Maritime Labour Research Institute

財団法人海上労働科学研究所
    

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海上労働調査報告 第5集(労働科学研究所報告) 運輸省船員局 昭和27年12月

第1篇 船内居住環境に関する調査研究報告
1.バーレソ航路におけるタンカーの居住環境について
篠原隆政 海労調報(5)1〜46(1952)
 熱帯海域航行中の船舶の居住室について、主として換気通風装置の在り方を、日本−ラスタスラ間を航行するタンカーにおい実施した実態調査に基づいて検討を加え、あわせて各種の保険衛生的諸条件について言及した。
 換気については、その効果を検討するためペッテンコーフエル氏法による実験調査も行なった。
その結果、機械換気は極めて有効であるが、放気孔ノズルの向け方に対する注意が肝要なこと、自然換気方式としてのMushroom Ventilatorも有効ではあるが、これはあくまで機械換気方式と総合的に検討した上で併用すべきものであることなどの諸点が明らかになった。その他の衛生学的諸条件については、照度の不均一性、騒音の高レベルなどの問題点が多々摘出された。

2.夏季における換気を中心とした居住環境について
石堂正三郎 海労調報(5)47〜63(1952)
 船員居住室の適性化の為の継続的な調査研究の一環として51年夏季に行なった調査の報告で、停泊船数隻を主として居住室の換気条件と室内空気の汚染度についてしらべ、実験的な調査をも併せて行なった。その結果、居住室の温度は常時外気温度より高く、従って居住条件としては好適でない状態にあることが共通にみられ、その原因として、換気条件の影響が大きいと考えられる。また、機械換気方式としては、排気方式よりも給気方式の方が効果的であり、それも天井部からノズル方式で行なうのが望ましいなどの諸点が明らかになった。

3.冬季における換気暖房を中心とした居住環境について
石堂正三郎 海労調報(5)64〜82(1952)
 船員居住室の冬期における環境衛生学的条件の実態と暖房、換気設備の効果についての検討を主目的として、51年冬期に、内地航海中の大型船1隻、内地停泊中の大型船1隻を対象として調査を行なった。室容積、温室度、塵挨、細菌、炭酸ガス、騒音などを測定項目としたが、その結果、下層の甲板にある部屋ほど、換気条件は悪くなり、気積が充分で且つ通風戸を開放していても、炭酸ガス濃度は増大し、この主たる原因は、機械換気設備に不備な点があること、また温熱条件としては、温度が高く、湿度が低いが、これは暖房設備の管理の不適当によること、などの諸点が明らかになった。

第2篇 船員の疲労に関する調査研究報告
1.バーレン航路におけるタンカー乗組員の疲労と栄養について
黒江敏治 海労調報(5)83〜114(1952)
 1951年、9〜11月間にタンカーS丸に乗船調査した結果の報告。その中栄養調査以外の報告については1航海を3期に分け、各期3日間調査をした。
 @生活時間。睡眠時間には期間別変化はみられないが、睡眠効果の自覚は次第に悪化していく。
 A情意生活調査では全員に情意不安傾向がみられたが、前期がとくに訴点大。
 B作業後症候では甲板部員、サロン職員、メスルーム職員、機関部員の順に逓増。
 C体力測定では体重、握力、上腕囲、肺活量、止息、血圧、膝蓋腱反射のうち航海中の変化は握力の逓増と上腕囲の逓減がみられた。
 Dフリッカー値では内地出港後7日間は上昇期、その後2〜3週間は低下をみせ、疲労期といえる。時刻別にはこの期間は午前値より午後値が高く慢性疲労の兆がみられる。職種別格差はつかめず、航海経過による影響の方が強いとみられる。
 1951年9月〜11月、M社タンカーS丸に乗船し、40日間標記の調査を実施した結果の報告。調査項目 A.生活時間、睡眠、情意生活、疲労部位、作業後症候。B.疾病症侯、栄養障害の問・視診。C.体力測定、フリッカー値測定。
 @調査表による食材料使用と栄養摂取状況−平均2,170カロリー(給与量)、ビタミン補給に問題あり。
 Aビタミン保持状態−横浜出港時、帰港時、入渠時の3回にわたり尿中ビタミン濃度を測定。とくにB1とCの著しい不足がみられる。出港時の不足も問題。
 B視診−出港時すでに歯齦の変化あり、尿中ビタミンCの不足と対応。ビタミンB、Cの補給を強力に行うことが必要。

2.内海小型客船における乗組員の疲労について
大島正光 海労調報(5)114〜128(1952)
 1951年5〜6月に阪神〜高浜航路の小型客船]丸に乗船し、内海の小型客船の特殊性を摘出しようとした調査報告書。調査項目は生活時間調査、作業後症侯調査、情意生活調査、睡眠状況調査、フリッカー検査。
 @短時間の連続入出港でまとまった睡眠がとりにくいので不足がちで、居住設備面での配慮が必要。A作業後症候では一般の近海航路船の事例より訴えが多く、とくにマリンガールの訴え顕著。B情意不安は案外よく、接客や上陸の機会が多いことも影響しているとみられる。C船長、航海士のフリッカー値を4日間測定した結果では逐日的低下がみられ、慢性疲労の傾向。Dほかに航海士の航海当直について、当直制、視覚暗順応、計器の高さ、航路標識など物的システムの問題にもはじめて言及。

