Maritime Labour Research Institute

財団法人海上労働科学研究所
    

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研究調査の概要

昭和47年度

1.騒音等実態調査

                               担当者 神田 寛
@229型鮪廷縄漁船,375型鰹鮪釣漁船の騒音,振動環境調査
 試運転時の測定結果である。機関室騒音はカーフェリ等小型鋼船にみられる中連ギヤードデイゼル船の成績と同じ程度で100ホン(A)をこえる。船員設備内の騒音レベルは一般商船に比べて高い。特にUpper Deckの船尾例の機関室に近接する寝室では80ホン(A)前後のものが認められた。振動レベルでは20dB以下の場合が多く特に問題がなかった。 A機関室騒音の現状と騒音許容基準の関係
 聴力保護の立場からの許容基準からみて,機関部船員の聴力障害をおこす危険が十分あることを指摘した。
B漁船,商船の機関部船員の聴力検査結果
 対象は主としてまぐろ漁船に乗組む機関部船員74名,大型外航商船の機関部船員116名である。その聴力障害度は,小声の会話でしばしば支障を生ずる“Slight”の者が約17%,普通の会話でしばしば支障を生ずる”Mild”の者はいなかった。しかし4,000C/Sを中心とした聴力損失の傾向が明らかに認められた。騒音暴露の年数が増す程その損失が進んでいく。特に4,000C/Sにおける損失はいちじるしく大きい。また,4,000C/Sにおける聴力損失と語音域聴力損失の相関は,漁船でr=0.61,商船でr=0.42であった。また測定値の散布度の大きいことも特徴で,これは個人それぞれの耳の騒音に対する耐性の違いのあることを示している。
 その他,船員の聴力障害度に影響する諸条件と聴力保護対策について考察した。
C外航大型商船の騒音振動の事例
 コンテナ船2隻(ただしダービン船),鉱石運搬船2隻,撒積貨物船1隻の航海中におけるホン(A)と振動レベルVLの測定結果である。全体としては,カーフェリー,小型商船,漁船に比べてきわめて騒音振動が少ない。
 

2.野菜類,果実類の廃棄率および自然減耗率に関する実験調査

                              担当者 小石 泰道
 昭和44年の船員法食料表の改正にともない,野菜,果実類の船内廃棄率の現状について,あらたに実験調査する必要がおこった。海上労研は運輸省船員局から要請をうけて,昭和45,46の両年,練習船銀河丸の協力を得て,夏季および冬季の船内貯蔵実険を実施した。その後,この両調査のみでは資料不允分とする意見が関係者間におこり,本年度においてさらに外航商船に便乗して秋季実験を実施することになった。
 10〜12月の間に,濠洲コンテナ船箱崎丸で2航海にわたって実験調査が行われたが,これに先き立ち,海上労研の業務専門委員会に船内食料部会(部会長 山崎善一)が設置され,この部会活動を通じて,調査品目,方法,対象船舶が決定された。
 実験調査終了後は,この船内食料部会において,前2回の調査データをふくめて,データのとりまとめが協議された。その結果,いも類,緑黄色野菜類(葉菜類とその他に2分割),その他の野菜類(根菜類,結球野菜類などと果菜類その他に2分割),かんきつ類,その他の果実類(りんごとその他に2分割)の8分類による,積込時,2週,4週,6週,8週貯蔵における各荷重平均値を一覧表にまとめた。利用データは37品目に及んだ。
 

