|
財団法人海上労働科学研究所
|
研究調査の概要昭和45年度1.新技術が漁業労働に及ぼす影響に関する調査研究
担当者 服部 昭,山岡靖治
新技術漁業労働影響調査報告書,1〜95(71.3)
昭和43年度「以西底曳網漁業」,昭和44年度「まき網漁業」に引続いて45年度は「まぐろ延なわ漁業」を対象にし,西経漁場でリール方式によって操業した漁船に乗船調査を実施した。調査目的から本来ならば,在来の方式によって操業する漁船にも乗船調査すべきであったが船のスケジュールが不確定であり,かつ乗船調査期間が長期にわたる等の要因によって,在来船については,それができず既存の資料を活用した。乗船調査した調査内容は,前年と同様である。
リール方式の採用によって,乗組員数は,35名から26名と9名減っている。このことは投縄工程でみると,投下工数,作業速度の変化を生み,エネルギー代謝率が高くなっている。揚縄工程のそれは,低くはなったが長時間労働という要素は,依然としてかわりがない。
単にいままで手作業で行っているのを機械に置き換えるということだけでなく,大きくみれば漁法それ自身に新しい考え方を導入しなければならない。
2.航行管制における人的要素の研究
担当者 大橋 信夫
本研究の目的は,狭水道,港内において多発する海難を防止するために必要な航行管制のあり方を検討することにある。本年度も過去数年にわたって行なってきた操船技能の解明に関する研究手法を用いて乗船調査を実施し,狭水道(伊良湖,浦賀,友ケ島),港内(名古屋,横浜,大阪)における操船情報の内容と,その収集手段および意志決定に至る過程の分析とその間の心拍数の変化の測定を行なった。航路分離のおこなわれているところでは,反航船に対するよりも同航船に対して,より多くの注意が払われていること,注意の範囲がある程度数量的に把握できたことが主な結果としてあげられる。
なお,この乗船調査の他に,大型船の船長を対象として,質問紙調査を行ない,約400名の意見のとりまとめを行なうと共に,海難審判の審判過程を傍聴して,実際に起きた海難について,その結果だけでなく背景などについての検討もあわせ行なった。
これら三つの主要な調査は引き続いて実施をしてゆくが,今迄のところ,狭水道や港内において,操船者が,必要とする情報を,確実なもの,信頼できるものとして把握することが困難なことが明らかとなっている。
3.船内振動の許容基準化に関する研究
担当者 神田 寛,小原 武文
ISO Recommendationとして全身振動の許容限とその評価方法がだされているが,これを船に適用するには二三の問題がある。船体振動の許容限は人間の乗心地の面から判定されるのが普通であり,これまで多くの研究成果があるが,しかし定量的に把握し難い感覚を物理量である振動の大きさと関連づける決定的なものがない。そこで実船についてISOで定められた計測方法で物理量を測定し,振動感覚の測定にはSemantic Differential
Methodによる新しい心理学的手法を導入して,感覚量と物理量との相関関係を検討した。
実験船として練習船進徳丸に乗船したが,この実験結果でこの実験方法が有効であることを確めた。この後,SRl12部会で鉱石船2隻を同じ方法で測定することを依頼し,これらの資料を解析検討中である。これらの研究の概要は,ISOの会議に報告されるよう原案を作製中である。
4.操船における視覚機能と設備に関する研究
担当者 神田 寛,小原 武文
操船の責任者である船長,航海士の作業は,視力色覚などの視機能にたよる面がきわめて多い。なかでも昼間においては遠距離物標看視,夜間においては恒星観測,船舶灯または航路標識の灯火などの視認作業等他の職種にはみられないきびしい視機能が要求される。このような点より船長,航海士が行なう代表的な視覚的作業をとりあげ,近視の程度と作業遂行の支障の程度度との関係を明らかにした。また色覚の関係では,海技試験合格の範囲にある色覚異常者が実際の海上にあって,夜間の色光をどのように判読するかを瀬戸内海航路で乗船実験した。これらの視力色覚と船長,航海士の作業能力に関する実験的検討は,船内設備,航路援助施設,陸岸施設等のあり方に対し一つの示唆を得ることができた。
5.低温環境労働の人体に及ぼす影響について
担当者 岩崎繁野,服部 昭,山岡靖治,(海上労研)