第3篇 船内食料の貯蔵に関する調査研究報告
1.野菜、果実の貯蔵による栄養価の低下について(第1報)
高木和男 海労調報(5)128〜152(1952)
 船内食品の貯蔵による栄養価の低下を最小ならしめるため、貯蔵研究に着手した第1報。1951年9月、氷冷蔵庫(4℃)とすかし箱により、野菜の貯蔵実験。
 @食料貯蔵と栄養価損失に関する文献概観。
 A長ねぎ、ほうれんそう、京菜、白菜、キャベツ、大根、かきについての貯蔵実験報告。 食品ごとに各種ビタミン含有量の変化、可食率の変化を報告するとともに貯蔵限度を推察する。

2.野菜、果実の長期貯蔵による栄養価の低下について(第2報)
高木和男 海労調報(5)153〜166(1952)
 玉ねぎ、ばれいしょ、にんじん、りんご、みかんについての貯蔵試験結果の報告。
試験結果の総括として、@ビタミン含有量の変化 a.貯蔵変化はAとCにあらわれ、B1、B2は少ない。Cも予想したほどは減少著しくなかった。b.京菜、かきのA、りんごのB1のごとく一時的に増加を示す場合もある。C.一般に減少顕著になるのは腐敗直前であり、腐敗防止対策が肝要となる。
A貯蔵可能期間については、a.収穫期、貯蔵方法、産地等の影響がみられる。b.実験結果からみた食品別貯蔵可能限度をある程度明らかにし得た。

3.米麦の長期貯蔵による栄養価の低下について
高木和男 海労調報(5)167〜173(1952)
 @1951年、16隻について内地出港時と帰港時の船内貯蔵米を採取し、ビタミンB1を測定。結果、航海日数の延長とB1含有量の逓減がある程度みられた。
 A別にバーレン航路船で、各種包装および防虫剤使用のもの1リットルづつをサンプル貯蔵試験。
 この予備的調査からつぎの見通しが得られた。
 1.ライスストアの位置はなるべく機関室から遠ざけること。2.害虫防止から米俵の使用をさけること。3.米を密封貯蔵することにより、防虫効果とB1の保存効果をあげうるのではないか。4.もし、なおB1の低下が見られるときは、つぎの2つの対策が考えられる。a.庫内温度を低下させる方法。b.ビタミンB1剤の混炊方法。

第4篇 船員の精神機能と体力に関する調査研究報告
1.船員の精神機能検査の結果について
狩野広之 海労調報(5)173〜179(1952)
 昭和26年7月海技専門学院生146名、商船大学生143名に対し狩野式知能検査、継時判断テスト、クレペリン検査、運動機能検査を実施した。航海士、機関士の作業は、一般に著しく変化する外界の状況を綜合して、迅速に適切な判断を下すことが要求されることから、それに必要な機能をテストする方法の検討を行なった。知能検査については、海専生より大学生の成績が、また機関科より航海科の成績が良好であった。継時判断テストは順次に与えられる刺激を綜合推理して一定の法則制を発見させることを目的としており、成績は知能検査とほぼ同様な傾向であった。クレペリン検査は一般人の成績分布に比べ著しく優秀であった。運動能は一般に優秀であった。

2.船員の体力検査の結果について
石井雄二 海労調報(5)180〜189(1952)
 昭和26年7月海技専門学院生、船員計138名、商船大学生147名に対し負荷試験(手押式手動労作計)、身長、体重、握力、視力、平衡機能、吸気量、呼吸数、脈波、脈拍数、フリッカー値の測定を行っている。特に負荷試験によって生体の機能の変化から体力判定を試みている。
各検査成績を段階評定し、航海科と機関科との体力を比較すると、航海科には巾育、視力、平衡機能の成績が優秀なものが多く、機関科には循環機能、呼吸循環機能、フリッカーのが優秀なものが多い。呼吸機能については両者の間に成績の差が見られなかった。その他、海専学生と商船大学生との体力の比較、体力の年令差について検討が行なわれている。

3.海員養成所生徒の資質能力について
狩野広之 海労調報(5)189〜203(1952)
 昭和26年5月新船員の採用基準設定の目的をもって海員養成所生徒約800名に対し桐原ならびに狩野式知能検査、情意生活調査、運動能、クレペリン、向性の各検査、身体検査(身長、体重、胸囲、肺活量、坐高、上腕囲、屈伸差、跳力、柔軟度、身体平衡能、懸垂、止息時間)を実施した。精神機能検査については、各項目とも養成所別にみるとかなり地方差があり、また、少数ではあるが低劣者あるいは異常者が見られ、採用に当ってこれらの者の排除が望ましい。身体険査については、全般的に発育状況は良好であり、地方差がやゝ見られる。航海科機関科の間には体力体型の上で差が見られる。具体的な基準設定には、累年判定を行う必要がある。

第5篇 船内における勤務方式と作業基準に関する調査研究報告
機関員の休憩時間に関する実験的研究の結果について
三浦豊彦 海労調報(5)204〜216(1952)
 機関員が高熱のもとで作業をつづける場合の休憩の挿入の方式について、機関員2名を労研人工気候室で、自転車エルゴメーターを用いて実験を行い(S27.8〜9)安静時における高温の影響をみるとともに、労働時間に対する休憩時間のあり方をさぐっている。高温の影響は循環機能(脈拍数)と直腸温を中心としてみている。その結果、こうした労働を45℃、50℃の下では一時間行うことは不可能に近く、又休憩時間についても、30分休憩では不足であるということがいえた。なお35℃においても30分の休憩ではやや不足である。

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