3.有害物による船員障害の実態調査

                              担当者 久我 昌男
 昭和47年度の対象有害物質ベンゼン,苛性曹達の2種目について調査を行なった。
@ベンゼン
 調査対象船は500トン級4隻,100トン級3隻であったが,ベンゼンに比較するため,さらにキシレン専用船100トン級1隻を調査した。
 調査の方法は荷役開始から終了までの間に入港地に訪船し,荷役開始から終了までの間に現場調査を行なった。
 調査項目は,環境としては荷役中甲板,荷役ポンプルーム,船室内を30分毎に大気を捕集しベンゼンガスの含有量の確認を行なった。ガスの分析はガスクロマトグラフィを使用した。
 人体影響については尿を採取し,尿中のベンゼン,代謝物フェノールを測定し,慢性中毒を推察するため尿中のコプロポルフィリン量を定量した。なおベンゼンガス接触に対しての質問紙を乗組員に記入せしめ,体力の推測について血圧を測定した。
 また臨床医学的な一般を知るためには,尿のPH値,アセトン体糖,蛋白,ウロビリノーゲン,ビリルビンの検査を行ない併せてベンゼンガスの影響を知ることとした。
A苛性曹達
 調査対象船は特に液体としての貨物は苛性曹達タンカーとして輸送されつつある現在,1500トン級1隻,1000トン級1隻,100トン級1隻の3隻を調査した。
 調査項目はベンゼンの場合とおなじく荷役甲板,荷役ポンプルーム,船室内大気中の苛性曹達の含有量確認を行なった(洗気瓶法)。
 また,本調査でも尿中のコプロポルフィリン定量,尿の臨床一般倹査はベンゼンとおなじ項目を調査し,アンケート調査,血圧測定をも併施した。
B調査結果
 ベンゼンの場合は各船とも船室内から極く微量ながらベンゼンガスの検出を認めた。次にポンプルームのガス存在は場合によっては20ppm以上にもなっていることがあった。
 尿検査結果では微量吸入の影響が全員に認められ,その程度は荷役従事者に明らかであり,微量吸入蓄積影響が考えられる。この点は血圧測定,質問紙の訴えのむすびつきにも認められている。
 苛性曹達についてはベンゼンの毒性が知られている割に殆んど害がないと考えられていたが,調査の結果は大気中の含有物量は認めるものがなく,ガス状の大気存在は殆んど認められないが,ハッチ附近では極く少量のミストの存在は確認される。しかしもっとも大きな問題は荷役甲板,ポンプルーム等の汚染でおそらく汚染粉塵としての経口侵入が感じられる。それは,尿倹査結果から伺い知れるものがある。
 この対策としては,ベンゼンについては身体検査項目の詳細な検討を,また,苛性曹達については,作業場の苛性曹達汚染の清掃を行わせることとしたい。
 

4.船員福祉に関する調査(第1年度)

 担当者 篠原 陽一,青木 修次,服部 昭,小石 泰道,玉井 克輔,広田 弥生
 今後の船員福祉のあり方を検討していくにあたって,その基礎資料をうるための各種の調査を実施し,今後のあり方を考えるにあたっての若干の有効な知見をうることができた。
@船員の居住地分析について
 1都3県3,048戸のうち調査対象は2,432戸,回収は1,082戸44.5%。
 居住分布は,東横線,東海道線(品川藤沢間),京浜急行線沿線に集中しており,東京港以西中央線以南が圧倒的に多い。東京,横浜とも港から10〜20Km圏内に集住している。最近では,主に関東出身者(主に1都3県)は神奈川市部(横浜市を除く)と千葉県郡部へ,北陸,東北,北海道出身者は神奈川県市部(横浜市を除く)への分布拡大がみられる。また,住宅の70%以上は一戸建木造の持家であり,家屋や土地の入手は昭和40〜44年頃が30%を占めていてもっとも多い。
A船員福祉施設の利用状況について
 1都3県の会社寮,海員会館,船員保険寮に熱海,下田,箱根等の近辺の主要施設を加えて32ケ所を調査対象とした。
 会社寮と公的施設で若干のちがいはあるが,この種調査のむつかしさがはっきりとでた。
 貴重な宿泊の機会をアンケートに答えることは,たのむ方(施設の責任者)の気持もたのまれる方の気持もスムースにいきにくい。また調査結果の取扱いについての信頼感も必ずしも一律でない。回収率は平均50%だが施設によって差が大きい。昨今の海運市況の激変を反映して会社寮の利用は利用度数の減少,利用期間の短縮,利用目的の変化などが一部にみられ,公的施設には定期的宿泊し,利用者の特徴がはっきりみられるところもある。
 施設に対する意見は記入を忌避する傾向もみられ,施設によってかなりまちまちになっている。
B航海中の生活行動について
 余暇時間のすごし方を35種目の内容にわけて,外労協加盟の21社60隻の船員についてアンケート調査を行った。その結果,そのほとんどの種目が希望している人よりも実施している人の方が多いことと,また多く実施されている種目からみて,計画的に余暇時間を使っているというよりはむしろ,そのように過としてしまったということがわかった。
 今後はより自主的な余暇時間のすごし方ができるような対策が必要である。
C停泊中の生活行動について
 1973年9〜10月における横浜港在港中の乗組員の生活行動について,約13隻250人の有効資料を分析したところ,帰宅者,家族呼寄せ者,船内宿泊者において生活行動にかなりの差異がみとめられ,今後の在港船員にたいする福祉サービスは,それぞれに区分された施策が必要であるとみとめられた。
D休暇中の生活行動について
 1973年10月における1都3県,石川県富来町の休暇船員の生活行動について,約200人の有効資料を分析したところ,居住地の差異,未既婚によって大きな差異がみとめられ,企業内福祉と公共的福祉の組合せや区別について検討が必要であるとみとめられた。
 