沼尻幸吉,渡辺明彦,松本一弥,野村秀子,肝付邦憲(労研)
低温環境労働科学的調査報告書,1〜155(7.3)
漁船乗組員の冷凍作業に関し,45年度は,つぎの調査研究をした。
(イ)出漁中の傷病発生記録の分類をするとともに,−20℃の冷凍作業者の傷病の特徴をみた。
(ロ)遠洋まぐろ漁船に調査員2名が便乗し,低温環境下の作業状態,自覚症状など実態調査をした。
(ハ)陸上の低温実験室において,被験者3名に漁船内の作業と類似の作業を行わせ,エネルギー代謝量,皮膚温,直腸温,血液や尿の生化学的分析を実施し,冷凍作業の基準作成の資科を得た。
6.技術革新にともなう船員の職業適応に関する社会学心理学的研究
担当者 青木修次
船舶の自動化の進展に伴なう船員労務管理システムに関する研究(第1報),東京商船大学研究報告(人文科学)21,10〜21("70.10)
昨今の船舶のめざましい技術革新は,船員職業環境の変化として,把えることもできる。このような職業環境の変化は,必ずや船員の意識にまで影響を及ぼすことが予想される。技術革新の効果についての評価は,技術体系からだけでなく,人間の側の体系からも評価されねばならない。そこで外的な諸環境の変化に,船員がいかに適応していくか,またはどのように調整をとりつつ技術体系を変えてゆくかが問題になってくる。
45年度は,コンテナ船に乗船し,(イ)生活時間構造,作業構造の変化,(ロ)船内対人環境の変化を調査した。その結果,対人環境の変化にともなう船内生活と船内管理の問題が指摘された。
7.船員家族生活の実態と問題点に関する研究
担当者 神田道子
口ノ津,加津佐地区に居住する船員家族のケースについて,(1)年間家族生活日数及びその方法,(2)面会にいった場合の面会地,期間別の費用,(3)有給休暇中の船員の生活時間構造などについての実態をとらえた。調査期間は昭和45年5月から昭和46年4月までである。家族生活機会として,有給休暇は当然であるが,それを補うものとして面会の果す役割は依然として大きい。今後の船員の家族生活は,船員が家庭にかえるという基本的形態の上に面会や家族の乗船を選択しうる形態として位置づけていく必要があると考えるが,このような視点から船員の家族生活の実態をみた場合,そのずれは非常に大きい。
8.運航技術変化に適応する船員需給問題に関する研究−口之津・加津佐町の船員給源状況について−
担当者 篠原陽一
船舶の自動化の進展に伴なう船員労務管理システムに関する研究(第1報)東京商船大学研究報告(人文科学)21,21〜49("70.10)
船員労働問題のなかで船員需給問題はつねに取り上げられているが,それは主として労働力の需給の量的バランスの問題であった。最近,船員の供給不足が問題となっているが,この解明には給源の性格を分析しなければならない。
そこで,伝統的な船員給源地域と呼ばれるところを数カ所選択し,船員給源地域としての形成と変動,船員給源家族の継続と交代,さらに船員給源地域としての将来性について実態調査することとした。その一つとして,長崎県南高来郡口之津・加津佐町の実態調査結果を分析したが,零細農耕地域に資本主義経済が浸透して農民層の解体が進行していくにしたがって,船員供給力が増加してきたという一般的な法則的な確証のほか,地域人口の絶対的な減少と船員家族の世代継続の先細りなどから給源縮少があるいっぽう,総合農政にともなう零細農家の切捨てなどから給源拡大もみられるという具体的な形態があきらかとなった。
9.船内生活を背景とした職場体育とその指導法に関する研究
担当者 広田弥生
船員の体育活動を振興させるには体育管理の面からは Program Service,Area
service,Club serviceが考えられるが,今回はその Area serviceの一つである船内体育室を考えてみた。これまでの日本の船で運動のできるスペースをもった船は,昭和36年以降の建造船に徐々にみられるが,陸上の体育館に一般的である床が木またはじゅうたんのものはまだ設計されていなかった。今回第一中央汽船に木の床をもった体育室ができることになったので,今後船に体育室をつくる場合に考慮すべきことについて考えてみた。また,ノルウェーとオランダの船について,Area
serviceがどうなっているか,数例についてであるが資料を得るこどができた。
|