、視力0.3以上の場合、特に大きな支障はない。レーダー看視作業では、方位目盛、英文字、接近した船の映像などは近距離のため当然問題がなく、視力0.1で視認がやや困難となる例がみられた程度である。
 天測作業の場合の恒星看視作業では、視力0.6以上あれば特に大きな支障がない。視力0.4の場合には、星の所在位置が予め見当がつく場合には可能のようである。

夜間における船舶用標準灯の視認力に関する実験的検討
神田 寛、小原武文 海労調報(20)30〜49(1970)
 現用の船舶用標準色ガラスに近い点光源の閾値を求める実験Tと、マスト灯(白)、げん灯(紅、緑)、船尾灯(白)、ならびに漁ろう船、引船等種々の灯火パターンの視認力実験Uを凸レンズによる視力段階との関連で実施した。
 実験Tでは,船舶灯の視認距離と天気状態との関係を求めることができた。快晴(大気透過率τ=0.87〜0.7)の下限から上限において、白灯は5〜7.2浬、紅灯は4〜5.4浬、緑灯は2.3〜2.8浬となった。さらに天気状態が悪くなってτが小となる程いちじるしく視認距離が小さくなる。特に緑灯の見にくいことには注目すべきである。実験Uでは、船長、航海士として視力(両眼)1.0以上あることが望ましいことがわかった。すなわち、0.5浬では視力0.4以上あればよい。1浬では白、紅灯の灯火パターンでは視力0.6あればよいが、緑灯の含まれた灯火パターンでは視力1.0でも視認され難い。1.5浬では白、紅灯のパターンは視力1.0でよく視認されるが、緑灯が含まれると同様にいちじるしく低下する。ここでも、緑灯の含まれた灯火パターンの視認されにくくなることには注目すべきである。
 船長,航海士の必要とする視力について考えてみると、(a)裸眼または矯正視力にかかわらず、両眼視力1.0以上あることが望ましい。(b)矯正視力が認められず、裸眼視力のみ許され、なお双眼鏡を常備して使用できる場合、裸眼視力(両眼)0.6以上あることが望ましい。

船員の健康管理のあり方について
久我昌男 海労調報(20)48〜67(1970)
 船員の健康管理のあり方について具体的に述べている。健康手帳を完全に整理して各人に携帯せしめ、船舶衛生管理者をもって健康手帳の整備を完全ならしめ、もって船員個人の健康実態を把握し、さらに、CMIにより健康のスクリーニングを行ない、この組み合せから精密診断を指示し、健康管理を完全に遂行するよう努力しなければならない。
 なお、新採用船員に対する適性については特に船員勤務の実態に即した検査項目によって、その個人に対する健康管理を有益なものとしなければならない。
 以上の考え方に立ち、船員健康管理カードの具体例の提案と実施方法、船員保健衛生手帳の提案、諸検査法、健康相談機関の設置の必要性、傷病頻発常習者に対する対策等について詳述されている。

ペルシヤ湾航路タンカー乗組員の生理
久我昌男、鈴木由起生 海労調報(20)68〜86(1970)
 外航船乗組員にとって最も厳しい環境の一つと考えられる酷暑期のペルシャ湾往復航路のタンカー乗組員の生理を検討するために自律神経機能検査、生化学的検査と心電図、脳波の側定を行なった。その結果、自律神経検査では乗組員45名中、21名が陽性反応を示し、生化学的検査の結果と合わせて、船の動揺による慢性の船酔症ともいうべき事実が認められた。心電図では往航時不整脈を示す乗組員が多くみられたが、復航になると減っている。脳波では、徐波成分が多いことが目立ち、乗組員の意識水準がどちらかといえば低下していることを示した。このことは不眠症、ひいては神経症にもつながるので、余暇の利用を、運動をするとか、読書をするとか、有効にすることが必要であることが示唆された。

船内体育室について
広田弥生 海労調報(20)87〜101(1970)
 船員の体育活動を振興させるには、体育管理の面からは、Program service、area service、Club serviceが考えられる。今回はそのarea serviceの一つである船内体育室に考えてみた。従来の日本の船には、運動のできるスペースをもった船は昭和36年以降徐々につくられつつあるが、陸上の体育室、体育館といういわゆる床が木又はじゅうたんの体育室はまだ設計されていなかった。そこで今回は、第一中央汽船に木の床をもった体育室ができることになったので、今後船に体育室をつくる場合には考慮してほしいことをあげ、今後の船内体育室の一資料として活用されるようここに記載する。

船員労務のコミュニケーション管理に関する研究
西部徹一、藤島良雄、神田道子、篠原陽一、大木修次、岸田孝弥
海労調報(20)102〜134(1970)
 海運会社における船員労務管理におけるコミュニケーション機構、海陸間コミュニケーション状況、船内コミュニケーション状況について実態調査をおこなった。この調査から、海運会社は管理手段を船内管理者との個別的な接触から、乗組員との直接的な接触に重点を移し、それに広報的な手段で補強する傾向にあるが、それらについての目標設定、手段整序、効果測定には管理意識が不足している。海運会社と乗組員とのコミュニケーション状況は会社が乗組員にあたえる情報の報酬性、一貫性、権威の高さ、乗組員の会社に対する好意度要望のひろがりなどに依存している。船内ファストリセプターの評価・態度、それとオピニオンリーダーとの対抗関係などに依存している,船内コミュニケーション状況は船内管理者のリーダーシップ、インフォマルグループの状態、海陸間コミュニケーション状況に依存しているなどが、あきらかとなった。

別冊 漁業港運編
掲載記事抄録

漁労機械化が漁業労働に及ぼす影響T 以西底曳漁業調査
小石泰道、服部 昭、山岡靖治
 水産庁より委託された新技術漁業労働調査の第1年度(昭和43年)分の要約である。 本調査は漁業新技術が漁船員の労働形態、労働強度、生活条件等にいかなる影響を与えつつあるかの実態を明らかにし、今後の対策に資するものである。
 以西底曳船のスターン型(新)とサイド型(旧)では、乗組員数は変らないので、網の大型化、投揚網の能率化により、一網あたりの労働生産は向上した。これによる乗組員の労働負担への影響をみると、@勤務時間が長くなり、睡眠時間が短縮した。A時間あたりのエネルギー消費量は変らずに労働時間が伸びているので、漁労機械を作業負担面から開発することと船内勤務の合理的な基準化が必要である。

港湾労働の時間的構造と労働負担
小石泰道、玉井克輔、久我昌男ほか
 昭和43年に運輸省港湾局より委託された港湾実態調査結果の要約の一部である。
 横浜、神戸、東京3港における船内労務者の稼動分析、エネルギー代謝率からみた労働強度、生活時間と労働負担の実態分析を試みたもので、この領域としてはおそらくわが国最初のものであろう。
 結果としてつぎのことがいえよう。@労務者不足にかかわらず定期船荷役における不稼率が高い。その結果過長時間労働を生み、労働力再生産を阻害している。Aエネルギー代謝率、疲労検査からみると軽い労作から重い労作まであり、作業別の実態に即した配員や休憩制など科学的な管理の導入が必要である。B単位時間あたりの労働生産制をひきあげる一方、睡眠、食事、社会的文化的生活などの改善の具体策が緊急である。

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