5.船員の健康管理に関する研究

                        担当者 久我 昌男,山口 理子
 船員の疾病予防に資するため,従来当研究所で検討をすすめてきた。船員の健康管理方式を受託健康検査を中心に実際に試み,その効果と改善について検討を行なっている。
 特に前年度に引続き実施している某社船員の健康管理についての検査結果は次のとおりである。
 入船検査3隻,対象人員75名でうち,健康調査書による診断上検診を要したものは,40人であり,他の35名は視診,問診の上保健指導を行なった。
 検査方法は,船渠各船の食堂を貸用し,ポータブルレントゲン,心電計,脈波計,肺活量計,血圧計,等の機械による検査と,採血,採尿による検査分析を行なった。
 検査結果は心電計検査で30名中2名に心肥大の疑いを認め,レントゲン肺倹査では異常を認めるものがなかった。腰痛では受検者15人中2名に椎骨の異常が認められた。血圧は異常者は極くまれであり,2名に高血圧を指摘した他は異常が認められなかった。
 尿全般検査は乗組員全員に施行し,結果は蛋白尿10名,糖尿陽性以上8名,擬陽性は12名を認めた。肝臓機能検査では受診者35名中,トランスアミナーゼに異常を考えられるもの8名を認めた。
 新入社船員の適性検査は8名であったが,尿中労作性蛋白尿の増量を示すもの,自律神経テスト陽性者は体力が低いことが考えられるもの2名を認めた。
 以上の健康管理方式から,入渠中の集団検診は健康調査書を集計して,検査項目を選定して施行すれば,船員の健康管理には特に合理的な方法であると認められる。
 新入船員の適性検査についても産業医学,心理学の応用によって船員の適性検査として有効適切な方式と考える。
 

6.内航船員の定着に関する研究

                        担当者 青木,神田(道),ほか
 46年度「内航新人船員の定着に関する研究」を引き継ぎ,今年度はその対象を拡げ,内航船員全体を調査対象とした。また新人船員の定着意識と定着実態の関連を検討すべく,追跡,調査を実施した。
@新人船員の定着意識と実態
 昭和45年12月実施の新人船員調査対象者が1年後の昭利46年1月に在職しているか否かを問合わせた。その結果565人について退職し在職の有無が明らかになった。つまり,565人中退職者は177人,在職者は388人であり,両群の定着意識の差は次のようであった。
1)会社継続観,職業継続観等の定着意識は両群の最も著しい差であった。
2)船員以外に希望する職業があるか否か,また船員職業への期待と現実のズレといった職業流入過程上の差も著しかった。
A内航船員の移動と定着意識
 調査内容は船員職業流入過程,移動パターン,船会社移動状況,陸上職業経験,職業・職場生活に対する意見,生活意識など54問よりなる質問紙を用いた。また調査対象は90社162隻に依頼し,71社118隻分を回収した。集計対象者数は1,438人である。
結果の概要
1)年令による航路志向が伺えた。若年層の近海志向,中高年層の内航志向など。
2)勤続年数では6〜9年におち込みがみられ,この間に転職を中心にした移動が推定される。
3)学歴は中学校卒以上が68%をしめているが,今後の技能水準アップへの適応が心配され,教育訓練の問題が生じてくると思われる。
4)かっての船員給源地域から流入が減少し,陸上職業経験者の比率が増大する傾向にある。
5)定着意識は全体的に低く,陸上職業志向型が増大すると思われる。
6)内航企業間移動の平均回数はほぼ3回に達しており,企業内定着対策はあまり効果がないように思われる。
7)内航船員の職業適応なり,その管理対策は企業体質に負うところが多く,企業体質の抜本的改革が切に望まれる。
 

