|
海上労働調査報告 第21集 海上労働科学研究所 昭和47年3月
(海上労働科学研究会資料 第15号 海上労働科学研究会)
掲載記事抄録
船員の技術革新に対する意識・態度について
篠原陽一 海労調報(21)1〜12(1971)
中核6社43隻の乗組員1,162人に対して、海上輸送における技術革新の観念と実体に関する多面的なアンケート調査を実施し、船員の技術革新に対する意識・態度の実相を分析した。船員は、技術革新の観念的形態についてはかなり肯定的な評価を下だすが、実体的な形態についてはひじょうに否定的な評価をあたえる。技術革新の導入について、当初は肯定と否定との態度が葛藤をつづけるが、具体化にともない諦観的な態度がしめさるものの、当初の態度はけっしてぬぐいさられない。技術革新にともなう社会的な期待は、功利的に高まるものの、船員職業から逃避しようという態度はつよまる。船員は、技術革新について行動としては、海員組合の政策に依存せざるをえない情況にあり、海員組合の動向によって戦闘的にも後退的にもなりうることなどがあきらかになった。
技術革新に対する態度と職業意識
神田道子、(青木修次) 海労調報(21)13〜24(1971)
この調査は船員職業適応研究会で行なった「高度な技術革新の進展にともなう職業適応と労務管理に関する調査研究」の一部であり、船員の生活意識、職業意識の実態及び船舶の技術革新にたいする態度との関連を明らかにすることを目的とし、851人についての調査結果である。
内容は技術革新にたいする態度、船員職業にたいする評価、船員継続観、仕事におけるやり甲斐など、労務管理にたいする態度としては、賃金形態、勤続年数と昇進、経営及び組合、配置、賃金と休暇、家庭生活などにたいする考え方など、生活意識としては、仕事観、生活観、生活目標、生活評価などを明らかにしている。そして、それらのいくつかについては技術革新にたいする態度との関連について検討している。
コンテナー船における船内生活および船内作業について
青木修次、山岡靖治、大橋信夫 海労調報(21)25〜37(1971)
コンテナー船の出現により、少数定員化の傾向は現段階におけるワンステップをふみだしたように思われる。また、同時に甲板部の作業に質的な変化をもたらしつつある。このような状況下にあるコンテナー船に乗船し、乗組員の作業、生活について在来船と比較しつつその変化をとらえることを主旨として調査が実施された。
調査対象 加州航路コンテナー船2隻
調査日時 A丸 1969年11月7日〜12月12日
B丸 1969年12月27日〜1970年1月26日
調査内容 1.コンテナー船乗組員の生活時間と作業
2.自由時間と対人関係
3.航海サイクルと船内生活
船長の職業意識
小石泰道 海労調報(21)38〜65(1971)
この調査は,昭和45年,日本船長協会からの委託によって行なわれた。大型船船長の地位の向上、職業の安定に資するため行なわれた意識調査である。
アンケート内容は、船長の社会的地位の評価、職業成長牲の評価、資格要件の一つとしての資質能力の自覚、昇進、陸勤、転職など職業移動の実態、職業移動と生活歴の対応関係、職業継続観と不満内容との対応、社内における地位役割と欲求不満、リーダーシップ型の特色、欲求充足における一般管理職との比較などである。
現職船長の40%が早期転職を希望しているが、転職希望者は、生活の安定などの充足感より能力発揮、仕事のやりがいなどにかかわる自己実現欲求の充足感がない。また、一般管理職に比し船長の地位を過小評価する者も、こうした欲求充足感が低い。反面、経営管理的な性格が強まると自覚する船長には欲求充足の低い者が少なく、仕事管理のリーダーシップ得点の高い者は、経営や仕事管理面における満足度も高いなどの傾向を示した。したがって経営における仕事欲求の満足、能力発揮の満足を高めるよう、企業内教育や職務評定をすることが重要であるとみられる。
内航海運における新人船員の定着に関する調査研究
神田道子、青木修次、吉川栄一、新井真人 海労調報(21)66〜76(1971)
内航海運における新人船員の定着についての実態及び定着意識、内航海運会社の労務管理などを明らかにすることを目的として調査を行なった。内訳は下記の通りである。
1.内航労務団体協議会に所属する約180社の船員労務管理の状況−新人船員の採用を計画、入職教育と配乗管理、海技免状取得の援助と対策、昇進昇格の基準と管理、福利厚生の特徴などについて明らかにしている。
2.新人船員の採用と退職の実状は、164社で最近3年間に採用した3,894人の新人船員について、定着状況を明らかにし、さらに、その定着状況と会社の労務管理実態との関連をみている。