7.運航技術変化に適応する船員需給問題

                        担当者 篠原 陽一,玉井 克輔
 鹿児島県開聞町川尻地区が船員給源地域として,どのように形成・展開してきたかを分析した。川尻地区は,半農半漁の生業形態のもとで,潜在的な過剰人口を推積させてきたが,戦前においては自給自足的で半封建的な生活様式が根強く,それほど船員を排出することはなかった。しかし,太平洋戦争と散次の台風によって,零細漁業に大きな被害がみられ,受救貧民さえうみだした。戦後における資本主義経済の浸透は,半農半漁の生業形態を維持することを困難にさせ,農業を専業化させえない漁業労働者世帯と共同経営世帯からの転出労働力が,船員となって排出されはじめた。そして,農業基本法農政,構造改善農政の展開とともに,農業世帯からの船員排出が拡大していった。
 川尻地区は,戦後,船員給源地域として形成されたため,海運企業との結びつきがよわく,近くに海員学枚の施設がなく,漁業の経験があるところから,直乗船員・転職船員として供給され,中小海運企業に縁故採用により採用されている。そのため,川尻地区は海運資本の,独占企業の中小企業の系列支配の結果としての,船員の吸引・反発の格好のプールとなっている。
 今後,この地区は陸上諸産業の新規労働力の調達地域となっているところから,船員職業に格別の魅力増大がないかぎり,船員給源地域としては縮小の方向をたどらざるをえないであろう。
 

8.操船作業における操船情報処理についての研究

                              担当者 大橋 信夫
 操船に関与する複数の人間によって構成される操船システムの技能と,心身負担を解明し,安全運航をはかる基礎資料を得ることが,この研究の目的であり,ひいては海上交通管制システムの検討に資せんとするものである。この目的に添って,今年度は,昭和46年度に実施して得た備讃瀬戸を含む瀬戸内海を航行するフェリーにおける操船情報処理に関する資料等を再分析し,操船者の意志決定に至る過程のパターンの図式化を試みた。同時に,操船者の操船中の心拍数の変動と,情報処理の多様性等の指標の関連を分析し,情報処理の多様性が高まると,心拍数の変動も大きくなる傾向がうかがえたが,尚一層の研究を要するものである。
 なお,前出,フェリーにおける情報処理,及び,小型船船長に対して行なった情報処理に関するアンケートの分析結果については,日本海難防止協会,報告書,「海上航行安全システム等に関する調査研究」P71〜201に記載してある。
 この研究は,神戸大学,森清善行氏,労働科学研究所,飯田祐康氏等の協力を得て実施した。
 

9.単調作業における副次的作業の発生について

                              担当者 大橋 信夫
 作業における単調状態を如何に記述するかという事については,種々議論のあるところである。そこで一つの試みとして,航海中の機関部の当直作業を対象とし,作業者(当直者)が自ら求めて実施した副課題の解決という行動の発生について,1964年のF丸(在来船),1965年のM丸(自動化船),1969年のG丸(コンテナ船),1970年のA丸(コンテナ船・Mゼロ船)で得た作業測定結果の再分析を行なった。
その結果,存来船から自動化船,さらにMゼロ船へと,機械系との結びつきが変化してゆく様相をある程度説明できそうな見通しを得ると共に,単調状態の記述にも使えそうに考えられた。しかし,副次的作業の生起様式−しばしば発生するか,或いは,あまり発生はしないが,発生すると長い,というような−に関する指標は未だ作り得ないので,今後も尚一層の掘り下げが必要である。
 なお,この主旨については,1972年4月福岡で行なわれた人類働態学第4回大会の単調作業に関するシンポジウムの討論の席上発言した。
 