3.船員調査は、新人船員約600人について、定着意識の背景となる属性、入職過程、職場生活の実態と意見、教育訓練、免状取得、流出可能性とその状況について明らかにし、その上に、定着意識については会社定着傾向による比較、定着パターンによる比較を行なっている。
夜間海上色光に対する色弱者の誤認調査
神田 寛 海労調報(21)77〜84(1971)
船長、航海士にとって、夜間の船舶灯、航路標識灯などの視認で色混同をおこすことはきわめて危険である。現在、海技試験では色弱者も合格とされているが、この色覚異常者がはたして実船で夜間灯火の色光をどの程度誤認するのか検討した。被検者としては視力正常、色覚は第2色弱軽度の男子3名、瀬戸内海航路の客船に乗船して、船橋で検者が指摘した色光を判読させた。この結果では、黄(白)20.8%、赤16.6%、緑29.7%の誤認があり、船長、航海士としては問題があるようである。また船長、航海士に必要な程度が色弱微度または極微度の範囲にあることになり、従来の色盲検査表(仮性同色表)では判定が困難である。したがって、海上でみる灯火の色光を中心とした色混同をおこしやすい色光の組合せによる1antern
testを検討試作することが望ましい。
実船における夜間灯火の視認力実験
神田 寛 海労調報(21)85〜86(1971)
船長、航海士に必要な視力に関する検討を実施した。船上より見える灯火をすべて目標とし、げん灯、灯浮標、マスト灯等で、色光は赤、緑、黄である。視力は板付レンズ(0.25ヂオプトリーづつの差によって各段階の度数を有する凸レンズからなる)により低下させた。船上実験の結果ほぼ0.6以上の視力がないと色光を発見しこれを確認することは困難のようである。色光を光点として視認するには相当視力を低下させても可能であるが、確実に色光を区別するにはかなりの良い視力が必要であることがわかった。
船舶用防火服に関する研究
神田 寛、小原武文 海労調報(21)87〜99(1971)
IMCO(政府間海事協議会)で、国際海上人命安全条約改正条文(1965年)による消防員装具の内容および数量の変更が決定された。わが国でも数年後のうちに防火服が法定備品となることが予想される。このような状況を考え、船内における消火活動、人命救助作業等の特殊性も考慮して、今まで全く手のつけられなかった船舶用としての防火服を検討した。防火服はアルミナイズド布を主とした服本体と、フード、手袋、半長靴、空気呼吸器具よりなり、重装備のA服(22.12kg)と軽装備のB服(19.30kg)を試作し、高熱暴露で作業負荷を与えて生理的実験、その着脱の容易さ等から比較検討した。B服は着脱にきわめて有利であり、生理学的実験でもA服に余りおとらなかった。ただ、高熱条件が特にきびしい場合にはA服となるであろうが、この場合フード前面の曲面強化ガラスに熱的な弱点があった。
船員の体力について
広田弥生、大橋信夫 海労調報(21)100〜129(1971)
この体力測定の集計は、1968年を第1回とし今年で3年度になる。初年度は19集5編にあるように実際に船上で体力測定が実施可能かどうか、また測定結果が日本人平均と比較できるかについて検討した。1969年には測定種目そのものの実施のなれが測定値の上昇をどの範田までもたらすかを主として検討した。今年度は、握力をのぞく他の4種目は、ほぼ、検査者、被検者双方の初期の習熟期間が終わったことが推察できた。測定は1970年9月〜12月に行われ、1月〆切りで60隻分の船員の値が得られた。分析は@職種別、A船種別、B船種別航路別に行なった。その結果、日本人平均と比較して、職員は敏捷性はすぐれており、他は差はみられず、部員は逆に瞬発力と持久力に劣っていることがわかった。考察の結果、これらの差は船員の比体重が大きいことと運動実施状況に無関係とはいえないことがわかった。
野菜・果実類の廃棄率に関する実験調査
小石泰道、矢田貝美保子 海労調報(21)130〜144(1971)
船員給食における野菜・果実類の船内廃棄率については、はやくから労働科学研究所において、実験およぴ実態調査が行なわれていた。昭和44年の船員法食料表改正に際し、これらの資料を整理したが、現時点において改めて実船実験を行なうことになった。
実験は、昭和45年、46年にわたり、夏冬2回、航海訓練所の練習船の協力を得て行なわれた。その結果、36品目について、庫内目滅率、廃棄率、乾燥、腐敗、カビ発生の状態変化をほぼ一週間おきに記録することができた。また船内給食上の限界日数も、品目ごとにつかむことができた。しかしながら、廃棄率に関係する因子はなお多様であり、科学的方法のみによってこれを設定することには、困難がともなう点が一般に理解されることが望まれる。
|