10.海難のくりかえし要因に関する研究

                              担当者 大橋 信夫
 各方面で,海難原因に関する調査や分析が行なわれてはいるが,我々は以前から,それら原因の一つに,操船者の不注意とか,運航上の過誤というようなものが挙げられていることに疑問を持ち,折にふれて,それらは原因ではなく結果であるという発言をしてきている。そして,我々が一方で,この数年続けてきている操船作業における情報処理作業や,海上交通管制の人的要因の研究結果から益々その感を強くしている。
 そこで,昭和23年から現在に至る迄の海難審判裁決録から,海難に至る迄の情報処理が如何に行なわれたかという観点にしぼって分析をしてみた。現在のところ,未だ全部の分析は済んでいないが,例えば,昭和25年,昭和36年,昭和46年に横浜で扱った衝突海難だけをみても,一件の衝突に際し,情報処理が確実に行い得ないような条件が4〜5,多い場合は両船合せて14もあること,そうして,それらの条件は,各年であまり変化が無いこと等が判明した。この分析は今後も続けてゆくが,真の海難防止策を考えるには,実際の操船に必要な情報処理が如何に行なわれているかということを充分に把握し,それに基いた対策がたてられ実行されるのでなければ,海難はくりかえされるということを痛感している。
 なお,この研究の一部は,第79回海上労働科学研究会にて発表した。
 

11.船員の疾病災害における統計的研究

                        担当者 久我 昌男,山口 理子
 題記は例年継続されていた調査であったが,当所の都合により中断延期していたが,ここに再び研究を開始した。そこで1968年分は遅延のため資料の逸脱があるため割愛することとしたが,ここに1969年,1970年分を集計発表するはこびになった。
 本研究についてはいう迄もなく,1969年年報,No.2(16)に記述された如くであるが,その後1969年と1970年を集計するに及び,1967年に比し全般的に傷病下船率は低下の傾向が認められるが,これは1969年減少傾向であったのが,1970年にやや増加がみられる。
 その増加項目中の目立つものとしては,アレルギ〜性,内分泌系,物質代謝および栄養の疾患が1967年0.08%であったが,1969年に0.07%になり,1970年に0.11%に著増している。これはおそらく糖尿病等の新陳代謝系の疾病増加が目立っているものであろう。
 また1969年に0.79であった循環器系の疾病は1967年には0.95%であった数値に近い0.88%に再び増加している。その他消化器系,性尿器系,皮膚及び疎性結合組織の疾患がやや増加となっている。
 また今回迄の累計で,症状老衰及び診断名不適当の状態のものが0.21から0.47%に増加しているのはその意味が明らかでない。
 不慮の事故,中毒,暴力は2.52%と1967年の2.87%に比し減少している。
 結論的に疾病合計は12.46%から10.93%になり12.40%に減から増になっている。
調査対象は外航9社在籍船々員16,616人である。
 

12.ゴム製筏で漂流時を再現しての海水を飲用し筏内備付清水飲みのばしのための実験

                              担当者 久我 昌男
 漂流時再現の海水飲用実験については,昭和41年7月に第1回を行ない,その結果について労働科学45(1),1969に報告した。
 今回再度題記条件で海水飲用実験を行ない海水飲用の是非は,その機会が如何なる場合であっても害があると定められている定説に対する裏づけを求めるべく,被倹者6名を以て,海水飲用を,保有清水飲み延しを目的として海水飲用方法を検討した。
 実験の方法とその考え方としては,被検者6名を以て,海水飲用を2つのグループに別ち,海水そのものを300ccづつ飲用するグループとさらに海水を2容に対し,1容の比率で稀釈するグループとし,それに対して清水のみ300ccづつ飲用するものを対照とした。
 実験中は,15人乗りのライフラフトに乗船し,海上に浮上せしめ救命食を食料として,海水飲用5日間を行なった。
 実験の結果は,海水のみの飲用は腎への機能の負担が大きいことがわかる。なお海水グループでは海水飲用中は海水中の塩分排出に体力が集中し,自覚的にも第3日目から口渇を訴えている。
 水割りクループは口渇は訴えていないが,第2日目の血液検査で体内の水分欠乏が示されている。
 そして体内の塩分が増加すると尿量が増加すると云う医学上の定則は,明らかになっている。
 海難漂流の緊急時における海水の飲用は,本実験において,水割クループに飲料水としての効果を示した。然しこれはあく迄緊急時の想定のもとであることを考える。これは何と云っても検査結果では,海水のみの飲用グループに短時間に有害影響が認められるのを注目すべきである。
 

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